![]() | (講談社文庫) 絲山 秋子 ![]() souiunogaii評価 |
内容紹介
指一本触れないまま「あなた」を想い続けた
高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。大学に進学して、社会人になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。それでも日向子の気持ちが、離れることはなかった。
川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」を収録。
こんな女の人に、ずっと側にいてもらったら、いいだろうな、なんて考えてしまった。
日向子と小田切は、実に不思議な2人だった。
平行な2本の直線は、どこまで遠くまで伸びていっても、永遠に交わったりはしない。
2人の間の距離は、互いに近づくことも離れることもない。
その、“ちょうどいい”距離を保ち続ける。
結婚はしないのに、葬式はするのだ。
友達でもない、恋人でもない、家族でもない。
「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」は連作で、2人のその後をちょっと書き方を変えて書いている。
「袋小路の男」では、“あなたは…”と日向子の目線からの世界で表現されたものが、
「小田切孝の言い分」になると、“あいつは…”と小田切の側から見る世界が加わって、ちょっと違ったテイストに仕上がっている。
なるほど、こういう続編の書き方もできるんだ、と。
どっか行きましょうよ、と言えば小田切は、そうだね、近いうちに、と答える。しかしその「近いうち」が近いうちに来たためしがない。
「アーリオ オーリオ」は、この本に収められた3作品の中では、私は一番これが好きだ。
主人公は、工学部出身で、科学が好きで、何より星が好きな人で、そんなところに、私と重なる部分を小さく見つけた気がして、親近感を感じたからかもしれない。
池袋のプラネタリウムとか、群馬の天文台が登場するのは、ポイントが高い。
地球から遠く離れたところにある星の光は、光ってから私たちの目に届くまでに何年もの時間がかかる。
そこに、書いてから相手に読まれ返事が来るまでに数日間のタイムラグがある「手紙」を重ねているところが、何とも素敵じゃないか。
「手紙ってリアルタイムじゃないじゃん」
「いいんだよ。タイムラグがあても」
「手紙かあ……」








