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2010-07-20

『この世は二人組ではできあがらない』山崎ナオコーラ を読んで


この世は二人組ではできあがらないこの世は二人組ではできあがらない
(新潮社)
山崎ナオコーラ


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内容紹介
どうして全員が男女二人組でなくてはならないのか。社会とのつながりに切り込む〈反恋愛小説〉。

社会とは一体なんだろうか。この小説の舞台は狭いアパートだ。川を二つ越え、私は日々を営んでいた。大学卒業後、働き始め、経済力がついてきた。好きになること、二人暮らし、戸籍などへの疑念、小説に取り組むなかで、私はなにを捨て、なにを掴んでいくのだろうか。無冠の帝王が描く、純粋素朴な社会派小説。


山崎ナオコーラさんの『この世は二人組ではできあがらない』を読んだ。
感想、とてもとても良かった。
これまで、『人のセックスを笑うな』『カツラ美容室別室』『長い終わりが始まる』『論理と感性は相反しない』を読んできて、読むたびに山崎ナオコーラさんの書く文章が好きだ、そういう気持ちが強くなるのを感じてきたけれど、それがより一層強くなった気がする。

私は、山崎ナオコーラさんの書く小説が大好きだ。

そして本作は、著者自身も以下のように日記に書いている通り、間違いなく山崎作品の集大成的なものになっていると思う。
完全に力を出し尽くしました。
自分でも信じられないくらい、やりきった。
小説について、ずっと考えた。
これは、読んでいただきたい、と思ってしまいます。
構成とか、伏線とか、すごく考えたので、できたら深読みしていただきたい。
もう、これで山崎ナオコーラ第一期は、終わり。



主人公は、大学で日本文学を学び、卒業後は小説家を目指して作品を新人賞に応募し続ける女の子の栞ちゃん。
物語の舞台になっているのが、たまプラーザ、二子玉川、渋谷という東急田園都市線の沿線で、それが著者自身の自叙伝的な雰囲気を感じさせる。
栞ちゃんが、大学の先輩の紙川さんという男性と半同棲生活をしながら、ビミョーな距離感を保ちつつのある意味ちょっと不思議な恋人関係を作る姿が綴られる。
人はひとりで完全だ。だからベターハーフなんて探していない。価値はひとりの人間に十分ある。
「自分の存在のために誰かが必要」という考えでは生き続けられないだろう。アンドロギュヌスが半分に割れて、現在の人間が生まれたなんて、嘘だ。
人と人とは、関係がない。誰も、誰かから必要とされていない。必要性がないのに、その人がそこにいるだけで嬉しくなってしまうのが、愛なのではないか。

栞ちゃんの言葉として綴られる中に、著者山崎さん自身の人生に対する思想というか信念のようなメッセージ性を感じる、非常に力強い言葉がいくつも埋め込まれている。
これぞ山崎ナオコーラワールドだと、そう思う。

いつものテーマが、一つひとつのエピソードによって丁寧に真面目に正面からしっかりと描かれている。

とにかく、主人公・栞はブレない。全然ブレない。
そんな彼女が、半同棲の生活を通して、紙川さんや周囲の人間を少しずつ変えていく、その姿に真理のようなものさえ感じられて、何だかとってもカッコいいなと思った。

一人の人間が自立して自分の人生を歩んでいくということの、意味とか目的とか、そういうものを真剣に考えなきゃというような気持ちになる。
そんな力が、彼女の言葉に込められている。

ただひたすらに、文学というものに真摯に向き合う、山崎ナオコーラの本気を感じられるすごい一冊だった。

社会に放つ若い女性の「つぶやき」
[書評]『この世は二人組ではできあがらない』:asahi.com

【書評】『この世は二人組ではできあがらない』山崎ナオコーラ著:MSN産経ニュース
『この世は二人組ではできあがらない』刊行記念対談 川村 湊×山崎ナオコーラ

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2010-05-16

『論理と感性は相反しない』山崎ナオコーラ を読んで


論理と感性は相反しない論理と感性は相反しない
(講談社)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 

内容紹介
初の書き下ろし小説
「これが私の代表作です」――山崎ナオコーラ

女と男は一緒に暮らせる きらきら同棲小説

神田川歩美、矢野マユミズ、真野秀雄、アンモナイト、宇宙、埼玉、ボルヘス、武藤くん。
神田川(24歳、会社員)と矢野(28歳、小説家)の2人を中心に、登場人物がオーバーラップする小説集。
「小説」の可能性を無限に拡げる全15編。

もくじ
論理と感性は相反しない / 人間が出てこない話 / プライベート / 芥川 / 恐怖の脅迫状 / 架空のバンドバイオグラフィー / 素直におごられよう / ブエノスアイレス / 秋葉原 / 化石キャンディー / 社長に電話 / まったく新しい傘 / アパートにさわれない / 嘘系図 / 蜘蛛がお酒に / あとがき


