2007-09-08

『スーパーコンピューターを20万円で創る』伊藤智義 を読んで

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)伊藤 智義スーパーコンピューターを20万円で創る
(集英社新書)
伊藤 智義

souiunogaii評価 ハート5つ

自然科学系のノンフィクションで、これほどにも面白いと思った本は久しぶりです。
もしも、高校時代や大学1年のときにこの本に出会うことができていなら、私の大学生活も、少しは価値のあるものになっていただろうに。

タイトルだけでは、「自作パソコンの話?」と思ってしまいますが違います。
東京大学の研究室で創られた、天文学の計算をするための特別なコンピューターの製作記録物語です。
通常のパソコンなどに比べて格段に速い計算を行なうスーパーコンピューター。
数十億〜数百億円をかけて、ときには国策として開発が行なわれるが、この分野でひときわ異彩を放つスーパーコンピューターが1998年に日本で開発され、話題を呼んだ。GRAPEと名づけられたそれは、開発費わずか20万円。天文学者たちによる手作りで、天文計算においては驚異的な計算速度を誇り、巨大楕円形銀河誕生の謎を解明するなど画期的な成果を挙げた。コンピューターの専門家のいない、たった四人の開発チームはいかにしてプロジェクトを成功へ導いたか…。無味乾燥に見える科学の世界の裏側で繰り広げられた熱い人間ドラマを、開発チームの一員だった研究者自らが活写する。

まさに「プロジェクトX」系の物語です。
物理学や天文学についての知識のある人やコンピューターの内部のしくみを少しでもしっている人なら、とっても楽しめる物語です。
(もちろん、そうでない人でも楽しめるように、専門的なことも簡単な言葉で分かりやすく説明されています)
「誰も作ったことのない物を、最初に創ることのカッコよさ」を感じながら、一気に読み終えました。
伊藤はドキドキしながらクロックスイッチを動かした。一回、二回、三回…。
データ列は伊藤の設計通りの変化を示していた。伊藤の身体に鳥肌がたった。
成功!
誰もいない研究室で、伊藤はじっとしていられなくて、ふうふう息をつきながら、うろうろと歩き回った。時間は深夜の3時を過ぎていた。
(中略)
電気をつけると伊藤はホワイトボードに大きく、「GRAPE-1完成! 9月2日」と書いた。

スーパーコンピューター開発の主要メンバー、杉本、夷崎、牧野、伊藤。4人それぞれが適材適所に分担された仕事をこなしていきます。
本当のチームワークとは何か?
それはきっと、馴れ合いでもなければ助け合いでもない。


この本では、著者は自分のことを「伊藤」と三人称で書いています。開発の現場での出来事を客観的に描いています。それによって、読む人も、開発メンバーの一員としてあたかも研究室にいるかのような気持ちになれます。
ですが当然ながら伊藤を見た世界・伊藤の心情が多く描かれております。
夷崎と伊藤のギクシャクした関係の描写などの、当事者だからこそ書けるんだなと思わせる場面がいくつもあり、そのことが、物語としてのたいへんな面白さを感じさせています。

さらに、メンバーそれぞれの高校時代にも触れ、天文学の道を選んだ経緯が説明されているの点も、興味深くよめました。
私は物理学を学ぶ大学生であり、来年はIT企業で働く予定ですので、特に身近に感じられました。
「自分はどうして今の学部学科を選び、何を目標にして勉強してきたんだろう?」
なんて考えながら読みました。

本書では、著者が原作を書いた「栄光なき天才たち」についても、どんな気持ちで原稿を書いたのか、などが描かれています。
中学生のとき、教室の本棚に担任の先生が寄付してくれた「栄光なき天才たち」の単行本がおいてあって、私は好きで読んでいました。それを思い出しながら、文章を書く力のある方なんだと、あらためて感じました。
読みやすさ、物語の組み立ての巧さ、読む人をぐんぐん引き込む力を持った本です。

最初にも書きましたが、高校時代や大学1年のときにこの本に出会うことができていたら、と強く思います。そんな感動を与えてくれる、非常に面白い本でした。

大学で理系の学部を目指そうとする受験生や、大学に入学したばっかりの1年生なんかに、ぜひおすすめしたい1冊です。

書評 - スーパーコンピューターを20万円で創る :404 Blog Not Found
手作りスーパーコンピュータへの挑戦―テラ・フロップス・マシンをめざして 杉本 大一郎
手作りスーパーコンピュータへの挑戦
テラ・フロップス・マシンをめざして
杉本 大一郎

栄光なき天才たち 1 (集英社文庫) 伊藤 智義, 森田 信吾
栄光なき天才たち 1 (集英社文庫)
伊藤 智義, 森田 信吾

ブレインズ―コンピュータに賭けた男たち 1 伊藤 智義, 久保田 真二
ブレインズ―コンピュータに賭けた男たち 1
伊藤 智義, 久保田 真二


この記事へのコメント
コメントを書く
Name:

URL:

Comment:

認証コード:


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

スーパーコンピューターを20万円で創る  :ブログ~19XX homepage~  2007-09-12
Excerpt: 軽く読める本が欲しいなあと本屋を探していたら、興味のあるタイトルがあったので購入と共に、読み終わったら、自分にとってかなり面白かったので紹介。 「スーパーコンピューターを20万円で創る」 (伊藤..

4CAT(ふぉーきゃっと)  :文庫・新書をたくさん集めました  2007-09-16
Excerpt: 15歳の少女が描く、友情と冒険のファンタジー長編。決して諦めなければ、運命は変えられる。いじめられっ子ケビンが、奇妙なネズミと2匹のネコとともに目指したのは、カデアイヴという名の地。すべては運命の仕掛..
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。