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2007-12-25

『落ちこぼれ損保マンの保険金不払い日記』江戸川損歩 を読んで


落ちこぼれ損保マンの保険金不払い日記 (ダイヤモンド社)江戸川 損歩落ちこぼれ損保マンの保険金不払い日記
(ダイヤモンド社)
江戸川 損歩

souiunogaii評価 ハート3つ

もくじ
プロローグ 内側から見た保険会社の真実
第1章 大量不払い発生の真相
第2章 これが恐るべき支払い漏れの実態だ!
第3章 不払いの損保からしこたま保険金をぶんどる方法
第4章 不払いよりもひどい保険金の払い過ぎ
第5章 疑わしきは支払うが基本
第6章 寄らば大樹の社畜たちの生態
第7章 知らないやつがバカを見る保険会社攻略テクニック

著者は中途で損保会社に入り、10年以上支払い業務を担当してきたベテラン損保マン。
本書は、彼が自身の目で見てきた損保会社の汚い部分を洗いざらい書いた、内部からの告発暴露本だ。

大量の不払いの事実が発覚してしまった損保会社。
最近、急に大手損保のテレビCMが誠実さをアピールし、好印象を持たせるようなイメージのものに変わったような気もする。

しかし、本書を読んでしまうと、そのCMがとたんに嘘くさいものに見えてきてしまう。

約款をまったく読んでいない管理職。代理店と損保会社の不健全な関係。
不払い・過払いが発生するのが必然とも思える会社の体質。
あまりにその内容はひどすぎて、ここには詳しくは書けないが、
損保会社というか損保業界というのは、もう今さら修復できないほどに腐った体質になっているようだ。

知識が無いというのはとても恐いことだと思った。
自分の利益・権利を守るためには、正しい知識を身につけるしかない。
でなければ、だまされて損をする。

忙しい日常業務でたまった「こんなことを許していていいのか!」という怒りがこもった文章がリアルだ。


2007-12-17

『ちょいモテvs.ちょいキモ』フェルディナント・ヤマグチ, 渡辺和博 を読んで


ちょいモテvs.ちょいキモ (文藝春秋)フェルディナント・ヤマグチ, 渡辺 和博ちょいモテvs.ちょいキモ
(文藝春秋)
フェルディナント・ヤマグチ
渡辺 和博

souiunogaii評価 ハート1つ

格差社会とか、勝ち組・負け組とかいう種の言葉を人々が口にするようになって、もう数年が経つ。
本書のテーマは、そのいわゆる勝ち組についてだ。

NHKでワーキングプアを特集する番組がつくられ、日テレは派遣社員の悲惨な現状やネットカフェ難民・ホームレスの若者たちを追いかけてた。
そこに映された、苦しんでる人々が、世間で言うところの負け組なんだと思ってる。
で、一方、商社や外資企業に務めるサラリーマン、ITベンチャーの社長などを、世間では勝ち組と呼ぶのかと。

しかし、本書は、それは少々大雑把すぎる間違った認識だと言っている。
少しの金をつかんだくらいで「めちゃモテ」状態になれるほど世の中甘くはないのである。
それどころか取材を進める中で、世間で「勝ち組」と目されている職業の中にも、厳然と「勝ち組」と「負け組」が存在することが判明した。勝ち組の中の負け組。これは想像以上にヒサンである。

勝ち組の中の負け組とは、確かに従来はあまりテレビなんかでは報道されてこなかった、かもしれない。
冷静に考えてみれば、どの世界にもヒエラルキーが存在することは当然なのかもしれないが、それでも、そういう境界の引き方もあったのか、という新しい視点だと思う。
もくじ
商社 コミッションビジネスはもう古い
広告代理店 「勝ち組」は、ただ1社のみ
テレビ局 「勝ちオーラ」の破壊力
外資系金融 華やかな世界で進む階層化
医者 成功の秘訣は「人間ドック診療」
税理士 IT企業と組んで「IPOリッチ」に
ITベンチャー 人のココロを金で買う限界
外資系生命保険 「3年目の壁」をいかに越えるか
建築家 師匠選びも芸のうち
対談 フェルディナント・ヤマグチ×渡辺和博―努力して失敗する人たち

真の勝ち組の人たちのライフスタイルと、勝ち組のフリをする負け組の人たちのライフスタイルとを対比しながら、そこに確かに存在する格差社会を、実におもしろおかしく語ってくれる。
乗ってる車、食べてるもの、着ている服・時計、女性との遊び方、そして心の内面まで。
2007-12-12

『人間行動に潜むジレンマ 自分勝手はやめられない?』大浦宏邦 を読んで


人間行動に潜むジレンマ (DOJIN選書)自分勝手はやめられない?大浦 宏邦人間行動に潜むジレンマ
自分勝手はやめられない?
(DOJIN選書)
大浦 宏邦

souiunogaii評価 ハート3つ

本が好き!より献本。

期待していた以上に、たいへん楽しめた。面白かった。
私がタイトルから想像していた内容の、10倍も20倍も幅広くそして奥深い話題に満ちていた。
「進化ゲーム理論」とは本書で初めて知ったのだけれど、これほど面白い学問分野があったなんて。
協力か、裏切りか。多くの人が協力しようとするとき発生する社会的ジレンマ。その背後には、利己と利他のあいだで揺れる人間行動の機微が存在する。社会的ジレンマの回避は可能なのか。本書では、人間をはじめ動物の行動の進化や、学習による行動の変化を扱う進化ゲーム理論を案内役に解決への道筋を模索する。
世界を見る目がきっと変わる!

