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2007-11-03

『ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ ハイテク海洋動物学への招待』佐藤克文 を読んで


ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ(光文社新書)ハイテク海洋動物学への招待佐藤 克文ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ
ハイテク海洋動物学への招待
(光文社新書)
佐藤 克文

souiunogaii評価 ハート5つ

著者の佐藤氏は、ウミガメ、ペンギン、アザラシなどを相手にする海洋生物学者だ。
内容紹介
ペンギン、アザラシ、ウミガメなどの水生動物は、海の中でどのように活動しているのだろうか?
その生態は、直接観察できないため謎が多かった。
だが、今や日本発のハイテク機器「データロガー」を動物に取り付けることによって、本来の生息環境化で、己の生存をかけてきびきびと動き回る動物たちの姿が解明されつつある。
この分野では、教科書を書き換えるような新発見が相次いでおり、「バイオロギングサイエンス」という新しい学問が誕生した。
いま、生物研究のフロンティアは水の中にある。

本書の表紙を開いてページをめくっていくと、まず最初に目に飛び込んでくるのは、何枚ものペンギン、アザラシのカラー写真だ。
この写真を見て、読んでみよう、と思った。
写真も良いが、もちろん本文の方もすばらしく面白かった。

南極という特別な環境の下で、動物という思い通りにはならない相手を前にして、困難を一つひとつ順に解決しながら研究を進めていく、学問の最前線で活躍する科学者の奮闘する姿が、鮮明に目に浮かんでくる。
彼らの興奮、感動がめいっぱいに伝わってくる。
もくじ
はじめに
1章 カメが定温動物でトリが変温動物?
2章 浮かび上がるペンギンと落ちていくアザラシ
3章 研究を支えるハイテクとローテク
4章 アザラシは何のために潜るのか?
5章 ペンギンの潜水行動を左右するもの
6章 ペンギンはなぜ一列になって歩くのか?
7章 教科書のウソとホント
あとがき

新たに明らかになってきた、ペンギン、アザラシ、ウミガメの生態の秘密。
それは最先端の研究成果なのだけれど、高校生程度の知識で十分に読めるように、非常に平易に明解に書かれている。

そして、本書が特別な本であるのは、ただ単に分かりやすいというだけでなく、面白い、という点にある。
最先端の研究の意義を一般の人に伝えたい!という著者の情熱が、文章全体からあふれ出している。
本書は確かに科学の本であるが、冒険小説を読むようなドキドキ・ワクワクを感じずにはいられない。

南極での実際の研究の様子が、読者自身にまるでその現場にいるかのような感覚を与えるほどに、生き生きと描かれている。
私自身は、ペンギンに触ったこともなければ、もちろん南極に行ったこのもない。
しかし本書を読むことで、それらを疑似体験できた気さえしてくる。

著者が行っているのは、データロガーと呼ばれる小型の計測機器やカメラを、直接動物たちの体に取り付けて、体温・泳ぐ速さ・潜る深さ・巣中の映像などを記録・分析するという研究だ。
機器自体は日本の電子技術が造ったハイテクなものなのだが、現場でのそれの使われ方は何ともローテクなのが面白い。
対象となる動物を見つけたら、体を押さえつけて、機器を接着剤やテープで固定し、白髪染めで目印をつけ、海に放す。
そして、再び陸に上がってくるのときを、何日も待ち続ける。

最先端の研究ということで、やることなすこと全てが初挑戦のことばかり。
「すべてのことが手探りであった。」

ウミガメを見つけるために、夜の砂浜を研究道具を持って歩き回っては、知らない人に怪しまれ注意される。
体重300kgのアザラシの周りをぐるぐる回りながら、必死に袋をかぶせておとなしくさせる。
目標のペンギンを探し出すために、無線アンテナを持って氷の上をスノーモービルで走り回る。
南極でのトイレは、氷の地面に穴を開けただけのもの。

