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2008-09-13

『恋するスターダスト』新井千裕 を読んで


恋するスターダスト (講談社)新井千裕恋するスターダスト
(講談社)
新井千裕


souiunogaii評価 ハート3つ

魔法の呪文、トカジタカコを唱えれば、世界の本当の姿が見えてくる気がする。
内容紹介
キラキラッと、ときめいて、せつない。
携帯メールが織りなす、流れ星みたいな恋の物語。

携帯電話の画面は君の窓辺だから 僕はその窓明かりを眺めながら 電子のセレナーデを歌おう 心が宇宙なら、言葉は星 どうか僕の流れ星で 君の宇宙が一瞬きらめきますように 今宵も地上では 無数の星々のように 恋人たちの携帯電話が瞬く――

新井千裕さんの作品は、初めて読んだのだけれど、非常に良かった。

もう冒頭の部分を読んだその瞬間から、この素敵な星の物語に、完全に引き込まれてしまった。
彼女からのメールは星の光に似ていた。
あの頃、翔は引きこもりの生活を何年も続けていて、将来への展望は何もなく、心の中は暗黒の宇宙だった。
そんな翔にとって彼女はささやかな希望の光だったのだ。他人とのコミュニケーションを取るのが苦手だった翔にとって、唯一の理解者と言ってよかったし、彼女のおかげで自分はまったく孤独ではないと感じられた。

主人公は、翔という青年。
両親を交通事故で亡くし、祖母と二人暮らしをする彼は、高校生のときに引きこもり生活を始めた。
そんな彼が、祖母の死をきっかけにして、新しい世界に、外の世界に踏み出し、様々な人との交流を通して、少しずつ成長していく、その姿を描いた物語です。

翔の目線から描かれる物語は、純粋で透明感のある瑞々しい文章を重ねて、しかし、底に登場するのは、ちょっと変わったクセのある人物ばかりで、
さらに物語の展開は、ありえないことの連続で、もうたまらなく面白い。

そして、星や星座や宇宙にまつわるお話がたくさん使われているところも、この小説のポイントだと思う。
星好きには、たまらない。

逆上がり教、猿、イチジク、猪、オカマ村長、恵理、穴を掘る老人、…。

やっぱり、読んでもらわないとこの小説の魅力は伝わらない。
とにかく絶対面白いです。


2007-12-07

『学校のセンセイ』飛鳥井千砂 を読んで


学校のセンセイ (ポプラ社)飛鳥井 千砂学校のセンセイ
(ポプラ社)
飛鳥井 千砂


souiunogaii評価 ハート3つ

とっても良かった。飛鳥井千砂の作品、初めて読んだんだけれど、また私のお気に入りリストに加えようと思う素敵な作家さんに出会えた、そう感じた。
先生ではなくセンセイ。
教師だって、普通の生活をする普通の人なんだな、と。
内容紹介
教師に希望を見いだせない青年と周囲の人間が織りなすやさしい物語。
第18回小説すばる新人賞受賞作家による、受賞後第一作。
センセイって、もっと特別な人がやるものだと思ってたんだ。
とくにやりたいことがなく、気がつけば先生になっていた。
生徒は可愛げがないし、同僚とのつきあいも面倒だ。
それでも、“センセイの日々”は続いていく・・・・・・

物語の舞台は、名古屋。主人公は、桐原一哉、26歳。
埼玉出身で東京の大学を出た後、地元の塾で働き、その後、名古屋市内の私立高校の教師になった男だ。
友人からは「キングオブ面倒くさがり屋」などと呼ばれている。
そんな桐原先生の、「俺、ちょっと変わってみようかな」というストーリー。

学校を舞台にした小説はこれまでに何冊も読んできたけれど、それはほとんど生徒が主役の物語ばっかりだった気がする。
でも、本書『学校のセンセイ』は、文字通り、教師が主役の物語で、しかも教師の仕事にはそれほど情熱はなくて、こういうのは私は読むのは初めてで、それが新鮮だった。(あぁ、教師の目に生徒はこう映るんだ、と)

面倒なことを避けるために、生徒とも同僚教師とも表面的な、当たり障りの無い接し方しかしない。
そんな桐原先生を“俺”と一人称にし、その目から見る世界が描かれる。
心で思っていること、と口で言っていることとが、まるで違っているそのギャップの大きさに、思わず笑ってしまったり、そうだよなと納得したり、おい!と突っ込んだり、そんな風に楽しみながら読める。
こういうのが、私は好きだ。

主人公以外の登場人物たちも、みんな一癖あるが魅力あるヤツらばかり。
男女の生徒たち、同僚教師、先輩教師、高校時代からつながりのある友人たち、隣のアパートにすむ変わった女とその彼氏。
とにかく面白い人たち。
そして主人公は、その周りの人たちとの関わり方を、ちょっとずつ変えていく。
何か大きなきっかけがあって、という訳ではない。
周囲のいろんな人の、いろんな言葉によって、ゆっくりと動かされていく、そんな感じ。

ある夜、少し酔った主人公が語ったことが、印象に残る。
……だから俺、面倒くさがってんのかな
熱くなったり暴走したりして、後から“すいません、あれはなかったことにしてください”って言うのが恥ずかしいっつーか、怖くて全部面倒くさがってんのかも
周りの目を気にせず好き勝手なことやりたいとかさ
うるさいって思われても自分が思うこと主張したり、人に意見したりとか、望まれてなくても人のために何かするとかさ
弱ってるときとか、助けて欲しいときとか、堂々と“助けて”って言ったりとか
今の自分が嫌だから、無理かもしれないけど変わろうとしてみるとか
自分の好きなこととか、好きな人のこと、堂々と好きだって言ったりとか
そういう欲求、俺にもあったんじゃないのかな。でも……

あと、愛知県出身の私が個人的に面白いなと思ったのは、埼玉出身の主人公から見る名古屋の不思議ポイント。
「放課後じゃなくて授業後」とか「家賃はもちろん駐車場込みの値段」とか「名鉄名古屋駅のホームはありえない」とか。
それで、本の最後のページの著者の欄を見ると、
北海道出身、愛知淑徳大学卒業とある。なるほど、納得だ。

まぁ、とにかく良い小説だった。
人が変わっていくのはこういう風なことなんだ、と。
飛鳥井千砂も好きになった。

『はるがいったら』(すばる新人賞受賞作)も読んでみたい。

名鉄名古屋駅 :名古屋鉄道
ナナちゃんコレクション :名鉄百貨店
コメダ珈琲に行こう(シロノワール)
はるがいったら (集英社)飛鳥井 千砂はるがいったら
(集英社)
飛鳥井 千砂
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