2007-10-25

『〈あいまいさ〉を科学する』米沢富美子 を読んで

〈あいまいさ〉を科学する (岩波書店)米沢 富美子〈あいまいさ〉を科学する
(岩波書店)
米沢 富美子

souiunogaii評価 ハート3つ

著者の米沢富美子は、有名な理論物理学者で、今は慶応大学の名誉教授。
日本物理学会の最初の女性の会長にもなった立派な方だそうだ。

タイトル『〈あいまいさ〉を科学する』には“物理”の文字は入っていないが、本書は物理学について書かれた本だ。
もくじ
予断・診断・独断 「あいまい」の風景
第1章 そもそも「あいまい」って何だろう
 ―<多義性>「あいまい」は曖昧に使われてきた―
第2章 境界が「あいまい」
 ―<漠然性>何歳からが「おばさん」か―
第3章 「あいまい」を制御する
 ―<多値性>コンピュータを使いやすくする―
第4章 「あいまい」でない科学論
 ―<必然性>時計仕掛けの世界―
第5章 「あいまい」な未来
 ―<蓋然性>それでも宝くじを買うか―
第6章 「あいまい」にしか調べられないミクロの世界
 ―<不確定性>世界観が変わる―
第7章 「あいまい」から秩序が出現する
 ―<多様性>不可逆性が生命を産み出した―
第8章 「あいまい」に始まって「あいまい」に終わる
 ―<不可知性>宇宙の前に時間があったか―
結びに代えて 「あいまい」は偉いやつなのだ

本書の内容を大きく3つに分けると、

・論理学で考える「あいまい」
・数学で考える「あいまい」
・物理学で考える「あいまい」

となるが、メインになるのはもちろん3番目の物理学の話だ。
16世紀から21世紀に至るまでの、その時代ごとの物理学の主役になった人物たちにスポットを当てながら、歴史を順にたどっていき、物理学がどのようにその形を変えてきたのかを語ってくれる。

専門的な表現や数式などはほとんど用いずに、重要な概念だけを選んで、それを一般向けの平易な表現で書いてくれているので、物理を知らない人でも、興味さえあれば、本書は楽しく読める本だと思う。

登場する学者たちの名を並べてみると、

ケプラー、ニュートン、ガリレイ、デカルト、ラプラス、ポアンカレ、アインシュタイン、ホイヘンス、ヤング、ハイゼンベルク、ボーア、ボルツマン、プリゴジン、ガモフ、ハッブル

など。

米沢富美子という人の名を最初に聞いたのは、私が大学1年の4月頃だった。
NHK人間講座で「真理への旅人たち 物理学の20世紀」という物理学者を紹介する番組がやっていて、その進行役が彼女だった。
物理学科に入学したばかりの頃の私は、まだ物理という学問に期待や夢や希望を持っていて、ワクワクしながら見ていた記憶がある。
今ではあの頃の私とは変わってしまったな、なんて思い出しながらこの本を読んだ。
20世紀初頭の物理学革命で主役を果たした「相対論」と「量子力学」は、人類のそれまでの常識を180度変え、紛れもない反世界を提供した。(中略)
「相対論」と「量子力学」はまた、「あいまいさ」や「確率」に対するわれわれの認識を、根底から覆すものでもあった。(中略)
「絶対」の否定は、物理学のみならず、思想、哲学、芸術、文学にも大きな影響を与え、ダーウィンの進化論に匹敵する波及効果だったと評価されている。この世に「絶対的なもの」が存在しないと知ることは、人間の魂にとってこの上もない解放であった。

人物で語る物理入門 (上) (岩波新書)米沢 富美子
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二人で紡いだ物語 (朝日文庫)米沢 富美子
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