海洋生物学の最前線の現場は、興奮と感激と驚愕の連続の毎日のようだ。

海外の学者たちとの共同研究の話もたくさん紹介されている。

日本とフランスとアメリカの文化の違いというか、会議の進め方、食事の風景、自然への姿勢などが国によって様々であることも、いろいろ書かれていて面白い。

今まで世界中の研究者たちが抱えてきた多くの謎が、少しずつ解き明かされてきている。
そんな中から、中学高校の理科の教科書を書き換えるような新発見が次々に生まれている。
これまでの科学の歴史を見る限り、具体的目標を掲げて行われる研究が、当初の予定に沿った成果を収めることはごくまれである。研究者一人一人が、純粋に自分の興味の赴くままに突き進んだ先に行き着いた発見が、結果的に予想外の分野で大きく役に立つといった例が非常に多い。
バイオロギング研究も、将来予想外の何かに役立ったりするのだろうか。
絶対に役に立たないとは言い切れまい。しかし、そんなことを陰で期待しながら研究を進めていくのは不純である。何かの役に立てようなどといった下心を持たず、おもしろい研究を突き進めていくのが、科学者として真摯な態度なのだと思う。

南極を研究の舞台にしてきた著者が、かつて南極点を目指した偉大な探険家スコットへのあこがれを書いているのもまた、かっこいいなと思う。

本書の最後の章は、次の文章で締めくくられている。
「求む男女。ケータイ圏外。わずかな報酬。極貧。失敗の日々。絶えざるプレッシャー。就職の保証なし。ただし、成功の暁には、知的興奮を得る」

海洋研究所 佐藤克文ホームページ
東京大学海洋研究所 国際沿岸海洋研究センター
日本バイオロギング研究会
国立極地研究所

書評 - ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ :404 Blog Not Found
世界最悪の旅―スコット南極探検隊(中公文庫BIBLIO)アプスレイ・チェリー・ガラード(著), 加納一郎(訳)世界最悪の旅―スコット南極探検隊
(中公文庫BIBLIO)
アプスレイ・チェリー・ガラード(著)
加納一郎(訳)

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監督:リュック・ジャケ


2007-10-30

『ダーウィン 世界を揺るがした進化の革命』(オックスフォード科学の肖像) を読んで


ダーウィン―世界を揺るがした進化の革命 (オックスフォード科学の肖像)レベッカ・ステフォフ(著), オーウェン・ギンガリッチ(編), 西田 美緒子(訳)ダーウィン―世界を揺るがした進化の革命
(オックスフォード科学の肖像)
レベッカ・ステフォフ(著)
オーウェン・ギンガリッチ(編)
西田美緒子(訳)

souiunogaii評価 ハート3つ

本書『ダーウィン 世界を揺るがした進化の革命』は、次の文章で始まる。
1835年9月15日、小さな船が帆いっぱいに太平洋の風をはらみ、南米の西岸沖およそ1000キロに浮かぶ島をめざして波しぶきをあげていた。船の名はビーグル号。赤道をまたいで点在する島々が、目前に迫っている。
このビーグル号に乗船していた若き科学者チャールズ・ダーウィンは、ゆくてにあらわれるのを今か今かと待ちわびていた。

科学者の物語を読むのが好きな私は、この冒頭の部分を読んだだけでもうワクワクしてきてしまう。

あまりに偉大な博物学者ダーウィンの一生を描いた物語。
もくじ
第1章 進化論の原点
第2章 飽くなき探求者
第3章 ビーグル号の航海
第4章 理論の誕生
第5章 「悪魔の牧師」
第6章 ダーウィンの遺産

19世紀のイギリスという時代背景を丁寧に説明しながら、ダーウィンがどんな少年・青年時代を過ごし、いかにして博物学にのめりこんでいったのかが、時系列の順を追って語られていく。

