2007-08-29

『憲法九条を世界遺産に』太田光・中沢新一 を読んで

憲法九条を世界遺産に (集英社新書)太田 光, 中沢 新一憲法九条を世界遺産に
(集英社新書)
太田 光, 中沢 新一

souiunogaii評価 

日本国憲法第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

もう10年くらい前、中学の社会の授業、先生が「この条文は暗唱できるようにしなさい」と言っていたのを覚えている。

日テレの「太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。」で、いつだったか太田さん本人が「これはすごくイイ本で」と紹介していたのを覚えていて、今日たままた書店で見かけたので、買ってきて一気に読みました。
(たしかその番組で民主党の原口一博さんも「これは本当に良い本です」と言っていました。)
日本国憲法(特に九条)をテーマに太田光・中沢新一の対談が本になったものです。

芸人と思想家の対談だからなのか、憲法問題なのに政治的な話はほとんど出てきません。
自衛隊とか日米同盟とか北朝鮮とかいうよくある切り口ではなく、人類が九条を生み出した奇蹟について、宗教とか思想とかいうもので話を展開しています。
もくじ
 対談の前に  中沢新一
第一章 宮沢賢治と日本国憲法 ―その矛盾をはらんだ平和思想
第二章 奇蹟の日本国憲法 ―日米合作の背景に息づく平和思想
 幕間  桜の冒険  太田光
第三章 戦争を発動させないための文化 ―お笑いは世界を救えるか
第四章 憲法九条を世界遺産に ―九条は平和学の最高のパラノイアだ
 濃密な時間のあとで  中沢新一

憲法九条というのは“奇蹟”の下に生まれたものだから世界遺産にして人類全体の共有財産にしよう、というのが2人の考えのようです。
この“奇蹟”という言葉がキーワードのようで、何度か登場します。

太田さんは
僕は、日本国憲法の誕生というのは、あの血塗られた時代に人類が行なった一つの奇蹟だと思っているんです。この憲法は、アメリカによって押しつけられたもので、日本人自身のものではないというけれど、僕はそうは思わない。この憲法は、敗戦後の日本人が自ら選んだ思想であり、生き方なんだと思います。
(中略)
その奇蹟の憲法を、自分の国の憲法は自分で作りましょうという程度の理由で、変えたくない。少なくとも僕は、この憲法を変えてしまう時代の一員でありたくない。

と語っています。

対談はその場の空気で話の流れが作られていったようで、憲法というテーマを出発点にして、他にもいろいろな話題に触れています。
宮沢賢治の思想、アメリカ人の建国にまつわる思想、オウム事件、ホリエモン、神話、落語にみる日本人古来の思想、天皇制問題、テロ、など

「思想界の巨人」の中沢新一はもちろん頭の中にぎっしりいろんなことがつまっている人なのでしょうが、太田さんの知性・教養にあらためて感心してしまいます。
こんなにいろいろなことを知っている芸人だったのか、こんなにいろいろなことを考えている芸人だったのか、と。

しかし、太田さんの「テロに屈する勇気を」という発言や、中沢さんの「テロに屈する必要はたしかにある」という発言にはドキッとしてしまいます。

憲法九条というのは、ある意味、人間の限界を超える挑戦でしょう。たぶん、人間の限界は、九条の下にあるのかもしれない。それでも挑戦していく意味はあるんじゃないか。いまこの時点では絵空ごとかもしれないけれど、世界中が、この平和憲法を持てば、一歩進んだ人間になる可能性もある。それなら、この憲法を持って生きていくのは、なかなかいいもんだと思うんです。

というのはテレビの「太田総理」でも一貫している太田さんの主張というか信念のようなものか。
テレビで石破茂と国防について論争しているときの太田さんの「それでも絶対に戦争はダメ」という迫力のある発言シーンなんかを見てると、その本気度が伝わっくる感じがする。

そしてこの第四章では、「実際に日本国憲法を守るためには、犠牲が必要である」というテーマについて語られています。
中沢さんは
こういう日本国憲法を守っていくには、相当な覚悟と犠牲が必要となるということも忘れてはいけない。
(中略)
理想的なものを持続するには、たいへんな覚悟が必要です。覚悟のないところで、平和論を唱えてもダメだし、軍隊を持つべきだという現実論にのみ込まれていきます。多少の犠牲は覚悟しても、この憲法を守る価値はあるということを、どうみんなが納得するか。
(中略)
無条件で護憲しろという人たち、あるいはこの憲法は現実的ではないから変えろという人たち、その両方になじめません。価値あるものを守るためには、気持ちのいいことだけではすまないぞと。
と語っています。

2人の主張は非常にはっきりしています。
しかし、実際に具体的にどう現実の問題を解決すればいいのかということには、まだ答えがだせていないようです。

憲法九条の問題は、平成を生きる日本人の一人である私にとっても、考えることから逃げてはいけない責任だと思います。

数年後、憲法改正のための国民投票が実施されるその日のために。

この本は、私にいくつもの“気づき”を与えてくれました。
20年後30年後の日本の人たちが、現代を振り返って「平成の日本人は何を考えてたんだバカヤロウ」と言われないようにしなければいけません。


太田光さんは、テレビではいろいろな顔を見せる。「笑っていいとも」「サンデージャポン」「太田総理」「爆問学問」ではそれぞれかなり異なった印象を受けるけれど、そのどれもが太田さん自身なんだからまったくまったくすごい人だと思う。
北野武・松本人志なんかもすごい芸人だと思うけれど、太田光も負けずにすごい芸人だ。


太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。 :日テレ

爆笑問題のニッポンの教養(爆問学問) :NHK


この本の中で太田さんが紹介しているいくつかの本の中で、「憲法九条を世界遺産に」と発想するきっかけになったという「敗北を抱きしめて」という本も読んでみようと思いました。

敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人John W. Dower (著), 三浦 陽一, 高杉 忠明 (訳)
敗北を抱きしめて 上 増補版
第二次大戦後の日本人
John W. Dower (著), 三浦 陽一, 高杉 忠明 (訳)

敗北を抱きしめて 下 増補版―第二次大戦後の日本人John W. Dower (著), 三浦 陽一, 田代 泰子, 高杉 忠明 (訳)
敗北を抱きしめて 下 増補版
第二次大戦後の日本人
John W. Dower (著), 三浦 陽一, 田代 泰子, 高杉 忠明 (訳)

憲法は世界遺産であってはならない :404 Blog Not Found


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