「論理と感性は相反しない」特集ページ:講談社

山崎ナオコーラファンにはたまらない一冊です。

短編に出てくる登場人物たちのクロスオーバーする感じも面白いし、山崎ナオコーラさん自身と登場人物たちとが重なりあって見えてきて、彼女の考え方に触れられるような気がして、とても興味深い。

全体に山崎ナオコーラワールド的な雰囲気が満ちていて、ずっとずっと読んでいた。もっともっと読んでいたい。そう思った。

読んでくださるあなたが大好きです!
自由な感じに読んでいただけたらいいな、と思っています。
かなりポップ。
(ちなみに、アパート跡地を見るのは、実際に行きました)。
音楽や美術も好きだという方から、
「この本がいちばん好き」と言っていただくことが多いです。
この本は、二十代の終わりに、ふざけ切った感があります。

微炭酸ホームページ(書籍紹介)より



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2010-05-16

『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ を読んで


人のセックスを笑うな (河出文庫)人のセックスを笑うな
(河出文庫)
山崎ナオコーラ


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内容紹介
19歳のオレと39歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てた――「思わず嫉妬したくなる程の才能」と選考委員に絶賛された、せつなさ100パーセントの恋愛小説。第41回文藝賞受賞作。映画化。

山崎ナオコーラさんの『人のセックスを笑うな』です。
映画は前に見たことあったんだけど、小説は読んでいなかったので。

映画と小説とを比べてみると、結構違っているところがあって、いろんな発見があった。小説には描かれていないエピソードを見つけられて面白かった。

山崎ナオコーラさんの文章を読んでいて思うのは、そこに使われている言葉のセンスがすごいなってこと。

例えば、
夕日のあまりのきれいさにびっくりする。まるで透き通るマグロの切り身のよう。

こういう表現を作る感覚は一体どこから生まれるんだろう。

とにかく私は、こういう山崎ナオコーラの世界観が大好きだ。

物語自体は、好きになった人と一瞬だけ楽しい日々を過ごして、でも最後は彼女が突然どこかに消えてしまう、みたいな切ない恋物語。
でも、その一瞬の幸せな時間の描き方が、すごくすごく素敵だ。

微炭酸ホームページ(山崎ナオコーラが書いています)

人のセックスを笑うな [DVD]人のセックスを笑うな
出演:永作博美,松山ケンイチ
監督:井口奈己



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2010-01-09

『モサ』山崎ナオコーラ&荒井良二 を読んで


モサ (ダ・ヴィンチブックス)モサ
(メディアファクトリー)
山崎ナオコーラ(文), 荒井良二(絵)


souiunogaii評価 

内容紹介
ナオコーラ版ムーミン!とでも言うべき不思議で愛おしい物語

東京近郊・ニカイの町、カルガリ一家の長男モサは人間じゃないけど、人間たちや不思議な生き物たちと暮らしている。親友はハリネズミのハリだ。モサは、世界のすべてに抗い、世界のすべてを受け入れる。
個性的なキャラクターたち子どもでもたのしめて、大人でも心に響くストレートな物語心に残る詩みたいにキラキラした言葉たち荒井良二さんのキュートなイラストもポイント。


ニートのモサが、自分のやりたいことを見つけ、自分で生き方を選んでいく、素敵な物語。
リアルとファンタジーが織り交ざった不思議な世界。

微炭酸ホームページ (山崎ナオコーラが書いています)

荒井良二 Ryoji Arai 公式サイト

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『カツラ美容室別室』山崎ナオコーラ を読んで


カツラ美容室別室カツラ美容室別室
(河出書房新社)
山崎ナオコーラ


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内容紹介
こんな感じは、恋の始まりに似ている。しかし、きっと、実際は違う――
カツラをかぶる店長・桂孝蔵の美容院で出会った、淳之介とエリ、梅田さんたちの交流の行方は?
第138回芥川賞候補作。


この作品を読んで、山崎ナオコーラという作家の魅力にとりつかれてしまった人はとても多いのではと思う。
私もそんな人間の一人だから。
男女の間にも友情は湧く。湧かないと思っている人は友情をきれいなものだと思い過ぎている。友情というのは、親密感とやきもちとエロと依存心をミキサーにかけて作るものだ。ドロリとしていて当然だ。恋愛っぽさや、面倒さを乗り越えて、友情は続く。走り出した友情は止まらない。

なんていうか、山崎ナオコーラさんの文章には強い力がある。
上手く表現できないが、グッと胸に響いてくるパワーがある。

そして、読み終わったあとのこの上ない爽やかな満足感がある。

微炭酸ホームページ (山崎ナオコーラが書いています)

作家の読書道 第90回 山崎ナオコーラさん:WEB本の雑誌
書評(斎藤美奈子) カツラ美容室別室:asahi.com
山崎ナオコーラ『カツラ美容室別室』:文学賞メッタ斬り!第138回芥川賞選考会

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