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2009-03-14

『マイケル・ファラデー 科学をすべての人に』(オックスフォード科学の肖像) を読んで


マイケル・ファラデー―科学をすべての人に (オックスフォード科学の肖像)マイケル・ファラデー
科学をすべての人に
(オックスフォード科学の肖像)
コリン・A・ラッセル(著)
オーウェン・ギンガリッチ(編)
須田康子(訳)

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内容紹介
ロンドン市民を講演で熱狂させた最大の実験科学者
1804年、13歳で書店兼製本屋の徒弟となり、そこで出会った本をきっかけに科学の道を志す。電気と磁気の科学の開拓者として数々の発見とともに、『ロウソクの科学』(岩波・角川文庫ほか)として読み継がれる王立研究所のクリスマス講演を立ち上げ、市民や子ども向け科学講演の基礎をつくったファラデーの業績と生涯をわかりやすく伝える。

本書は、電磁誘導を発見したことで有名な、19世紀の科学者マイケル・ファラデーの伝記です。

私がファラデーの名を最初に聞いたのは、中学生のときだった。
理科の教科書に、彼の肖像があったのを覚えている。
そのときの授業の中で、理科の先生はこう言った。
「ファラデー、この人は天才だ」
そして、それに続けてこうも言った。
「君たちが高校に進んで、"物理"という科目の勉強をすることになると、このファラデーの発見に始まった"電磁気学"のことをもっと詳しく学ぶことになる。とにかく素晴らしい功績を残した偉大な人だ。先生はファラデーという人が大好きだ」

また、浪人生時代に通っていた予備校の物理の講師も、同じようにファラデーについて熱く語っていた。

あれから10年が経って、こうしてファラデーの伝記を読んでみて、今やっと、先生があのときどういう気持ちで話していたのかが分かった気がした。

ファラデーの父は鍛冶屋で、一家がイングランドの田舎からロンドンに出てきたばかりの頃に彼は生まれた。
生活はけっこう苦しかったようで、13歳のときに近所の製本店で働き始める。
満足な教育を受けられられなかったファラデーは、製本の仕事の中で数多くの本に出会い、"化学"という学問の面白さを知る。

そこから、ファラデーの果てしなく壮大なストーリーが始まる。
もくじ
第1章 科学の劇場
第2章 ファラデーのルーツ
第3章 ロンドン――製本屋の徒弟
第4章 王立研究所員
第5章 初期の化学実験
第6章 電磁気学研究の開始
第7章 化学を語る
第8章 電気、そして磁気の本格的研究
第9章 電磁気学――「神の庭で遊ぶ」
第10章 晩年

本書でも、「社会そのものの様相をも変えた人物、『世界史上もっとも偉大な実験自然哲学者』」とか、「電磁気学という拡大された科学の父」という風な言葉で語られる、ファラデーという人が、どんな道を歩んで、あの発見にまで至ったのかを、丁寧な当時の社会情勢や文化の描写を交えながら、語られる物語。
ファラデー自身の言葉で言うと、「普通の磁石で永続的な電流をつくりだすこと」に成功したのだ。発電機の発明である。
(中略)
この発見は、ファラデーにとっても新たな電気時代の幕開けとなった。この発見から、現在の発電機が生まれ、それをもとに巨大な電気産業が築かれることになる。

科学することの大切さを生涯をかけて伝え続けた、偉大な人物ファラデー。

【関連記事】
『ダーウィン 世界を揺るがした進化の革命』(オックスフォード科学の肖像) を読んで
ロウソクの科学 (角川文庫)ファラデー(著), 三石 巌(訳)ロウソクの科学
(角川文庫)
ファラデー(著)
三石 巌(訳)



2009-02-07

『100年の難問はなぜ解けたのか』春日真人 を読んで


NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (NHKスペシャル)100年の難問はなぜ解けたのか
―天才数学者の光と影
(NHKスペシャル)


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内容紹介
2007年1月、“宇宙の形を知る手がかり”といわれ、幾多の数学者が挑み、挫折し続けた難問「ポアンカレ予想」が解かれた。
「数学界の残酷物語」とも「変人数学者たちの大いなる浪費」ともいわれたこの難問への挑戦。その苦難と敗北の歴史を軸に、天才数学者たちの生き方と数学の魔力を描く。
もくじ
プロローグ 世紀の難問と謎の数学者
第1章 ペレリマン博士を追って
第2章 「ポアンカレ予想」の誕生
第3章 古典数学vsトポロジー
第4章 1950年代「白鯨」に食われた数学者たち
第5章 1960年代クラシックを捨てよ、ロックを聴こう
第6章 1980年代天才サーストンの光と影
第7章 1990年代拓かれた解決への扉
エピローグ 終わりなき挑戦

