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2009-10-04

『宇宙がよろこぶ生命論』長沼毅 を読んで


宇宙がよろこぶ生命論 (ちくまプリマー新書)宇宙がよろこぶ生命論
(ちくまプリマー新書)
長沼毅



souiunogaii評価 

内容紹介
「生命とは何か?」その答えは宇宙にあった!

宇宙生命よ、応答せよ。
数億光年のスケールから粒子レベルの微細な世界まで、
とことん「生命」を追いかける知的な宇宙旅行に案内しよう。
「宇宙の中の自分」を体感できる、宇宙論と生命論の幸福な融合。
もくじ
はじめに―宇宙生命よ、応答せよ
第1章 生命のうつわ、ウチュウ―宇宙論入門の入門
第2章 水、この奇妙なるもの―生命にとって唯一無二の物質
第3章 生命を駆動する化学エネルギー―量子構造を理解する
第4章 電磁気力と生命―わが太陽から放射される色と光の恵み
第5章 生命の偶然と必然―生命と非生命のあいだ
第6章 可能性と実在性―「星が輝く宇宙」に満ちるもの
あとがき

面白かった!
著者は生物学者の長沼毅さんです。
以前、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」に出演されていたのを見て以来、この人のファンになってしまいました。
生命の起源を探すために、深海でも火山でも南極でも、どこまでも自分の足で調査に赴くその熱い姿がとても印象的で、「あぁ、この人なんてカッコいいんだ!」と思いました。
広島大学 海洋生態系評価論研究室
生物学者・長沼毅「地の果てにこそ、真実がある」:NHKプロフェッショナル仕事の流儀(2007/09/18)

そんな長沼さんの本、文章がとっても素敵なんです。
自分の好きな研究のことを、広く一般の人にも知ってもらいたい。こんなに面白い世界があるんです、スゴイでしょう!
そういうメッセージがビシビシ伝わってくる、何ていうか、科学について書かれた本なのに理性じゃなくて本能に訴えかけるような、そんな不思議な力が長沼さんの文章にはある気がします。

本書『宇宙がよろこぶ生命論』は、2006年の東京工業大・大学院の地球惑星科学の集中講義がもとになっているそうです。
(原稿は南極観測の合間に執筆されたとか)

この地球に生命が生まれたのが、科学的にどれほど奇跡的な出来事だったのかを、宇宙論・電磁気学・量子化学・分子生物学などのさまざまな科学的目線から語ってくれています。
登場するキーワードを拾っていくとこんな感じです。
真空のエネルギー、スポンチカフェ(SPONCH CaFe)、インフレーション、ダークマター、マルチバース(多宇宙)、人間原理、異状液体、素粒子、パウリの排他律、水素結合、フントの法則、ビラジカル、パンスペルミア、エントロピー増大の法則、…

サイエンスを文学的に熱く語る、長沼スタイルの文章は読んでいて非常に楽しいしワクワクしてきます。
そして、ところどころに中原中也の詩やリグ・ヴェーダ讃歌、アーサー・C・クラークなどの文学作品を引用しているのも素敵だ。

とにかく、こんなにも情熱を持ってサイエンスの魅力を伝えられるなんて、生物学者・長沼毅の素晴らしい才能だと感じる。
生命のポテンシャルを胚胎し、じっさいに生物というリアリティを生んでしまった宇宙は、そのことを後悔していない。これは、文学的というか、非科学的に聞こえるだろう。しかし、意外なことに本当にそうなのだと言ったら、ますます「この狂人科学者め」と思われるだろうか。

科学を学ぶ道を志す高校生や大学生に、ぜひおススメした一冊。
やっぱり長沼毅は、カッコいい。

【関連記事】
『深層水「湧昇」、海を耕す!』長沼毅 を読んで
生物学者・長沼 毅を「プロフェッショナル 仕事の流儀」NHK で見て。


2009-09-19

『ALMA電波望遠鏡』石黒正人 を読んで


ALMA電波望遠鏡 (ちくまプリマー新書)ALMA電波望遠鏡
(ちくまプリマー新書)
石黒正人


souiunogaii評価 


内容紹介
アンデスの巨大な“電波の眼”

光では見られなかった遠方宇宙の姿を、高い解像度で映し出す電波望遠鏡。
物質進化や銀河系、太陽系、生命の起源に迫る壮大な国際プロジェクト。
本邦初公開!

