2009-02-21

『ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」』アポストロス・ドキアディス を読んで

ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」 (ハヤカワ・ノヴェルズ)ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」
(早川書房)
アポストロス・ドキアディス
酒井武志(訳)

souiunogaii評価 

200年間未解決の難問に挑んだ孤独な天才数学者の生涯を描いた感動の物語。
内容紹介
「2より大きいすべての偶数は、二つの素数の和で表すことができる」
これが、200年もの間、証明されたことのない難問「ゴールドバッハの予想」である。

ギリシャの田舎に隠棲するペトロス伯父は、かつて天才的数学者だった。その伯父でさえ証明できなかった難問こそが「ゴールドバッハの予想」であった。
そんな伯父は一族から「嫌われ者」あつかいされているが、甥のわたしだけは彼を敬愛している。
だから、伯父は「ゴールドバッハの予想」と苦闘した過去をわたしにうちあけたのだ。
その闘いは、若き日の伯父が留学したドイツで幕を開けた……。

数学の論理と美が思考を刺激し、学者の狂気の人生が心をうつ。数学の魔性に惹きこまれた男の数奇な人生を紡ぎ出す稀代の物語。

いやいや、面白かった!
先日読んだ『100年の難問はなぜ解けたのか』の中で紹介されていて、これは面白そうだなと思い、手にとってみたのだけれど、
数学者の物語でこんなにも楽しめるとは、想像以上だった。

世紀の難問「ゴールドバッハ予想」に挑む物語の主人公、ペトロス伯父には、同じように難問「ポアンカレ予想」に挑んで敗れた孤独な天才パパキリアコプーロスの姿が思い浮かんだ。
数学の持つ魔力のようなものを感じた。

ペトロス伯父の周りに登場する数学者たちは、実在の人物たちで、そのことが物語にリアリティを与えてくれている。

特に、証明不可能な命題の存在を示した「不完全性定理」を発見したゲーデルに対して、自らの苦悩から発生した怒りをぶつけるペトロスの姿が描かれるシーンには、もう圧倒されてしまう。
「わたしはゴールドバッハ予想の証明に人生をささげてきた」低く、激したような声で言った。
「それなのに、証明できないかもしれないと言うのか?」
すでに血の気が引いていたゲーデルの顔が真っ白になった。
「理論的にはありえることです――」
「理論的にどうかということではない!」

ゴールが見えないどころではない、ゴールが存在しないかもしれない、そんな果てしない道をたった一人で走り続けた天才の苦しみ。
それを想像すると、そんな生き方を選んでしまった彼の偉大さに、涙が出てきた。

【関連記事】
『100年の難問はなぜ解けたのか』春日真人 を読んで


この記事へのコメント
こんばんは。
狂気や情熱が印象的な本でしたね。

「おじさん」繋がりで言うと、オリヴァー・サックスの「タングステンおじさん」が、数学者繋がりで言うと、藤原正彦さんの「心は孤独な数学者」なんかも面白かったです。
Posted by つな at 2009-02-24
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