![]() ![]() | (岩波文庫) 谷崎 潤一郎 ![]() souiunogaii評価 |
谷崎の作品の大きな魅力の一つは、多彩な技法を駆使して紡ぎだされる語りの巧みさにある。
織田信長の妹お市の方の数奇な運命を美しく描いた「盲目物語」は、
ハーディの作品にヒントを得たといわれる「春琴抄」とともに、
語りのすばらしさを堪能させてくれる傑作で、谷崎文学の頂点をなす。
安田靱彦等の挿絵を併収。
「春琴抄」を読もうと思ったきっかけは、NHKの「爆笑問題のニッポンの教養」の錯視をテーマにした回で、太田光がこの作品に触れていたから。
イラストであらすじが紹介されていて、それを見て「読んでみよう」と。
いや、谷崎潤一郎のこの文章構成のスタイルは、それまで私が出会ったことのないもので、ただただ感心するばかりだった。
「盲目物語」は、戦国時代の信長・秀吉たちに運命を翻弄された一人の女性の一生を描いた歴史小説。
語り手に、彼女の側に仕えつづけた盲目の弥市という人物を置いている。
目の見えない彼の語りには、直接の視覚的描写が無い。
しかし、読者には物語の世界を頭の中に鮮明に思い描くことができるように、その文章には様々な仕掛けが巧みにほどこされている。
「春琴抄」は、盲目の三味線師の女性・春琴と、幼い頃から彼女に仕えた佐助という男性の2人の物語。
時代は、幕末から明治にかけて。
こちらは、春琴の伝記を読む第3者の立場にある筆者が物語を語るというスタイルをとっている。
視点の高さを、タイミングよく変えながら、いや不思議な面白さを持つ形式だ。
奉公人とその主人の娘、2人の間には身分の差という越えられない壁があって、また春琴のプライドの高さもあって、また佐助の彼女に対する絶対的尊敬の念もあって、
2人の間には深い愛情がありながら結ばれることはできない。
そして、物語冒頭から幾重にも張られた伏線に、ドキドキしながら読み進めていくと、「やっぱりそうだったか!」というある種の衝撃的なラスト。
「谷崎潤一郎氏の『春琴抄』は、ただただ嘆息するばかりの名作で、言葉がない」というのは、原作発表の当時の川端康成による有名なオマージュであったが、谷崎流の語り戦略がかなりはっきりと見きわめられるような気のする現代の読者にとっても、その呪縛力は一向に弱まっていないのだ。
解説(佐伯彰一)より
「春琴抄」を読んだ後は、やはり北野武監督の映画「Dolls」が見たくなる。
![]() | 出演:菅野美穂, 西島秀俊 監督:北野武 souiunogaii評価 |










