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2019-05-19

[感想]『可愛い世の中』山崎ナオコーラ を読んで


4062939096可愛い世の華夏
(講談社文庫)
山崎ナオコーラ

souiunogaii評価


内容紹介
四姉妹の次女である豆子(まめこ)は32歳、芳香剤のメーカーで働いている。見た目も性格も地味な豆子だが、和やかな鯛造(たいぞう)と出会って結婚することになった。結婚式を準備していくなかで、豆子は、自分の金銭感覚が人生の変化とともに、にょきにょき変わっていくことをスリリングに感じ、ある決心をするのだった。


『微炭酸ニッキ』山崎ナオコーラ


yamanao.jpg
山崎ナオコーラさんインタビュー:BOOK SHORTS

山崎ナオコーラさんの作品、少し前にはまっていて何冊も読んでいた時期があった。
なんていうか、日常の会話では絶対使わない、詩のような表現を、すっと日常の言葉にしてしまう、その微妙な違和感が読んでいて微妙にくすぐったい感じが心地よくて癖になってしった。

ゴボウって素晴らしい。豆子はもう一度、この汚らしい野菜を賞嘆する。ゴボウのおかげで、マリッジブルーが、少しだけ薄らいできた。
「ゴボウのアロマってないのかなあ」
豆子はひとりごちた。


「『経済力』という名の香水があったら、それをふりかけたい」
豆子はひとりごちた。



本書の巻末の著者紹介のところには、山崎ナオコーラさんの「目標」というのが書いてある。
目標は、「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。グーテンベルク以来の出版業界の激変の中で、書店文化をどう残していくか、日々考えている。


ああ、こういう感じ、山崎ナオコーラっぽいなぁ、と。

可愛い世の中(山崎 ナオコーラ):書評「可愛いってちっぽけ?」:本のブログ ほん☆たす



2010-11-27

『手』山崎ナオコーラ を読んで


手
(文藝春秋)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 


内容紹介(文藝春秋)
『人のセックスを笑うな』でベストセラー、その後も『カツラ美容室別室』などで、良質な読者を獲得した山崎ナオコーラさん。
山崎さんの端正な文章、と同時に偏光フィルターを通して見るような不可思議な作品世界の稀有な魅力。
新聞のラテ欄をつくる仕事をしている女性主人公はおじさんたちとお付き合いしてきました。また「ハッピーおじさんコレクション」というサイトを運営しています。この小説では何かが確実に起こっているのだけど、それはドラマとはいえないささやかなものかもしれません。人を驚かすことは簡単だけれど、人の心の位相を少しだけ動かすことはとてつもなく難しい。それを実現した傑作です。
もくじ

笑うお姫さま
わけもなく走りたくなる
お父さん大好き

2010-09-26

『ここに消えない会話がある』山崎ナオコーラ を読んで


ここに消えない会話があるここに消えない会話がある
(集英社)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 

内容紹介
何もない人生にも、キラキラ輝く会話がある
25歳の派遣社員、地味系男子の広田は半ば諦めの境地で生きている。しかし、会社で同僚と交わす会話が楽しくて世の中を嫌いになれない。人とのささいなやりとりのかけがえのなさを描く職場小説。


「ここに消えない会話がある」刊行記念 山崎ナオコーラさんロングインタビュー:集英社

微炭酸ホームページ(山崎ナオコーラが書いています)

またまた大好きな山崎ナオコーラさんの小説です。

とにかく、山崎ナオコーラ節というか、言葉の選び方・表現の仕方が絶妙すぎる!
小説なんだけど、ひとつひとつの文章から伝わってくるメッセージがたいへん力強い。


以前、他の作品でも扱われていた、新聞のテレビ欄の製作会社が舞台で、
登場人物たちは、そこで働く20代の男女。

一人ひとりの仕事に取り組む姿勢が、それぞれに違っていてその温度差みたいなものが面白い。
広田(アキバ系?)、岸(こそこそ小説を書いている)、佐々木(リーダーシップを取りたがる)、別所(いつも日焼けをしている)、魚住(ふざけている)、津留崎(美人)。
物語は三人称で綴られ、一応広田が中心になって語られるんだけれど、他の人物が中心になったりする場面もあったり、そのバランスがすごく上手い。
今日も、広田は出勤途中に空を見上げる。
空の青さ。「青」って一体なんだろう。人間にとって青ってなんだろう、青っていうのはどこにあるんだろう。

山崎ナオコーラ作品の最大の魅力とも言える、詩のような表現を織り交ぜた会話・心情描写が本作では特に印象的だった。
先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人間を成熟へと向かわせるわけではない。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ。