裕福な家庭に生まれ、十分な援助をしてくれる父親がいて、学びたいと望めばそのための環境がすぐに手に入る。
そして何より、自然・生き物に対しての興味や好奇心が人よりも強くて、観察というものが大好き。
そんな青年だったダーウィンが、学者となり、やがては世界をあっと驚かせる発見をすることになる。

(この科学者に対して、この表現が適切化どうか分からないが)
ダーウィンという人物が、あの時代に生まれたことは、神様が定めた運命だったのではないかと思えてくる。
実に恵まれた幸せな人生を送った科学者だと思うのだ。

ビーグル号による5年間にも渡る世界一周航海。ガラパゴス諸島で出会ったゾウガメ、イグアナ、フィンチなどの様々な動植物たち。
この冒険旅行の中でダーウィンの身の周りに起こった数々の出来事についても、結構細かいところまで詳しく書いてあって、この章を読むだけでも、たいへんに面白い。

後半では、いよいよ『種の起源』がどのようにして書かれたのか、当時の社会の中で進化論を発表するということが一体どういうことだったのか、という話になっていく。
ダーウィンの考えに影響を与えた科学者たちも多く登場する。
地質学のライエル、植物学のヘンズローとフッカー、経済学のマルサス。

「神の天地創世」の物語を語り「人間は最後に創られた特別な存在」と信じる人たちに、
「人間も動物の仲間で、実は祖先はサルと一緒です」と教える、その勇気が生まれる源になったものとは。

聖書の「生命は神が創った」という説を信じる教会からは反発されることを予想し、自身の学説を世に出すタイミングをうかがいながら、まだ完全には出来上がってはいなかった理論のパズルのピースを一つひとつ組み立てていく。
そうしながら、反論される要素を消していく。
そしてついに、それは一冊の本にまとめられる。

『種の起源』出版までのダーウィンと彼を取り巻く人たちのドラマが、実に面白い読み物になっている。
科学の新しい思想は往々して強い抵抗に会うことをダーウィンは知っていた。人々は慣れ親しんだ考え方に、頑固にしがみつくからだ。彼は『種の起源』への反感について、「これまでの反感の大半は、太陽がじっと動かず、地球がそのまわりをまわっていると最初に言われたときの反感と同じだ」という手紙を牧師である友人に書いている。16世紀のはじめに地球が太陽のまわりをまわっていると証明して天文学に革命をおこしたコペルニクスの説のように、自分の考えもいつかは広まっていくだろうと信じていた。

人々のそれまでの世界観・価値観をがらりと変えてしまう。
旧来の考えを守る人たちからは批判され罵倒され弾圧されるかもしれない。
それでも人類の未来にとって、科学にとって、大きな進歩だと信じて、自らの進む道を変えずに前に出て行く。

ダーウィン、かっこいい人だ。

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種の起原(上) (岩波文庫)ダーウィン(著), 八杉 龍一(訳)
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ダーウィン(伝記 世界を変えた人々 13) (偕成社)アンナ スプロウル (著), 乾 侑美子(訳)
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The Origin of SpeciesCharles Darwin
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Charles Darwin

Voyage of the BeagleCharles Darwin
Voyage of the Beagle
Charles Darwin

Charles DarwinAnd the Evolution Revolution (Oxford Portraits in Science)Rebecca Stefoff
Charles Darwin -And the Evolution Revolution
(Oxford Portraits in Science)
Rebecca Stefoff