著者の大浦宏邦氏は、大学の教員で、進化ゲーム理論と社会秩序とを専門に研究しているそうだ。
理論と実証実験の両方の側から。
もくじ
序章 自分勝手とはなにか
第1章 二種類の自分勝手の発見――囚人のジレンマとゲーム理論
第2章 上品、短気、寛容――進化ゲーム理論と協力の進化
第3章 協力するのはお得?――多人数協力の進化
第4章 闘争は回避できるか――社会秩序の始まり
第5章 共感と攻撃性のコントロール――ヒト社会への道
第6章 みんなに合わせる――現代社会と自分勝手
終章 自分勝手はやめられるか

「自分勝手はやめられない?」というサブタイトルでこの本を選んだのだけれど、読む前には、もう少し心理学っぽいというか、はっきりつかめない、観念的な話題についての本なのかと思っていたのだけれど、全然違っていた。
「世の中、自分勝手が多過ぎる」という声をデータを元に分析する話からはじまり、「自分勝手をやめるための方法」を、1冊通して探っていく。
その話の進め方が、極めて論理的で科学的で数学的なのだ。

自分勝手というものを厳密に定義することからスタートし、有名な「囚人のジレンマ」問題を筆頭に、様々なジレンマ問題を紹介していく。
タコ焼き屋のジレンマ、ワボンゴの実の分配、共有地の悲劇、タカハトゲーム、など。
そういった現実をモデル化した問題を、進化ゲーム理論という手法で攻めていく。

「進化ゲーム理論」というのは、私も本書で初めて出会った考え方なのだが、これが実に面白い。
もともと経済学者ノイマンらが考案したゲーム理論というものを、動物の社会行動進化を研究する生物学者らが発展させた理論だ。

最初は1vs1の人間同士の話で自分勝手を考え、徐々に複数の人間の関係、集団の中での自分勝手、集団vs集団の関係へとスケールが大きくなっていく。

著者と同様に社会秩序の研究をしてきた歴代の学者たちを紹介し、彼らが行った実証実験やそこから導かれた理論を、素人にも分かるように簡潔に説明してくれる。
もちろん著者自身が授業で学生を集めて行った実験の様子も多く紹介されている。
どれも表やグラフが付いていて、ぱっと見て分かるようになっているし、数字を出す計算式を説明してくれる。

そして、本書で私が特に面白いなと感じたのは、生命の進化の過程と自分勝手とを結びつけて考察しているところだ。
自分勝手というのが、なにも人間に限ったことではなく、野生動物にもあるというのは、何となく想像できるが、DNAや単細胞生物レベルにもあるというのは、驚きだ。
カンブリア紀を経て、アウストラロピテクス、ネアンデルタール人と。
生命誕生の瞬間から自分勝手というのがあって、サルからヒトへと進化する中でゆっくりと出来上がってきた社会秩序というものを、やはり、一つひとつ論理的に科学的に説明していく。
本書のテーマは「自分勝手はやめられるか」であるが、自分勝手をやめるということはすなわち利他的に振る舞うということである。そう考えていくと「自分勝手はやめられるか」という問いかけは、じつは「人間は利他的になれるか」という問いかけと同義であることがわかってくる。

KYとか、モラル低下とかマナーとか、集団の中での個人の振る舞い方がいろいろ指摘されているし、
企業や役所の不祥事とか、環境問題と途上国の開発とか、いや他にももろもろ。
そういう様々な問題の、根っこにあるものを見つめられた気がする。
2007-11-17

『派遣のリアル 300万人の悲鳴が聞こえる』門倉貴史 を読んで


派遣のリアル (宝島社新書)300万人の悲鳴が聞こえる門倉 貴史派遣のリアル
300万人の悲鳴が聞こえる
(宝島社新書)
門倉 貴史

souiunogaii評価 ハート2つ

内容紹介
ワンコールワーカー、偽装請負、データ装備費問題、ネットカフェ難民…
「ハケン」から日本の未来が見えてくる
『ワーキングプア』の門倉貴史が鋭く問う!
派遣労働者、大手派遣会社社員への取材ドキュメントも10本収録

この本に書かれている内容こそが、派遣社員に代表される非正規雇用労働者たちのリアルな姿だとするなら、その働き方の先にあるのは暗闇しかないのかと思えてくる。
もくじ
第1章 日給6000円で働く人たち
第2章 10分で分かる派遣の歴史
第3章 使い捨てられる女性派遣の現実
第4章 ネットカフェ難民と団塊派遣
第5章 労働ビッグバンは派遣に何をもたらすのか?