本書は、以前放送されたNHKスペシャルの同名番組が書籍化されたもの。

100年の難問はなぜ解けたのか〜天才数学者 失踪の謎〜 :NHK(2007/10/22)
私のように数学を知らない人でも十分楽しめる内容になってたのは、
数学の問題そのものの説明は簡単に済ませ、数学者ペレリマン自身のたどった道筋・生き方にスポットを当てていたからだ。

1904年に提唱された「ポアンカレ予想」という数学の命題を解き明かそうと、
1世紀もの間、多くの数学者が挑んで散っていった。
そして遂に難問を解き明かしたのが、ロシアのペレリマン博士。
2006年、4年に一度の数学界最高の栄誉であるフィールズ賞。
ペレリマン博士は授賞を拒否した。

一つの問題を解くためだけに人生の全てを賭け、その他のあらゆるものを捨て去ってしまった、ある数学者の苦悩を、丁寧に描いた物語。

読んでいると、番組を見たときの、あの興奮する感じがよみがえってきた。
ポアンカレ予想の証明に立ち向かった数学者たちの姿から感じられるのは、
ただ一つのことに、純粋に打ち込むことを決めた人生の壮絶さ、みたいなもの。
こんな生き方を選んだ人たちがいるんだ、っていうその事実に何だか圧倒されてしまうような。
"Mais cette question nous entrainerait trop loin"
(しかしこの問題は、われわれを遥か遠くの世界へと連れて行くことになるだろう)
宇宙空間の形について問いかけるポアンカレ予想。それは20世紀初頭の数学者にとってあまりに斬新な問題だったのかも知れない。

今日も、この世界のどこかで、同じように孤独と闘いながら、
数学の難問を解こうとしている数学者がいるんだろうと想像すると、
何だか、人類って、学問って、すごいなって。

本書で紹介されていた、『ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」』という小説。
実際の数学者をモデルに描いたという、人生をかけて数学の難問に挑んだ男の物語。
これも読んでみたくなった。
ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」 (ハヤカワ・ノヴェルズ)ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」
(ハヤカワ・ノヴェルズ)
アポストロス・ドキアディス(著)
酒井 武志(訳)


[追記]
ペレリマンについての新刊が出たそうだ。ぜひ読んでみたい。
完全なる証明完全なる証明
(文芸春秋)
マーシャ・ガッセン(著), 青木薫(訳)



辞退の理由 - #書評_ - 完全なる証明:404 Blog Not Found

【関連記事】
ポアンカレ予想「100年の難問はなぜ解けたのか 〜天才数学者 失踪の謎〜」NHKスペシャル を見て。
『ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」』アポストロス・ドキアディス を読んで
2009-01-17

『世界初!マグロ完全養殖』林宏樹 を読んで


世界初!マグロ完全養殖(DOJIN選書)波乱に富んだ32年の軌跡林宏樹世界初!マグロ完全養殖
波乱に富んだ32年の軌跡
(DOJIN選書)
林 宏樹


souiunogaii評価 ハート4つ

本が好き!より献本頂きました。
内容紹介
2002年6月,近畿大学水産研究所において,世界ではじめてクロマグロの完全養殖が達成された.いまだその生態も十分解明されておらず,完全養殖は夢のまた夢と考えられていた中での快挙だった.研究が始まった1970年からの32年に及ぶ道筋は,決して平坦ではなかった.だれも答えを知らない問題にぶつかり,立ちはだかる壁を一つずつ乗り越え達成した偉業.熊井英水を中心に実現させた挑戦の日々を描き出す.