2007-10-25

『〈あいまいさ〉を科学する』米沢富美子 を読んで


〈あいまいさ〉を科学する (岩波書店)米沢 富美子〈あいまいさ〉を科学する
(岩波書店)
米沢 富美子

souiunogaii評価 ハート3つ

著者の米沢富美子は、有名な理論物理学者で、今は慶応大学の名誉教授。
日本物理学会の最初の女性の会長にもなった立派な方だそうだ。

タイトル『〈あいまいさ〉を科学する』には“物理”の文字は入っていないが、本書は物理学について書かれた本だ。
もくじ
予断・診断・独断 「あいまい」の風景
第1章 そもそも「あいまい」って何だろう
 ―<多義性>「あいまい」は曖昧に使われてきた―
第2章 境界が「あいまい」
 ―<漠然性>何歳からが「おばさん」か―
第3章 「あいまい」を制御する
 ―<多値性>コンピュータを使いやすくする―
第4章 「あいまい」でない科学論
 ―<必然性>時計仕掛けの世界―
第5章 「あいまい」な未来
 ―<蓋然性>それでも宝くじを買うか―
第6章 「あいまい」にしか調べられないミクロの世界
 ―<不確定性>世界観が変わる―
第7章 「あいまい」から秩序が出現する
 ―<多様性>不可逆性が生命を産み出した―
第8章 「あいまい」に始まって「あいまい」に終わる
 ―<不可知性>宇宙の前に時間があったか―
結びに代えて 「あいまい」は偉いやつなのだ

本書の内容を大きく3つに分けると、

・論理学で考える「あいまい」
・数学で考える「あいまい」
・物理学で考える「あいまい」

となるが、メインになるのはもちろん3番目の物理学の話だ。
16世紀から21世紀に至るまでの、その時代ごとの物理学の主役になった人物たちにスポットを当てながら、歴史を順にたどっていき、物理学がどのようにその形を変えてきたのかを語ってくれる。

専門的な表現や数式などはほとんど用いずに、重要な概念だけを選んで、それを一般向けの平易な表現で書いてくれているので、物理を知らない人でも、興味さえあれば、本書は楽しく読める本だと思う。

登場する学者たちの名を並べてみると、

ケプラー、ニュートン、ガリレイ、デカルト、ラプラス、ポアンカレ、アインシュタイン、ホイヘンス、ヤング、ハイゼンベルク、ボーア、ボルツマン、プリゴジン、ガモフ、ハッブル

など。

米沢富美子という人の名を最初に聞いたのは、私が大学1年の4月頃だった。
NHK人間講座で「真理への旅人たち 物理学の20世紀」という物理学者を紹介する番組がやっていて、その進行役が彼女だった。
物理学科に入学したばかりの頃の私は、まだ物理という学問に期待や夢や希望を持っていて、ワクワクしながら見ていた記憶がある。
今ではあの頃の私とは変わってしまったな、なんて思い出しながらこの本を読んだ。
20世紀初頭の物理学革命で主役を果たした「相対論」と「量子力学」は、人類のそれまでの常識を180度変え、紛れもない反世界を提供した。(中略)
「相対論」と「量子力学」はまた、「あいまいさ」や「確率」に対するわれわれの認識を、根底から覆すものでもあった。(中略)
「絶対」の否定は、物理学のみならず、思想、哲学、芸術、文学にも大きな影響を与え、ダーウィンの進化論に匹敵する波及効果だったと評価されている。この世に「絶対的なもの」が存在しないと知ることは、人間の魂にとってこの上もない解放であった。

人物で語る物理入門 (上) (岩波新書)米沢 富美子
人物で語る物理入門 (上) (岩波新書)
米沢 富美子

二人で紡いだ物語 (朝日文庫)米沢 富美子
二人で紡いだ物語 (朝日文庫)
米沢 富美子
2007-10-22

『深層水「湧昇」、海を耕す!』長沼毅 を読んで


深層水「湧昇」、海を耕す! (集英社新書)長沼 毅深層水「湧昇」、海を耕す!
(集英社新書)
長沼 毅

souiunogaii評価 ハート4つ

「生物海洋学」という学問があるそうです。
海洋生物学と聞き間違えてしまいそうですが、両者は異なる学問です。
まえがきによると、生物海洋学は海洋における生物の「働き」を論じるもの、だそうです。
本書は、広島大学の長沼先生が、自身の講義をベースに書いた、生物海洋学の入門書です。
深層水が表層まで上がる海洋現象「湧昇」は、表層の光とミネラルたっぷりの深層水が出会うところであり、まさに海洋生物生産の鍵である。
本書では、海のメカニズムについてわかりやすく分析・解説し、海洋の持続可能な食糧生産を提言・検討する。「湧昇」を有効利用できるならば、100億人が贅沢なマグロをお腹いっぱい食べることも夢ではない!

