2007-10-08

『ニート』絲山秋子 を読んで

ニート (角川書店) 絲山 秋子ニート
(角川書店)
絲山 秋子


souiunogaii評価 ハート3つ

前を向いて生きていこうとする力。今の状況を改善しようと一歩を踏み出そうとする勇気。
それらは、一回どこかに忘れてしまったら、再びその手に取り戻すことが難しい、そういうものなのだろう。
ニート。
彼がそれでも今日を生きているのは…。
内容紹介
久しぶりに覗いたキミのブログには、極度の窮乏を示すキミの生活ぶりが記されていた。食事は週に三食。一食は具のないインスタントラーメンで、あとの二食は調味料だけで作るチャーハンだった。食事のない日は水道水だけ。シケモクさえもなくなり、全財産は3,000円を切っていた。勤務先をやめ、引きこもり生活を続けるキミが何よりおそれたのは電気が止められること。ネットを切られることだけは避けなければならなかった。キミが死んでしまうと思ったのは少し大げさかもしれないが、どうしてこんなになるまで私に黙っていたのかと思っていたら、不意に泣けてきた……。
駆け出しの作家としてようやく本が出せるようになった女性作家とニートの青年との、友情とも恋愛とも言いがたい微妙な関係を描く表題作の「ニート」。
 他人を傷つけることを避けようとするばかりに優柔不断に陥り、かえって人を傷つけてしまうホテルマンの主人公と、育ての親である叔母、遠距離恋愛中の女医との距離とその揺らぎを描いた「へたれ」ほか、いずれも珠玉の五篇。

働く意思とか、そういう大きい問題でなくとも、もっとずっと些細なことが。

例えば、朝、目覚まし時計が鳴っているのを止めて、再び眠りについてしまうこと。
「今すぐ起きなきゃ遅刻なのは承知だけれど、あと5分いや、あと30分だけ寝たい」
そして結局は寝過ごしてしまう。
こういうことは、ニートでなくとも誰にでもあることだ。

今すぐやらなきゃいけない、でも、ヤル気がおきない。

例えば、声に出して伝えなきゃならない想いがあるのに、言わなきゃいけないのは分かっているのに、いざとなると言い出せない。

似ている、というか、ある次元では同じなんじゃないだろうか。

働かなきゃいけないのは分かっている、でも、働きたくない。
同じなんじゃないだろうか。

何かがほんの少しだけずれてしまうだけで、私たちだってニート化してしまいそうな、そんな気がしてくる。
夕方、キミからメールが来た。

銀行行った。ちょっとびっくりした。オマエのことなめてたわけじゃないんだけど。でもありがとう。
で、街金に行ったよ。それからスーパーで牛乳買った。あとはタマゴともやしとインスタントラーメン。米はまだあるんだぜ。あと買ったのはさ、タバコ。久しぶりのタバコだよ。

キミにはしみったれが身についてしまっている。肉買えよ。もっと豪儀な報告しろよ。
「ニート」より

「ニート」
小説家の「私」と、ニートの「キミ」との不思議な関係。

「ベル・エポック」
婚約者を亡くした「みちかちゃん」の引越しの準備の手伝いに来た「私」

「2+1」
「ニート」の続きの話。

「へたれ」
「僕」は、遠距離恋愛の彼女の「松岡さん」のいる新大阪行きの新幹線に乗りながら、母親代わりの「笙子さん」を想う。
5編の中では、これが私は一番好きかな。

「愛なんかいらねー」
大学教員の「彼女」は、行きつけのダイニングバーで刑務所から出てきた元教え子の「彼」と再開する。

いつまでもここにいるわけにはいかない。僕はお湯が沸くのをコンロの前で待つように、次の列に並んでじっとすることにした。乗らなくちゃいけないのだ。今度の電車に。
「へたれ」より

絲山 秋子は初めて読んだんだけれど、良かった。
長編とか、他の作品もぜひ読んでみたくなった。

【追記】
『沖で待つ』絲山秋子 を読んで
『逃亡くそたわけ』絲山秋子 を読んで

絲山秋子 Official WebSite


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