2007-09-22

『戦争を知らない人のための 靖国問題』上坂冬子 を読んで

戦争を知らない人のための靖国問題 (文春新書)上坂 冬子戦争を知らない人のための 靖国問題
(文春新書)
上坂 冬子

souiunogaii評価 ハート2つ

世間で話題になっている問題について、本当は知らないのに、知っているふりをして、その是非を語ってしまうことが、恥ずかしながらよくある気がする。
(最近で言えば、朝青龍問題、自民党総裁選、光市母子殺害事件の裁判など)
しかし、中にはその歴史、当事者・関係者の想いなどについての深い知識がないのに、安易に表面的な理解“イメージ”だけで是非を語ってはいけない問題だってある。
いまや、戦争を知らない世代が80%を占める時代となった。
戦争も、戦時下の緊張も、靖国神社なるものが戦時下で果たした役割も、まったく知らない人が圧倒的多数を占めているときに、参拝を続けたほうがいいか、悪いかと問い掛けることにどれほどの意味があるというのか。

本書のタイトルの通り、私は戦争を知らないし、靖国神社についても、ほとんど何も知らなかった。学校ではそんな授業は無かったし、他に靖国問題について教わる機会もなかった。
自らが求めて知ろうとしなければ、ずっと知らないまま終わってしまう、そういうものがこの世界にはたくさんある、そのことを今さら再確認させられた。
もくじ
第1部 靖国神社は日本人にとってどんな存在だったか
第2部 敗戦で立場を失う
第3部 日本人は加害者か
第4部 東京裁判とA級戦犯
第5部 無知がまかり通っている
第6部 裁いた側の異色
第7部 裁かれた側の異色
第8部 戦犯問題、ここがポイント
第9部 日本から戦犯が消えた日
第10部 近隣諸国の感情か、内政干渉か
第11部 靖国神社はいまのままで存続可能か
第12部 靖国問題決着のために
第13部 論拠のはっきりした政府声明を

この本を読んで、「自分がいかに無知だったのか」をあらためて確認できた。
小泉首相が参拝し、メディアがそれを大きく採り上げ、TVでは多くの人が意見を言っていた。
私も一時期はそんなTVのコメンテーターと同じように「私はこう思うよ」なんて偉そうに自論を語っていたことがあった。
それがどんなに無意味で恥ずかしいことだったのかに、気づくことができた。

A級戦犯、BC級戦犯、東京裁判、サンフランシスコ平和条約、いくつもの重大な事実を、私はほとんど何も知っていなかった。
しかし、それは「知っていなければいけないこと」と思えるものばかりだった。
戦争が終わってから千人を超える一家の主の命が奪われて、はじめて日本は平和を取り戻したのである。戦犯の命と引き換えに平和がやってきたという以外に表現のしようがない。でなければ、彼らの死は何であったのか。

中国も韓国も、あの時点でサンフランシスコ平和条約の門外漢だったのだから、A級戦犯およびそれにまつわる靖国問題に対する発言権はまったくない。いわば発言失格国である。

最後に著者は靖国問題へのいくつかの提案を行なっている。

「全国民を納得させる慰霊の場とするには特定の宗教枠を外した祈りの場とすべき」
「もし可能なら靖国神社の形式を変えて国家による護持を」
「もしどうしても国立追悼施設を造りたいなら硫黄島の摺鉢山の山頂がいい」
「近隣諸国宛てに日本政府の名に於いて、いまこそ声明書を発信すべき」

私の通う大学から歩いていけるところに靖国神社はある。何度もその前を通ったことはあるけれど、今まで参拝に行ったことはない。
しかし、一度行ってみようと、この本を読んでそう思った。


この記事へのコメント
トラックバックいただきました。
トラバは歓迎しますが、私の記事に対する見解も述べていただけるとうれしく思います。
例えば、こちらの記事では、上坂の著書の
《中国も韓国も、あの時点でサンフランシスコ平和条約の門外漢だったのだから、A級戦犯およびそれにまつわる靖国問題に対する発言権はまったくない。いわば発言失格国である。》
という箇所を肯定的に評価されているようですが、私はこの箇所を批判しています(http://blog.goo.ne.jp/GB3616125/e/d300eb48b68dc0285a8e0d7a361c47f3)。
上坂はその根拠として、サンフランシスコ平和条約第25条に、非締結国にはこの条約に関するいかなる権利も権原も与えないとあることを挙げていますが、私は、この条文を、日本政府がA級戦犯に対してとる行動について、非締結国である中国や韓国が一切論評できないと解釈することには無理があると考えるからです。souiunogaiiさんは、この点についてどうお考えですか?

あと、よろしければhttp://blog.goo.ne.jp/GB3616125/e/6a55835d54661124b44d9ea8b7407ed7
もご参照下さい。
本書は、靖国問題に関する入門書としては、非常に問題が多いと私は思っています。

Posted by 深沢明人 at 2007-09-23
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