もくじ
はじめに―私たちは波に囲まれて生きている
序章 アンデスの巨大電波望遠鏡ALMA
  ALMAは何の略? / 野辺山からALMAへ
第1章 電波で宇宙を見る
  1.電波とは何か / 2.宇宙からの電波はどのように発見されたか / 3.光でみる宇宙、電波でみる宇宙
第2章 日本の天文学の歩み
  1.光の天文学から電波天文学へ / 2.国際共同プロジェクトALMA
第3章 ALMAで何が見えるか
  1.宇宙の夜明け / 2.「第2の太陽系」を見る / 3.生命の起源に迫る
第4章 電波望遠鏡のしくみ
  1.干渉計とは何か / 2.ALMAの観測装置
おわりに

2011年の本格運用開始を目指して、国際プロジェクトとして建設が進められている電波望遠鏡「ALMA」。
著者は、その国際プロジェクトに参加している日本人スタッフの石黒正人さん。
一般の人に分かる言葉で、電波天文学の過去・現在・未来を語ってくれた一冊です。

南米チリのアタカマ高地、標高5000mの砂漠のような場所に、巨大な電波望遠鏡が80台。
プロジェクトに参加するのは、アメリカ、カナダ、EU、日本、台湾。
計画が動き始めたのは2001年頃。全体の総予算は1200億円だとか。

電波望遠鏡と言えば、すぐに思い浮かぶのは映画『コンタクト』。
ジョディ・フォスター演じる天文学者が、アレシボ電波望遠鏡や、ニューメキシコのVLAで遥か彼方から発せられた電波をキャッチしようと奮闘する姿がとてもカッコ良かった。
目では見えない宇宙のメッセージを、複数のパラボラアンテナを組み合わせた「電波干渉計」という特別な観測によって、宇宙の謎を解明しようとする。
天文学者の人たちの熱意が、プロジェクトの中にいる石黒さん自身の言葉から、リアルに伝わってきて、なんだかわくわくしてくる。

現地の建設風景や、観測画像など、本書にはカラー写真も豊富に掲載されていて、それらを見ていても面白い。
学問的な難しい話題にも結構触れられているんだけれど、難しい内容をできるだけ簡単な言葉で説明してくれているのも嬉しい。
ALMAでは、これまで日本が蓄積してきた電波天文学の研究や、技術開発の成果が最大限生かされており、世界のパートナーからも重要な一員であると尊敬されています。ALMAが完成すれば、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡が完成したときのように、素晴らしい研究成果が新聞等をにぎわすことになるでしょう。そのときが楽しみでなしません。

alma_web.jpg
ALMA WEB SITE (English)

alma_j.jpg
国立天文台 ALMA Home Page

【関連記事】
『すばる望遠鏡の宇宙 ハワイからの挑戦』海部宣男 を読んで
『東京大学マグナム望遠鏡物語』吉井譲 を読んで
2009-01-10

『すばる望遠鏡の宇宙 ハワイからの挑戦』海部宣男 を読んで


すばる望遠鏡の宇宙 (岩波新書カラー版)ハワイからの挑戦海部宣男すばる望遠鏡の宇宙
ハワイからの挑戦
(岩波新書カラー版)
海部宣男

souiunogaii評価 ハート4つ

内容紹介
巨大望遠鏡時代のトップランナー、すばる望遠鏡。豊かなハワイの自然の中で、その建設のリーダーとして深く関わってきた著者が、すばるによって初めて明らかになってきた銀河の果てと太陽系外惑星の姿を迫力あるカラー写真とともに描きだす。すばる望遠鏡建設の苦心・喜びを交えて語る宇宙写文集。
もくじ
第1章 未知への航海―宇宙へ船出したすばる望遠鏡―
第2章 宇宙に咲く花―すばるが観た宇宙の美しさ、不思議さ―
第3章 極限に挑む―技術の限界を追ったすばる望遠鏡―
第4章 マウナケアは星の天国である―ハワイ島の自然と人々と宇宙―
第5章 ビッグ・バンに迫る―この世界はどのようにして始まったか―
第6章 ひろがる太陽系―身近な宇宙にも新発見が満ちている―
第7章 太陽系外の惑星と生命―科学の夢はどこまで―

