内容紹介
引きこもり女子HIROは全く口をきかないが、人と話す時は携帯から、言いたいことをブログにアップして爆裂トーク。血でもない、ケチャップでもない、「血のり=けちゃっぷ」のようなバーチャルな現代に迫る、驚愕すべき才能の誕生。
第45回文藝賞受賞作。
冒頭の部分を読んですぐに感じたのは、「今回の文藝賞は一体どうしちゃったんだろう?何なんだこの文章は!」という衝撃的な印象。
"論理"みたいなものは一切存在しない、頭に浮かんでくる言葉の一つひとつを、その順番に、だーっと書き出してつなげた。
そんな感じの、もうめちゃくちゃな文章。
しかし、それに続く次の一文を読んだ瞬間に、それまでの不安はすぐに吹き飛んでしまった。
その一文だけで、全てに納得させられてしまった。
と私はブログに書き込んだ。
あぁ、そういうこと!と。
物語の主人公は、HIROちゃんという女の子。
親の仕送りを頼りに一人暮らしをしているニートな彼女は、人と会話することができない。
普段まったく人と会話することがない、準ひきこもり的な生活を送っていたために、
言葉を声に出して話すことができなくなってしまった。
そんな彼女が他人とのコミュニケーションのために使うのが、ケータイから更新するブログ。
思ったことの全てを、感じたことの全てを、次々にブログに書き込んでいく。
声に出すよりもキーボードやケータイのボタンを押す方が速い。なんでこんな体になってしまったんだろう?改造人間ブログ更新ツヅケルになってしまったんだろうか?はあ!って大袈裟。ってまたブログに書き込む私。
そんなHIROちゃんは、ある日ブログのコメント欄に投稿してくれたヒロシという男性に興味を持ち、実際に会ってみることにする。
とにかく、HIROちゃんの一人称で書かれる心情描写がイイ。
はちゃめちゃな表現の文章がひたすらうんざりする直前まで続いたその後に、すぐに例の「と私はブログに書き込んだ。」がきて、ふっと一呼吸。
そのサイクルが最後までずーとくり返される。
読者の意識と、主人公の意識のバーチャルな部分と、リアルな部分と、それらが絶妙なリズムとバランスでかき混ぜられながら、良いタイミングでみんな我に返る。
みたいな感覚が、読んでいてとっても面白い。
「と私はブログに書き込んだ」と言った瞬間に、確固とした「私」が出てくる。そして、その揺るぎない「私」が、実は語り手にもなってる。
こんな小説を、私はこれまでに読んだことがない。
やがて、HIROちゃんとヒロシとは、これまた理解不能な不思議な出来事に巻き込まれていく。
後半の方の展開では、何がバーチャルで、何がリアルなのか、その境界がはっきりとは見えなくなっていく。
ブログ、準ひきこもり、アダルト、自殺願望、とそういうキーワードを入れているのは、やっぱりいかにも文藝賞な気がしてしまうが、
それでもこの小説は他の誰にも書けない。
喜多ふありという新人作家のオリジナルでオンリーワンな力を確かに感じました。
すごい。
こういう作品を書いて、それが評価されてしまったという事実によって、
彼が次にどんな作品を生み出してくれるのか、今後が非常に楽しみです。
喜多ふありさん「先入観逆手に、読者を翻弄したい」:asahi.com(2008/12/13)ちなみに、HIROちゃんの名前の由来にもなっている、バンドのketchup maniaのサイトはコチラ。

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文藝賞授賞式:ketchup mania-HIRO [HIRO・LOG]