2007-09-11

『東京大学マグナム望遠鏡物語』吉井譲 を読んで

東京大学マグナム望遠鏡物語 吉井譲東京大学マグナム望遠鏡物語
(東京大学出版会)
吉井 譲

souiunogaii評価 ハート4つ

前例のないことに挑戦する科学者の姿というのは、どうしてこれほどにもカッコいいのでしょうか。

ハワイには、日本の国立天文台の大型望遠鏡「すばる」があることは有名です。
その「すばる」とは別にハワイには日本の望遠鏡がもう一つあるそうです。
「マグナム」という名の望遠鏡で、クエーサーという星を観測するために、東大の専用のものとして作られました。
概要
不可能といわれた科学研究プロジェクト 執念が生んだ奇跡の大逆転!日本初のCOE初期宇宙研究センター(現ビックバン宇宙国際研究センター)が、マウイ島のハレアカラ山頂に口径二メートルの光赤外線望遠鏡、MAGNUMを設置した。幾多の規制や前例の壁を乗り越えてこの快挙が達成されるまでの一部始終と学問の最先端を切り拓くさまを、生き生きと描く。

国家プロジェクトである「すばる」建設計画に比べれば、遅れてスタートした「マグナム」計画は、望遠鏡の大きさ・予算・メンバーの人数、どれをとっても規模の小さいものでした。
しかし、その完成までには、やはり一人の天文学者の人生を変えてしまうほどの苦労と努力の物語があったのです。
もくじ
プロローグ
第1章 銀河から宇宙へ―謎の宇宙項に出会うまで
第2章 理論と観測をつなぐ―オリジナル・プロジェクトの着想
第3章 宇宙の深奥を観察する―クエーサーのモニター観測からわかること
第4章 東京大学マグナム望遠鏡プロジェクト―立案から完成まで
第5章 科学研究のあらたなるステージへ―プロジェクトとしてのサイエンス

前半の1〜3章は、学生の頃から教授になるまでの著者の天文学者としての半生と、世界ではどんな研究が行なわれているのか、とを重ねながら「マグナム」計画が何のために必要なのかを書いています。

高校物理の知識のない人・宇宙には詳しくない人には、少し難しい話が続きます。
(幸いにも私は大学で「天体物理学」という講義を受けていました。逆にだからこそ本書を手に取ったわけですが)
専門用語がたくさん登場します。(一応それぞれを簡単に説明してはいますが、それでも難しい内容です)
しかし、難しくて読めないという理由だけで、この本のメインである後半の「望遠鏡建設の物語」を読まずにいるというのは、非常にもったいないと思います。
プロローグの後は、1〜3章は飛ばして4章から先を読んでも、十分に楽しめると思います。
それほどに面白い、プロジェクトX的ドラマがあるのです。

そして、4章ではいよいよ「マグナム」計画が実行に移されていきます。
文部省の予算の獲得、チームの編成、土地の選定、ハワイ現地担当者との交渉・契約、住民や環境への配慮、保険、と様々な問題を一つずつ解決していきます。

さらに、著者は一人で企業を訪問して寄付金を集めるのです。何度も断られながらも、飛込みでのお願いを続けるのです。
寄付金を断られてもいい。こんな機会でもなければ、天文学を会社の人に説明するなんてことはありえない。だからもらえるかどうかは後の話で、天文学の話をする機会をもらったと思えばいい。

まるで映画「コンタクト」でジョディ・フォスターが演じた天文学者のエリー博士ようです。

そして数多くの苦難を乗り越えた末に、2000年9月「マグナム」観測所は開所式を迎えます。
結果を必ず社会に還元するという強い意志をもち、たとえ途中でどんな事態が生じても逃げ出すようなことはすまい。必死に頑張っていればいつか周囲も認めるし、協力も得られる。多少強引ではあってもあくまえ自分を信じて主張を通すことをしないと、何も変わらず、また人を納得させるような仕事はできない。夢は、本気になって実現する覚悟があって、はじめて現実となり、人を魅了することができる。

「すばる」計画リーダーの小平さんの本「宇宙の果てまで」も良かったけど、この本もまた良かったです。
宇宙の果てまで―すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡 小平 桂一宇宙の果てまで
すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡
小平 桂一

souiunogaii評価 ハート5つ

論争する宇宙―「アインシュタイン最大の失敗」が甦る (集英社新書)吉井 讓論争する宇宙
「アインシュタイン最大の失敗」が甦る
(集英社新書)
吉井 讓


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