派遣会社、派遣社員、派遣先の会社の3者の間のゆがんだ関係。
本来は違法であるはずの二重派遣・偽装請負。
労働者派遣法、労働基準法、などの労働関連の法律。
バブル崩壊と就職氷河期。男女の格差。団塊世代の定年退職。
ネットカフェ難民とワンコールワーカー・スポット派遣。
労働ビッグバン・再チャレンジ支援などの政府の政策の問題点。

本書は、様々な角度から、「派遣」という働き方についての問題点を指摘し、その対策法を提案している。
一冊で、「派遣」についての一通りの知識が得られる内容になっている。
タイトルに“リアル”とあるが、説明にはグラフや表などのデータが多く添えられており、説得力に富んでいる。

また、実際の派遣社員の声や、ライターによるスポット派遣潜入取材によるドキュメント「派遣のリアル」も、非常に興味深い。

今日のニュースでも、ニューヨークのブロードウェイの労働者のストライキを報道していたし、
新聞でもフランスやドイツの鉄道のストライキの記事があった。

本書の最初のページには、次の言葉が書かれている。
「労働は商品ではない」
―フィラデルフィア宣言(国際労働機関)

ワーキングプア (宝島社新書)いくら働いても報われない時代が来る門倉 貴史ワーキングプア
いくら働いても報われない時代が来る
(宝島社新書)
門倉 貴史
2007-10-28

『今日、ホームレスになった 13のサラリーマンの転落人生』増田明利 を読んで


今日、ホームレスになった (新風舎)13のサラリーマン転落人生増田 明利今日、ホームレスになった
13のサラリーマン転落人生
(新風舎)
増田 明利

souiunogaii評価 ハート2つ

路上生活に揺れるホームレスたち。
彼らの平均年齢は55.9歳。ホームレスになった理由としては、失業・倒産や、病気や高齢で働けなくなった、などが主に挙げられる。
彼らの前職を調べてみると、正社員、会社経営者、自営業者の合計が全体の40%を占めており、リストラや倒産で転落する中高年が激増していることが分かる。
出口の見えない不況の昨今。明日は我が身に降りかかるかもしれない就職難、借金地獄、熟年離婚、家庭崩壊――そして、ホームレス。
日本社会の恐ろしい実態が、ここに登場する13人の生の声によって暴かれる。

読んですぐの感想、辛いなー、苦しいなー。

本書は、東京のホームレスの人たちへの、直接のインタビュー取材をまとめたもの。
テレビのドキュメンタリー番組やニュースの特集なんかでも、ときどきホームレスが取り上げられることもあるけれど、映像ではなくて文章から伝わってくる何とも言えない重たさが、この本にはある。

もくじ
CASE 1 エリートビジネスマンの暗転
次長の誤算 / 外資系企業の光と影 / ガード下の管理職 / 兜町けもの道 / 不安だらけで生きている
CASE 2 漂流するホワイトカラー
年を取るのが悪いのか / バブル世代は不用品 / リストラ役がリストラされて
ホームレス入門 ノブさんとの1週間
CASE 3 社長失格
ビルオーナーの転落 / 脱サラ・起業したけれど / アルカイダの馬鹿野郎
CASE 4 明日なき若者たち
多重債務の逃亡者 / 学歴・資格・特技なし

私は目を背けてしまう。
けれど、それはそこにある現実。

駅のゴミ箱や、電車の網棚で週刊誌を拾い集める人。
駅の階段の隅に新聞紙を敷いて、うずくまっている人。
高速道路の高架下や公園の、ダンボールとブルーシート。

毎日、目にしている。
半年くらい前、就職活動をしていた頃には、駅で寝ている人が、それまで以上に目に付いた。

いや、彼らを救済しようとか、援助しようとか、そういったが言いたいのでは決してない。
現在の日本社会に、このことに対して不満を言いたいのでは決してない。

ただ、彼らは自ら望んで苦しい状況に陥ったのではない。
本書に登場する13人は皆、日々後悔し、状況を改善したいと願い、懸命に暮らしてる。

この本の中で、最もずしりと重くのしかかってきたのは、次の文章。
昨日だけど雨が降ってきたんで地下鉄の構内に入ったんです。荷物を持ってうろうろしていたら、前から来た若いOL風の2人連れが私のことを避けて通っていった。汚いものを見るような目をしていたね。得たいの知れないヤツ、何をするか分からない危ない人間だと思ったんだろうね。
昔、自分がしていたことを今はされている。立派なホームレスになったもんだ。

しかし、だからといって、私は駅前でビッグイシューを売る人に近づこうとは思えない。
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