誰にも読めない流れるような字を書いて、郵便屋さんに届けられない手紙を出そう。

山崎ナオコーラさん、やっぱりこの人の書く小説を私は大好きだ。


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2010-08-22

『男と点と線』山崎ナオコーラ を読んで


男と点と線男と点と線
(新潮社)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 


内容紹介
運命って、あるんだ――大人になるまで、わからないことがある。大人たちに捧ぐ恋愛・関係小説。
この一瞬にも、世界のどこかで、男女はくっつき、つながりあっている。クアラルンプール、パリ、上海、東京、NY、世界最南端の町で、68歳の老夫婦、22歳の女子大生と男友だち、32歳の会社員、17歳の高校生カップル、42歳の独身男性、28歳の小説家が、何かと誰かと出会う。若き鬼才が新しい世界に挑む、地球規模の発見の物語。
もくじ
慧眼
スカートのすそをふんで歩く女
邂逅
膨張する話
男と点と線
物語の完結

山崎ナオコーラさんの短編集です。

「慧眼」は、サラリーマンを引退してマレーシアに移住した夫婦のお話。
こんな年の取り方も、いいな、そう思った。

「スカートのすそをふんで歩く女」は大学4年の私が、同じサークルの男子3人と一緒に、パリに卒業旅行に行くお話。
山崎ナオコーラ作品にたびたび登場する、彼女自身をモデルにしたと感じさせるあの独特の雰囲気を持った主人公の女の子が、とてもイイ。

「邂逅」は、上海に出張したサラリーマンが出会ったある姉弟のお話。

「膨張する話」は、東京の高校生のカップルのお話。
二人の会話が、若くて瑞々しくて、イイ。

「男と点と線」は、ある母娘と一緒にニューヨークに旅行にいくことになったある男のお話。

「物語の完結」は、アルゼンチンへ旅行にいった女の子2人が、現地で日本人の男女と出会うお話。

世界各地を舞台に、様々な年齢の男女が物語をつむぎます。

旅行気分で読んでいただきたいです。

何と何と何、「セックスと嘘とビデオテープ」、「部屋とYシャツと私」のような題名の本を一度作ってみたかったので、
『男と点と線』という三つの言葉のタイトルにしました。


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2010-08-22

『あたしはビー玉』山崎ナオコーラ を読んで


あたしはビー玉あたしはビー玉
(幻冬舎)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 

山崎ナオコーラの新世界、青春ラブファンタジー小説!
内容紹介
あたしはビー玉。高校二年生の男の子に片想いしてしまった。気難しい男の子は大好きだけど……。可愛がられるだけじゃ、満足できない!「新しい女の子」の生き方を探る、バカ可愛い高校小説!!

まず、この表紙を見て「えーっ!?」と思って、何だか読むのを少し躊躇しそうになったのだけれど、でも大好きな山崎ナオコーラさんの作品だから絶対に面白いはずだ、そう思って読み始めた。
そしたら、やっぱり山崎ナオコーラさんはスゴイ!
期待通り、いや期待していたそれ以上にもっとずっと楽しませてくれた。
面白かった!

主人公は高校2年生の清順、16歳の男の子。
物語は、彼が大事にしていたビー玉がある日突然しゃべりだすところから始まる。
ビー玉が女の子の人格を持ち、清順に恋をして、彼にだけ聞こえる声で話しかけるのだ。
何とも不思議な非現実なこの出来事を、あくまでも平凡な日常世界の中で起こる出来事として描き、そこに全然違和感を感じさせないのは、山崎ナオコーラ節とも呼べる独特の温度の文体の持つ力だと思う。

ビー玉は清順に対して「好きだ」というアピールを強くぶつけるんだけど、当の清順の方は、バイトをしているハンバーガーショップの先輩のお姉さん・竹中さんに恋をする。
「清順が、他の女の子を、好きになったら、あたしは溶けて、死ぬのかな……」
水からときどき顔を出して、息継ぎをしながら人魚姫みたいなことを言うと、
「なんだそれ?脅迫?めんどくせー。こええなー。女は怖い」
と清順が、さも嫌そうに、あたしを見た。こういうことを言うと愛されないんだな、とあたしは学習した。

ビー玉は、フライドポテトや炭酸飲料が好物で、時には感情を表に出して赤くなったり、涙を流したり、一つひとつの仕草がとっても可愛い。

若い人たちに読んで欲しい、という思いを込めて綴りました。
高校生たちが活躍する、ラブコメディのような物語なのですが、
私が今まで書いた小説の中では、原稿量としては意外と一番多いのです(『人のセックスを笑うな』が102枚で、この本は一応、300枚くらいなので)。
読みどころとしては、会話文の艶っぽさか。
室生犀星「蜜のあわれ」へのオマージュがあります。
清順、ビー玉、チクチュー、岡本たちがなんやかんやして、物語の山を作ります。

そして、清順は、高校の文化祭で、クラスの仲間の岡本と紺野と3人でバンドを組んで演奏する計画を立てる。
さらに岡本まで竹中さんに恋をしてしまい……。
と、家族や友達の描き方はまさに青春恋愛小説な感じで爽やかで気持ちい。

これまで読んだ山崎ナオコーラ作品は、女性が主人公の話が多かった気がして、だから高校生の男の子が主人公の小説というのが新鮮で、新たな山崎ワールドが始まったな、そんな気がした。

ラストは、ファンタジー小説ならではの素敵で綺麗で夢のある終わり方で、とにかくイイ感じの物語だった。

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