こういう、プロジェクトX的なノンフィクション本、私はかなり好きです。
自然界の資源にまったく手をつけずに、完全な養殖クロマグロの生産に、まさに人生をかけて挑戦した男たちの物語です。
感動しました。
もくじ
挑戦のはじまり〜まえがきにかえて
第1章 クロマグロは養殖に向いた魚か
第2章 魚飼いの精神―近畿大学水産研究所
第3章 ヨコワ捕獲作戦
第4章 はじめての産卵から長い道程
第5章 32年目の偉業
第6章 完全養殖のめざすもの
終章 完全養殖を支えたもの
あとがき

最近、漁獲量が制限されたりして、何かと話題になっているマグロです。
日本人も大好きなマグロが、輸入できなくなる日がいつか来るかもしれない。
そんな事実を、なんと40年近くも前から予期し、その日のために戦いつづけてきた人たちがいたことを、恥ずかしながら私は本書を読むまで知りませんでした。

近畿大学水産研究所。
わずかな研究費と、粗末な設備と、少ない人員からスタートしたこの研究所が、世界初の偉業を達成するまでの、苦難と試行錯誤の積み重ねの日々を、
この研究の中心にいたメンバーにスポットをあてて描いた、
素晴らしい感動の物語です。

所長としてリーダーを務めた熊井英水さんをはじめとして、この計画に関わった人たちの"マグロ"に対する熱い思い、情熱みたいなものが非常に丁寧に書かれています。
「生き物というのは、そういうものですよ。簡単にいくはずがない。気を長くもって、長い目でやってください」
熊井はこの言葉を聞いて目が覚めたような気がした。原田の突然の死によって、研究所の所長に任命され、自分自身あせりがあったのかもしれない。すっと気が楽になり、またやってやろうという気力が湧いてきた。そして、熊井は初代総長の世耕弘一の言葉を思い出していた。
「不可能を可能にするのが研究だろ」

近畿大学のマグロ養殖の研究は、文部科学省の21世紀COEプログラムとそれに続くグローバルCOEプログラムに採択されている。
完全養殖を達成した後も、最終目標である、天然資源の保護に向けて研究は続いている。

近畿大学グローバルCOEプログラム
クロマグロ等の養殖科学の国際教育研究拠点|近畿大学グローバルCOEプログラム

amarinekindai.jpg
株式会社アーマリン近大


【追記】
2/2のカンブリア宮殿(テレ東)のゲストで、本書の主役である熊井英水さんが出演していた。

「マグロをつくれ!これが新時代の水産業だ!」:カンブリア宮殿(2009/2/2 テレ東)
2008-07-26

『99・9%は仮説 思い込みで判断しないための考え方』竹内薫 を読んで


99・9%は仮説 (光文社新書)思いこみで判断しないための考え方竹内薫99・9%は仮説
思いこみで判断しないための考え方
(光文社新書)
竹内薫

souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
飛行機はなぜ飛ぶのか? 科学では説明できない!あたまが柔らかくなる科学入門

「最近どうも頭が固くなってきたなぁ」
そんなあなたにつける薬は“科学”です。文系理系を問わず、科学のホントの基本を知るだけで、たったそれだけで、あなたの頭はグニャグニャに柔らかくなるかもしれないのです。科学の基本――それは、「世の中ぜんぶ仮説にすぎない」ということです。思いこみ、常識、前例、先入観、固定観念……そういったものにしばられて身動きがとれなくなっている人っていますよね? 「なんでこんな簡単な話が通じないんだ!」ってイライラしますよね? そんなときは、気休めにこの本を読んでみてください。きっと、ものの考え方から世界の見え方まで、すべてがガラリと音を立てて変わるはずですから。

えぇ、そうだったんだ!の連続。だから科学ってすごいんだ!
ベルヌーイの定理では飛行機は飛ばない、という話に始まり、
プトレマイオスの天動説とガリレオの地動説の話、
ミリカンの実験でのデータ改ざん、脳を切除してしまうロボトミー手術、小惑星と冥王星の話、アインシュタインの宇宙定数、ダーウィンの進化論、相対性理論、などなど、科学の歴史を追いながら、世界中の誰もが常識だと認めていた事実が、実は間違いだったとわかった事例をいくつも紹介する、という方法で、
「科学のほとんど全ては、実は仮説ばっかりで作られている。絶対的に確かなものなんて、無いんだ」
というメッセージを伝えている。

科学が好きな人にも、科学アレルギーの人にも、両方に楽しめる本です。
「科学ってこういうことなんだ」という実感を得られる一冊です。

著者の竹内さんは、本書のなかで、科学史や科学哲学を教育の中にもっと取り入れるべきだと強く主張しています。
盲目的に科学は万能だと信じきってしまうことの危険性を指摘しつつ、その反対に、全てが科学で分かるわけじゃないだろ、と科学を嫌うことの危険性も説いています。