本書「すばる望遠鏡の宇宙」は、天体望遠鏡の設置環境としては世界一ともいえるマウナ・ケア山頂にある、世界最大級(一枚鏡の反射望遠鏡としてはつい最近まで世界最大だった)すばる望遠鏡を、それを作ったチームを率いたその人自ら一冊の本にまとめたものである。そんな本がスゴ本でないとしたら、何をスゴ本と呼べばいいのか。

私が本書を読んで感じた感想も、まさに↑にあるものと同じだ。

すばる望遠鏡プロジェクトといえば、以前に読んだ『宇宙の果てまで』(小平桂一 著)が非常に面白くて、感動もした。
本書は、その小平さんの後にプロジェクトリーダーを引き継いだ海部さんが書いたものだ。
『宇宙の果てまで』の方は、特に望遠鏡の計画〜建設、完成までの苦難を、その中心にいた人物を中心に描いた、感動の物語であった。
そして、こちらの『すばる望遠鏡の宇宙』の方は、建設の話ももちろん丁寧に描きつつも、さらに観測機器の開発や、それによって得られた成果に特にスポットを当てている。
2冊通して読めば、すばる望遠鏡が何のために必要で、どのように造られ、実際にどう使われているか、を当事者の目線で知ることができる。
科学好き、宇宙好きには、たまらない。

そして、何と言っても本書の見所は、すばるが観た宇宙の写真。
全ページカラーの本書には、すばるが観測した宇宙の銀河や星々の写真が多数収録されている。
それらを見ているだけも、十分に楽しめる。
本当に綺麗なのだ。

さらに、ハワイ・マウナケア山の風景や、望遠鏡建設時の写真もたくさん。日本通運の巨大トレーラーがすばるの8.2m, 20tのガラスの主鏡を運ぶ場面の写真などは、そのシーンを想像することができ、圧倒される。
すごい。

三菱電機、大成建設、富士通、キヤノン、川鉄鉄構、日立造船、日本津運、などの日本のメーカーの技術力の優秀さと、その重要さをあらためて感じる。

もちろん、天文学者としての海部さんが、すばる望遠鏡の観測成果やその意義を解説してくれている部分も、たいへん興味深い。
やや専門用語が多く、難しい内容もあるが、それまでは見ることのできなかった世界を見ることができるようになり、それによって新事実が浮かんでくる未来を想像すると、何だかワクワクしてくる。

それでも宇宙における生命の観測は、21世紀の科学の大きなテーマである。宇宙の生命の中に私たちが自分自身を位置づけたとき、「生命とは・人間とは何か」という古くからの問いにも、大きな転換が訪れるかもしれない。そのとき夜空の星は、きっとちがった姿で輝いて見えることだろう。
すばる望遠鏡が、そういう問いを問い続けるための一里塚になれるとよい。


冬は寒くて辛いけど、明るい星がおおくて、夜空を眺めるのが楽しみな季節だ。
会社から帰ってきて、自宅への道をあるきながら夜空を眺めると、オリオン座なんかが綺麗に輝いていて、何だかいいなと思う。
宇宙の果てまで  (ハヤカワ文庫NF)すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡小平桂一宇宙の果てまで
すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡
(ハヤカワ文庫NF)
小平桂一

souiunogaii評価 ハート5つ

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すばる望遠鏡のホームページ

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『東京大学マグナム望遠鏡物語』吉井譲 を読んで
2007-09-11

『東京大学マグナム望遠鏡物語』吉井譲 を読んで


東京大学マグナム望遠鏡物語 吉井譲東京大学マグナム望遠鏡物語
(東京大学出版会)
吉井 譲

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前例のないことに挑戦する科学者の姿というのは、どうしてこれほどにもカッコいいのでしょうか。

