2009-11-23

『フルタイムライフ』柴崎友香 を読んで

フルタイムライフ (河出文庫)フルタイムライフ
(河出文庫)
柴崎友香


souiunogaii評価 

内容紹介
美術系の大学を卒業し、心斎橋の包装機器会社に就職した喜多川春子(わたし)。
事務の仕事に慣れ、働くことの楽しさに気付いていく彼女の変化とともに、会社の上司や同僚のOL、友達の紹介で知り合った男の子らとの人間関係も少しずつ変化していく。
会社員生活一年目の5月から翌年2月までの10カ月を、全10章構成で綴る。

柴崎友香さんの作品を読むのはコレが初めてだったんだれけど、とっても良かったです。
初めて読む作家の作品が自分の中での"あたり"だったときって、何だかとっても嬉しい気持ちになれる。
見つけたぞ!って。

主人公の喜多川春子は、美術系の大学を卒業して、食品包装機械のメーカーの事務職として就職したごく普通の女の子。
本当はデザイン関係の仕事をしたかった、って気持ちもほのかに漂わせながら、事務・総務の仕事にも楽しみ・面白さを見つけだせている。
彼女の仕事は、コピーやデータ入力、社内報製作、などのいわゆる事務一般で、派手に目立つものではない。

よくある小説のパターンだと、平凡な主人公が何か"やりたいこと"を見つけだして、カッコ良く変わっていく姿を描くものが多いような気がするけれど、
本作『フルタイムライフ』はそういう話とは全然違う。
ごくごく普通で平凡であることを否定しない、カッコ悪く思わせない。

夢や目標が明確にあってそれに向かって突き進む、そういう人たちだけが素敵なんじゃない。
いまの自分を好きで、毎日の日常の中で普通の当たり前のことを続けていく、そういう人の姿にも素敵な部分が実はたくさんある、それをしっかりと伝えてくれた。
必要なのは、なにかするべきことがあるときに、それをすることができる自分になることだと思う。(中略)
きっと、それでいいと思う。

『文藝 2008冬号』で柴崎友香さんの特集が載ってたのを思い出して、読み返してみると、こんなことが書いてある。
なんか、負けたくないという気持ちはありますよね。悲観的な気分とか、行き詰っている状況とか世の中の大きい流れとか、いろんなことに。『フルタイムライフ』の女の子は、「なにか」に負けたくないから好きな仕事じゃなくても働く。
柴崎友香ロングインタヴュー「世界をありのままに描きたい」 『文藝 2008冬号』より


とにかく、良かったです。
読み終えた後の清々しい感じや、主人公への共感できる度合いの深い感じ、すごくイイ。平凡な事務の女の子を主人公に、こんなにも素晴らしい物語を作ってしまう、柴崎友香という人が他にはどんな作品を書いているのか、とっても気になります。
ぜひ、別の作品も読んでみたい。


そうそう、本書を手に取ったきっかけは、表紙の絵がとっても気に行ったからなんですが、これ『センネン画報』の今日マチ子さんの絵です。
作品の世界観にぴったりハマっています。

今日マチ子のセンネン画報

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