科学は完璧なものでは決してないけれど、それでもこの世界を解き明かすための最良の方法を科学は持っている。
そんなことを私は感じました。
科学と真理は、近づくことはできてもけっして重なることはできない、ある意味とても切ない関係なんです。

科学のマイナス部分を一方ではとことんさらけだして、科学の限界を説明しながらも、
しかしだからこそ、科学には可能性があり、科学を学ぶことのプラスの部分をきちんと書いている。
竹内薫のこういう姿勢こそ、科学作家の正しい仕事のやりかただと思う。
私は本書を竹内薫の現時点における最高傑作だと認定する。
科学を知らない人にも、すでに「知っているつもり」の人にも、一読すべき価値がある。

竹内薫オフィシャルサイト
2007-11-27

『最速への挑戦 新幹線「N700系」開発』読売新聞大阪本社編 を読んで


最速への挑戦―新幹線「N700系」開発 (東方出版)読売新聞大阪本社最速への挑戦
新幹線「N700系」開発
(東方出版)
読売新聞大阪本社

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JR東海・JR西日本が共同で開発を進めてきた最速の次世代新幹線車両N700系。
その開発の大詰めを追う、読売新聞大阪本社版の連載(2004年1月〜05年3月)と、2000年に大阪府内版で連載された「新幹線物語」をまとめる。
新幹線の開発に情熱を傾けた鉄道技術者たちの熱い思い、現場の苦闘を、多くのカラー図版と共に綴る

今年2007年、N700系という新しい新幹線車輌がデビューした。
速度はもちろん、乗り心地・快適さにおいても、これまでで最高の新幹線に仕上がっているという。ある意味での「完成形」だ。
もくじ
I 最速への挑戦 新幹線「N700系」開発
第1章 技術者たちの挑戦
第2章 こだわりの技術
第3章 先行試作車
番外編

II 新幹線物語
第1章 夢に向かって
第2章 進化する車両
第3章 高速鉄道の未来

本書には、そのN700系の開発の物語が、主として技術者たちにスポットを当てて描かれている。
東海道の線路にはカーブが多い。そこを減速せずに走行するための数々の新技術。
高速化に伴う騒音問題・振動問題を解決するための試行錯誤の連続。
そして、高速化・省エネ化のための徹底した軽量化。

最先端のモノつくり技術の話が、簡潔明快な文章でとにかく「分かりやすく」読めるのは、本書が新聞の連載記事を元に作られたものだからか。

JR東海、JR西日本、日本車両、日立製作所、川崎重工、三菱電機。
限界を超える高いレベルが要求される世界で、それぞれの技術者たちの、苦しみながらも「何とかして実現させてやるんだ」という、その姿が、たまらなく輝いている。カッコいい。

革命と言われた300系を作ったJR東海、世界最高速の500系を作ったJR西日本。
N700系では共同開発という形を選んだ2社の、鉄道会社としての性格の違いなんかも説明されているが、これもまた興味深い。

本書に書かれているのは、N700系のことだけにとどまらない。
0系、100系、300系、500系、700系と続く東海道・山陽新幹線の歴史。
現場からトップまで、様々な立場のJR職員たちの思い。
リニア計画を含む、将来の新幹線への展望。
さらには、ヨーロッパ・東アジア諸国など海外の高速鉄道の話も。

私が小学生のときに、300系がデビューした。
「この新幹線は、何てカッコいいんだ!」と興奮したのを今でも覚えている。
「大人になったら、この新幹線の運転士になりたい」などと思ったりした。
まさに、あこがれの超特急だった。
その300系や500系が、N700系の投入に伴って東海道新幹線から徐々に引退していくというニュースを聞いたときには、あらためて時代の流れとテクノロジーの進化を思い知った。

スピード、快適、利便性の向上は、まさに「すごい」の一言。
次は、料金でも「すごい」と思える改革を、JRに期待したい。

n700.jpg
新しい新幹線N700系スペシャルサイト :JR東海
新幹線ガール (メディアファクトリー)徳渕 真利子新幹線ガール
(メディアファクトリー)
徳渕 真利子


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【関連記事】
『新幹線ガール』徳渕真利子 を読んで
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