ハワイには、日本の国立天文台の大型望遠鏡「すばる」があることは有名です。
その「すばる」とは別にハワイには日本の望遠鏡がもう一つあるそうです。
「マグナム」という名の望遠鏡で、クエーサーという星を観測するために、東大の専用のものとして作られました。
概要
不可能といわれた科学研究プロジェクト 執念が生んだ奇跡の大逆転!日本初のCOE初期宇宙研究センター(現ビックバン宇宙国際研究センター)が、マウイ島のハレアカラ山頂に口径二メートルの光赤外線望遠鏡、MAGNUMを設置した。幾多の規制や前例の壁を乗り越えてこの快挙が達成されるまでの一部始終と学問の最先端を切り拓くさまを、生き生きと描く。

国家プロジェクトである「すばる」建設計画に比べれば、遅れてスタートした「マグナム」計画は、望遠鏡の大きさ・予算・メンバーの人数、どれをとっても規模の小さいものでした。
しかし、その完成までには、やはり一人の天文学者の人生を変えてしまうほどの苦労と努力の物語があったのです。
もくじ
プロローグ
第1章 銀河から宇宙へ―謎の宇宙項に出会うまで
第2章 理論と観測をつなぐ―オリジナル・プロジェクトの着想
第3章 宇宙の深奥を観察する―クエーサーのモニター観測からわかること
第4章 東京大学マグナム望遠鏡プロジェクト―立案から完成まで
第5章 科学研究のあらたなるステージへ―プロジェクトとしてのサイエンス

前半の1〜3章は、学生の頃から教授になるまでの著者の天文学者としての半生と、世界ではどんな研究が行なわれているのか、とを重ねながら「マグナム」計画が何のために必要なのかを書いています。

高校物理の知識のない人・宇宙には詳しくない人には、少し難しい話が続きます。
(幸いにも私は大学で「天体物理学」という講義を受けていました。逆にだからこそ本書を手に取ったわけですが)
専門用語がたくさん登場します。(一応それぞれを簡単に説明してはいますが、それでも難しい内容です)
しかし、難しくて読めないという理由だけで、この本のメインである後半の「望遠鏡建設の物語」を読まずにいるというのは、非常にもったいないと思います。
プロローグの後は、1〜3章は飛ばして4章から先を読んでも、十分に楽しめると思います。
それほどに面白い、プロジェクトX的ドラマがあるのです。

そして、4章ではいよいよ「マグナム」計画が実行に移されていきます。
文部省の予算の獲得、チームの編成、土地の選定、ハワイ現地担当者との交渉・契約、住民や環境への配慮、保険、と様々な問題を一つずつ解決していきます。

さらに、著者は一人で企業を訪問して寄付金を集めるのです。何度も断られながらも、飛込みでのお願いを続けるのです。
寄付金を断られてもいい。こんな機会でもなければ、天文学を会社の人に説明するなんてことはありえない。だからもらえるかどうかは後の話で、天文学の話をする機会をもらったと思えばいい。

まるで映画「コンタクト」でジョディ・フォスターが演じた天文学者のエリー博士ようです。

そして数多くの苦難を乗り越えた末に、2000年9月「マグナム」観測所は開所式を迎えます。
結果を必ず社会に還元するという強い意志をもち、たとえ途中でどんな事態が生じても逃げ出すようなことはすまい。必死に頑張っていればいつか周囲も認めるし、協力も得られる。多少強引ではあってもあくまえ自分を信じて主張を通すことをしないと、何も変わらず、また人を納得させるような仕事はできない。夢は、本気になって実現する覚悟があって、はじめて現実となり、人を魅了することができる。

「すばる」計画リーダーの小平さんの本「宇宙の果てまで」も良かったけど、この本もまた良かったです。
宇宙の果てまで―すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡 小平 桂一宇宙の果てまで
すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡
小平 桂一

souiunogaii評価 ハート5つ

論争する宇宙―「アインシュタイン最大の失敗」が甦る (集英社新書)吉井 讓論争する宇宙
「アインシュタイン最大の失敗」が甦る
(集英社新書)
吉井 讓
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