「○○学」の入門書、と呼ばれる書籍は各分野で非常に多く出ているけれど、その手の本は大きく分けて2種類あると私は思う。
「教科書的・参考書的な構成で、ちょっと堅い、難しい」ものと、
「身近なテーマを扱い、読んでいて疲れない、分かりやすい」ものだ。
(例えば、前者では「松井教授の東大駒場講義録」(集英社新書)、後者では「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」 (光文社新書)が私は思い浮かぶ。)
まあ、難しい・分かりやすいという判断は、読者がどれだけ予備知識を持っているかによる部分も大きいかもしれないが。

で、本書はというと、もちろん後者に入る。
テーマに「これからのマグロ食」「新時代の食文化」を掲げている。
専門用語の使用は必要最低限におさえていて、しかし重要な概念はページを多く割いて丁寧に解説している。
そして文章スタイルも良い。
おそらく、長沼先生の授業も、学生の人気がきっと高いのだろうな、と想像させる。
その人がまだ知らない事柄を、どうやって興味・関心を持たせ、どうすれば分かるように教えられるか。
ものを語るときの、要素の選び方・順番・休憩のタイミング、それらを良く分かっている。
読んでいて実に心地よい。

そういえば、以前NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」に出演していた長沼さんは、本当に楽しそうに自分の研究を語っていた。

さて、前置きが長くなったけれど、内容の話へ触れていこう。
もくじ
第1章 マグロの生活圏の生産力
第2章 マグロを支える食物連鎖の役者たち
第3章 マグロの生産を支える湧昇流
第4章 100億人のマグロ生産を目指して

海流・大気の循環・地球の自転などの地球規模の自然のダイナミックな話。
プランクトンからマグロ・クジラに至るまでの海の食物連鎖の話。
種々の生物(プランクトン、クラゲ、サンゴなど)の生きるメカニズムの話。
植物プランクトンの光合成と深海のミネラルの関係の話。
などなど、視点を順に移しながら、海の中で、海水はどう流れ、栄養分はどう移動し、生物たちはどうつながりあっているのか、ということを自然に理解させてくれる。

そして、後半ではいよいよ「未来の漁業」を考える、ワクワクする計画の話へとつながっていく。
海の底に眠っているミネラルを表層まで持ち上げるのは、どことなく「海を耕す」というイメージですね。人の心を潤すカルチャー(文化)、土を耕すカルチャー(耕作)、そして、海を掘り返す第三のカルチャーの時代を迎える予感がします。

食物連鎖のピラミッドの一番下、最底辺である植物プランクトンを大量に育てることによって、小魚、イワシ、エビなどを増やしていく、という考えが紹介されている。
そして、そのための方法として、深海の豊富にある栄養・ミネラルを、人工的に海の浅いところに持ち上げて、太陽の光と栄養分に満ちた海を作ろうというのだ。

とてもスケールの大きなこの計画だけれど、本書を読んでいると、それがまったくSF的な世界ではなくて、十分に実現できる可能性をもっていて、かつ実現させる価値・必要性のあるものなのだと感じられてくる。

養殖や栽培漁業よりもさらに2歩3歩も先に進んだ漁業、まさに海を耕す漁業。

近い将来に、きっと現実のものになっているんだろうと想像すると、今からワクワクくる。
30年後のスーパーの鮮魚コーナーやお寿司屋さんのメニューを想像すると、今からドキドキしてくる。

本書には多数の海の生き物が紹介されてる。
読み終わった後は、きっと水族館に行きたくなる1冊。
生物海洋学入門 BIOLOGICAL OCEAOGRAPHY (講談社)Carol M. Lalli, Timothy R. Parsons(著), 関 文威, 長沼 毅(訳)
生物海洋学入門 (講談社)
Carol M. Lalli, Timothy R. Parsons(著)
関 文威, 長沼 毅(訳)

