HOME > 本(文芸・芸術) :このページの記事一覧
2007-09-23

『未来形の読書術』石原千秋 を読んで


未来形の読書術 (ちくまプリマー新書)石原 千秋未来形の読書術
(ちくまプリマー新書)
石原 千秋

souiunogaii評価 ハート2つ

私たちは、なぜ本を読むのだろう。
「読めばわかる」というレベルを超えて世界の果てまで「自分」を追いかけていくめまいがしそうな試みこそ、読書の楽しみだ。

本を読みながら、私は何を考えているのだろう?
本を読むとき、私の頭の中で何が起こっているのだろう?
そんな「何となくわかっている気がするけれど、はっきりとは答えられない」ような問いに、本書は論理的かつ明解な文章で答えを与えてくれる。

「小説を読んで感動する」とはどういうことなのか、それがわかってくると、今までより少し、小説を読む楽しみが増えてくる気がする。
もくじ
まえがき―いま、どこにいるのか
第1章 本を読む前にわかること
第2章 小説とはどういうものか
第3章 読者はどういう仕事をするのか
第4章 「正しさ」は変わることがある
あとがき―装う本
「読者の仕事」を深めるための読書案内

第1章では「言語論的転回」というちょっと聞きなれないキーワードが登場する。
その「世界は言語である」という考え方を、たくさんの例を挙げながら、理系学生の私にでも分かるような文章で説明してくれている。
しかし、本が僕たちを連れて行ってくれるのは、言葉からこぼれ落ちた世界へだ。そして、言葉からこぼれ落ちた世界の中心には「自分」が存在しているのだ。

第2章では「過去形の読書」、第3章では「未来形の読書」について述べられている。
文学とは何なのか、小説とは何なのか、作家の意図とは何なのか。
「内包された読者」という新しいキーワードが登場するが、分かりやすく説明してくれるので難しくはない。
芥川、漱石、太宰などから例文を引きながら、私たちはどういう視点に立って、何を求めて小説を読むべきなのかを教えてくれる。
小説は宝探しなのだ。小説には、宝がたくさん埋まっている。

第4章は評論の読み方について。キーワードは「パラダイム・チェンジ」。
何が「正しい」のかは時代によって変わっていく、ということを東大の過去の入試問題を例にしながら、解説している。

今までにあまり読んだことのないジャンルの本だったから、ちょっと難しいかなと初めは思っていたんですが、そんなことはなく、けっこう面白く読めました。

夏目漱石の「こころ」からの例文があったので、再び「こころ」を読んでみたくなってしまった。
高校生のときに、現代文の教科書に一部が載っていたので、気になって書店で文庫を買ってきて読んだ。
けれど、あの頃は「本の読み方」なんかよく分かっていなかった。だから見えていなかったものが、まだ残っている気がしてきたのだ。
こころ (集英社文庫)夏目 漱石
こころ (集英社文庫)
夏目 漱石

『こころ』大人になれなかった先生 (みすず書房)石原 千秋
『こころ』大人になれなかった先生 (みすず書房)
石原 千秋

未来形の読書術 :わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる


2007-09-20

『読書の腕前』岡崎武志 を読んで


読書の腕前 (光文社新書) 岡崎 武志読書の腕前
(光文社新書)
岡崎 武志

souiunogaii評価 ハート1つ

書評家の岡崎武志さんが「読書」についてあれもこれも書いた、内容盛りだくさんの本です。
もくじ第1章 本は積んで、破って、歩きながら読むもの
第2章 ベストセラーは十年後、二十年後に読んだほうがおもしろい
第3章 年に三千冊増えていく本との闘い
第4章 私の「ブ」攻略法
第5章 旅もテレビも読書の栄養
第6章 国語の教科書は文学のアンソロジー
第7章 蔵書のなかから「蔵出し」おすすめ本

「なぜ人は本を読むのか?」という問いに始まり、著者の「読書への想い」、読書のスタイル、書評という仕事、本の選び方・買い方、子供時代から学生時代までの読書、などなど読書についての思いつく限りのことを一冊の本にした、そんな感じの本です。
ひとつはっきりしているのは、私の場合、本を読むことによって、自分がいかにものを知らないかを確認できる、ということだ。自分は知らないことだらけだ、ということが本を通してわかる。つまり、知らないことを知ることで、はじめて「それを知らなかったこと」に気づくのである。そして、知らないことを知ることは、つねに気持ちがいい。

著者は大の古本好きで、全国の各地の古本屋を巡って、掘り出し物を探すのが趣味だそうです。
自宅の書庫は本であふれていて、ブックオフには行くけれどアマゾンは使わない。
ベストセラー本や売り上げランキング上位の本には手を出さない。
という自分流の読書のスタイルを作り上げ、守っているという、(頑固な?)読書家です。

ところどころに「あれ?これは私とは違うな」と疑問に思う主張もあるのですが、それを含めても、こんな風に読書を愛する人になってみたいものだ、と思ったりもします。
ベストセラーを買う人は、本の中身より「話題」を買っているのだろう。

本書では、非常に多くの本が著者の書評とともに紹介されています。
(小説が中心)
そのほとんどは、私がタイトルも知らない本ばかりでした。
自分はまだまだ何も知らない読書の初心者だな、と思い知らされます。
私も、いつだって「もっと本を読もう」、読みたいと考えている。そして、見えない言葉で書かれた世界のことを、少しでもたくさん知りたいと思っている。

読書を何よりも愛する読書家の書いた、読書の本です。

「この本、私も読んでみたい!」と感じさせる文章は、さすが本職の書評家だな、と感心します。

著者が紹介してくれた本の中で、特に私が気になったものを、自分用の覚書として挙げておきます。
桟橋で読書する女 (文春文庫)マーサ・グライムズ(著), 秋津 知子(訳)
桟橋で読書する女 (文春文庫)
マーサ・グライムズ(著), 秋津 知子(訳)

エリック・ホッファー自伝―構想された真実 (作品社)Eric Hoffer (原著), 中本 義彦(訳)
エリック・ホッファー自伝―構想された真実 (作品社)
Eric Hoffer (原著), 中本 義彦(訳)

ヘンリ・ライクロフトの私記 (岩波文庫)ギッシング (著), 平井 正穂 (訳)
ヘンリ・ライクロフトの私記 (岩波文庫)
ギッシング (著), 平井 正穂 (訳)

タイムスリップ・コンビナート (文春文庫)笙野 頼子
タイムスリップ・コンビナート (文春文庫)
笙野 頼子

「読書の腕前」の上げ方 :わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。