![]() | (岩波文庫) カフカ(著) 池内 紀(訳) ![]() souiunogaii評価 |
『変身』の作者、カフカの短編集。実に不思議な魅力を持った物語たち。
内容紹介
実存主義、ユダヤ教、精神分析――。カフカ(1883-1924)は様々な視点から論じられてきた。だが、意味を求めて解釈を急ぐ前に作品そのものに目を戻してみよう。難解とされるカフカの文学は何よりもまず、たぐい稀な想像力が生んだ読んで楽しい「現代のお伽噺」なのだ。語りの面白さを十二分にひきだした訳文でおくる短篇集。20篇を収録。
カフカの作る物語世界にはどれも、不思議な魅力というか、魔法のような力を、私は感じる。
読むのにはいくらかの集中力が必要。少しでもボーっとしていると、すぐに文章の中で迷子になってしまう。
短編集である本書に収められている物語は、もちろんどれも短いものばかり。
2〜3ページで終わるものも多く、「夜に」は最も短く本文は9行しかない。
もくじ
掟の門
判決
田舎医者
雑種
流刑地にて
父の気がかり
狩人グラフス
火夫
夢
バケツの騎士
夜に
中年のひとり者ブルームフェルト
こま
橋
町の紋章
禿鷹
人魚の沈黙
プロメテウス
喩えについて
万里の長城
迷子になってしまう、というのは、ストーリーの先がまったく予想がつかない、ということによるのかもしれない。
突然、思いがけない方向転換があったり、予想よりもずっと早く結末にたどりついたりする。
気を抜いては読めない。しかし、決して難しいというわけでもない気がする。
読んで即座に物語の世界を頭の中に映像化する、ということが、やりにくい。
イメージする力というか、じっくりと想像力を働かせながら、その世界を作って、その中に入っていく、という読み方をしなくては。
読者にゆだねられている部分も大きく、そして多い。
最も印象に残った作品はどれかといえば、やはり「掟の門」だろうか。
うすれていく意識を呼びもどすかのように門番がどなった。
「ほかの誰ひとり、ここには入れない。この門は、おまえひとりのためのものだった。さあ、もうおれは行く。ここを閉めるぞ」
「掟の門」より
もうひとつ挙げるとすれば、「流刑地にて」も、気に入った。
機械にかけられた囚人のすべてが見出したものが将校には拒まれていた。死体は唇をかたく横にむすび、目をひらいていた。生きているようにみえた。視線はもの静かで信念をたたえていた。その額に太い鉄の針が深々と突き立っていた。
「流刑地にて」より
上の2つに限らず、他のどの物語も、その主人公は皆、他人には理解されない孤独な世界にいながらも、自身の信念や正義を貫こうとする。
カフカがまた好きになる一冊。
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