深海生物学への招待 (NHKブックス)長沼 毅
深海生物学への招待 (NHKブックス)
長沼 毅

海洋深層水利用学会

広島大学 海洋生態系評価論研究室
生物海洋学 :広島大学シラバス

【関連記事】
生物学者・長沼 毅を「プロフェッショナル 仕事の流儀」NHK で見て。
『宇宙がよろこぶ生命論』長沼毅 を読んで
2007-10-13

『脳と性と能力』カトリーヌ・ヴィダル、ドロテ・ブノワ=ブロウエズ を読んで


脳と性と能力 (集英社新書)カトリーヌ・ヴィダル, ドロテ・ブノワ=ブロウエズ(著), 金子ゆき子(訳)脳と性と能力
(集英社新書)
カトリーヌ・ヴィダル
ドロテ・ブノワ=ブロウエズ(著)
金子ゆき子(訳)

souiunogaii評価 ハート3つ

女性は<生まれつき>女らしく、男性は<生まれつき>男らしいのだろうか。もともと、女性はおしゃべりで、男性は権威的なのだろうか。巷では、男女の知的能力や行動、感性の違いを、脳の生来的な違いに求めようとする言説があふれている。それらは、どこまで根拠のあるものなのだろう?
さまざまな例を挙げながら、性差や能力と脳の関係について、神経生物学者と科学ジャーナリストがわかりやすく解説する。

男らしさ女らしさは、生まれつきのものではない。
男らしさ女らしさを作るのは、遺伝子でもホルモンでもない。
男らしさ女らしさは、その人が育っていく環境によって作られ、経験・学習によって作られ、個人差が非常に大きい。
男女の生物学的な差はDNAで潜在的にプログラムされているものではなく、社会・文化・経験・環境などによって作られるものである。

そういったことを、ただひたすらに訴える1冊だ。
もくじ
序文
第1章 男女間の争いにおける脳
第2章 違いを探せ―性によって、頭の中にどんな差があるのか?
第3章 経験が脳をつくるとき
第4章 遺伝子とホルモンと性別
第5章 情動と知性はホルモンの支配下に?
第6章 行動にどのような進化の刻印が押されているのか?
第7章 性の混乱
第8章 <神経社会学>へ?
エピローグ

今まで一般に常識とされていたこと。科学者たちがさも真実のように語っていたこと。
それらを「厳密に検証してみると、実は信用できないものや事実とは違うものがたくさんあったのだ」という形で、
懸命に「男女に生まれながらの能力差なんて存在しない」という結論に向かっていく。

一つの答えに向かって、多面的にアプローチしているので、いろいろな話題に触れていて読みものとして、とても面白い。

すでに常識と言えるほどに浸透しているような知識が、実はウソだった。
そういう話が多数登場する。
例えば、従来言われている右脳と左脳の役割分担だが、脳の機能はそれほど単純ではない、という話。
例えば、男女の違いを作るのはXXとXYという性染色体の違いである、というが、実際には人間の遺伝子はそんな単純なものではない、という話。

従来のの脳科学・遺伝子学・発達人類学などの研究結果に「?」をつきつけ、論理的に研究結果に信憑性がないことを暴いていく。
「ネイチャー」とか「サイエンス」という有名な学術雑誌に載った論文が、実はいいかげんなデータをもとにした信頼できないものだ、なんていうのには、ちょっとショックを受けてしまう。

生物学的な話題はちょっと難しそう、と思う場合には、最初にエピローグから読んでしまい、それから本文を読むといいかもしれない。
エピローグが本文全体の要約文(まとめ)になっているので、その方が読みやすい。

SexとGenderとかいう従来の枠組みではなく、新しい性差への認識の仕方を与えてくれる1冊だ。
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