
星のひと (集英社)
水森サトリ

souiunogaii評価 
内容紹介
第19回小説すばる新人賞受賞第一作
夜明け前の住宅街に隕石が落下。その日から人びとの日常は変化し始める。星が引き寄せた、隕石が落ちてくるよりも、もっと大きな奇跡の物語。生の輝きを、みずみずしくうたいあげる連作集。
もくじ
ルナ
夏空オリオン
流れ星はぐれ星
惑星軌道
『でかい月だな』で小説すばる新人賞を受賞した水森サトリさんの二作目です。
素敵な新人作家に出会えたと嬉しい気持ちになりました。
「次回作もぜひ読みたい」私を水森サトリのファンにさせてくれる、「でかい月だな」はそんな本になりました。
『星のひと』っていう何とも言えない透明感のあるタイトル。
ブルーを基調にした、純粋でみずみずさを感じさせる表紙。
そして、前作『でかい月だな』で私を感動させてくれた作者の待望の二作目ってことで、大きな期待を抱きながら、この本を手にとりました。
「この本はきっとイイ!」そんな予感がしたんです。
そしてその予感はばっちり当たりました。
4話の連作です。ひとつの大きな物語を、それぞれ主人公を変えながら、目線を移しながら、語られていくストーリーは、互いに関連し合いながら、ラストには一ヶ所に集まってきて、1つにつながります。
「ルナ」は、月を見上げる女子中学生のはるきの物語。
「夏空オリオン」は、仕事に追われるサラリーマン草一郎の、家族・人生を振り返る話。
「流れ星はぐれ星」は、性同一性障害に悩みながら、自分の居場所・恋を探すビビアンの物語。
最後の「惑星軌道」は、はるきに思いを寄せる少年草太の物語。全ての話が1つに結びついてラストをむかえる。
題名の通り、星にまつわる話になってる。それぞれに大切なシーンで、星が象徴的な描かれ方をしている。
学生時代に天文部にいた私のような星好きには、たまらない。
第2話の「夏空オリオン」っていう言葉が、すごくすごく好き。
小学校の理科の授業では、冬の星座として習うオリオン座だけど、実は冬じゃなくても見える。一晩のうちに星は動いていく(太陽とか月と同じように)。
東から西へ。
だから、夏でも夜が明ける少し前の時間帯には、オリオン座を見ることができる。
中心に綺麗に並んだ3つの星と、それを囲む4つの星。どれも1等星と2等星の非常に明るい星の星座だから、すぐに見つけられる。
学生時代には、8月のペルセウス座流星群のときに、毎年みんなで地面に寝転がって一晩中星空を眺めて過ごした。
あのときに見た、オリオン座は、今でも忘れない。とってもキレイだった。
東の空にわずかばかり光っている星々の中に、インパクトのある並びが見えた。
オリオンだ。
オリオンを、冬の星座だと思っている人は幸いだ。オリオンは晩夏あたりからすでに見られる。深夜から早朝にかけて。それに気付いたのはいつの頃だったか。
<たぶん、我が家にぼくを待つ明かりが灯らなくなった頃>
『でかい月だな』では、中学生の描き方がとっても上手いなと感じたけれども、本作でもそれは変わらない。
セリフも、心情の描写も、中学生の男女それぞれの世界の表現の仕方が、とってもイイ。
でも、水森サトリの魅力は、それだけじゃないそ、というところも本作ではしっかり示してくれる。仕事に家族に悩む父親でありサラリーマンでもある男の姿や、命の大切さや、そういう部分も大切にちゃんと書いている。
「ぼくは何があっても、宇宙が消えても、永遠に死んだししない!絶対だ!」
子供と大人と両方の目線を使って、人生における大切なことを、ぎゅっと濃縮して1つの小説の中に詰め込んでいる。
短文を続けて、心の中から湧き上がってくる声を、強いメッセージ性のある文章で書いて、読んでいる私の気持ちをぐっとつかんでくる。
「何で落ちたと思う。万有引力だ。気が遠くなるほど離れていても、星は互いに引かれ合っているんだよ。てめえ自身の重さで、他の星を呼んでいる。――星はバラバラなんかじゃない」
水森サトリ、今後も楽しみな作家です。







