![]() | (光文社) 坂木 司 ![]() souiunogaii評価 |
歯科治療恐怖症というのは、医学書にも載っているれっきとした病気、だそうだ。
この小説「シンデレラ・ティース」の舞台は、とあるオフィス街の歯科医院。
もし歯医者に対して、「怖い」ってイメージ・思い込みを持っているとしたら、この小説に登場する優しい歯科スタッフたちが、それをきっと消してくれる。
歯痛と、小さいけれど大切な秘密に効きます。
注目の新鋭による、ひと夏の物語。
大学生のサキは、大の歯医者嫌い。なのに、ちょっとしたきっかけで、なぜか歯科医院の受付アルバイトをすることになってしまう。
冗談じゃない! 断ろうとするサキだが、いつしか魅力的なスタッフと、患者たちの持ち込む謎に、夢中になっていく。
夏休み、少しだけ彼女は成長していく。
新鋭が柔らかに紡ぎあげた、青春小説ミステリー風!
主人公を含めた、品川デンタルクリニックのスタッフたちそれぞれのキャラクターが、とっても魅力的。
サキ。主人公。大学2年生。小さい頃から歯医者が大っ嫌い。
なりゆきでクリニックの受付係のアルバイトを始める。
笑顔が素敵。まじめで一生懸命。
歯科医は、品川院長、唯史おじさん、成瀬先生、の3人。
女性陣は歯科衛生士の歌子さん、中野さん、春日さん。それに事務の葛西さん。
そして、歯科技工士の四谷さん。
サキは、歯科が苦手ながらも、受付係として、患者への笑顔を忘れずに、とまどいながらも懸命に仕事に取り組みながら、歯科恐怖症を少しずつ克服していく。その姿が、とってもいい。
大学2年生の女の子の、若い力・元気さ・ひたむきさ、がひしひし伝わってくる。
「ありがとう、ここは本当にいいクリニックだね」
一瞬、言葉を失ってしまった。なんだろう、なんか嬉しい。ものすごく苦手な場所なのに、居て良かった、そう思ってしまうほどだ。
(中略)
そして、笑顔。今の私にできることって、やっぱりこれしかないから。
私自身も去年の11月〜今年の1月まで、虫歯の治療のために歯科に通った。
歯科医にかかるのは小学生のとき以来で、実に10年ぶりだった。
歯医者恐怖症の私は、違和感を感じながらも長い間、奥歯の虫歯を放置してしまっていた。
自宅近くのクリニック。最初にそのドアを開けて中に入るときには、恐怖と不安と緊張とでドキドキした。
でも、意を決して入ったそのクリニックが、私が持つ歯科医へのイメージを変えてくれた。大げさかもしれないけれど、医療は「人」なんだと感じた。
新しい器具の開発や治療法の改良なども、もちろんあるんだろう。
けれど、やっぱり大切なのは「人」なんだ。
何回か通ううちに、私の歯医者恐怖症はすっかり治ってしまったみたいだ。
「サキ、患者さんはもともとどこかが痛かったり不快だったりするから、ここへ来るんだ。そこでさらにつらい目に遭わされたら、不幸の二乗だよね。だからここでは、そのストレスをできるだけ減らしてあげたいと思うんだ」
「僕は『良薬は口に苦し』なんてことわざ、大っ嫌いだからね」
患者の気持ちを一番に考え、理解し、納得・安心させてくれ、その上で最善の治療のために力を尽くしてくれる。
この小説のクリニックは、まさに理想の歯医者さんだ。
オフィス街のクリニックには、歯そのもの以外にも、精神的にいろんな悩みを抱えた患者がやってくる。
サキは、そんな患者たちの悩みを何とかして解決してあげたいと、一生懸命になる。
歯科技工士の四谷さんにヒントを出してもらいながら、サキは患者へのアプローチ方法を探っていく。
ちょっとミステリー小説みたいな感じになっているのも、読んでいて面白い。
とにかく、歯医者さんが好きになる、そんな小説だ。
サキの友人のヒロちゃんを主人公にした姉妹編の小説「ホテルジューシー」も、ぜひ読んでみたい。
坂木司といえば、前に読んだ「ワーキング・ホリデー」も面白かった。









