2009-01-10

『ラジ&ピース』絲山秋子 を読んで

ラジ&ピース (講談社)絲山 秋子ラジ&ピース
(講談社)
絲山 秋子


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
彼女の心は、何も入っていない冷蔵庫のようにしんと冷えていた――。
それでも電波は、必ずラジオを見つけて鳴らす。女性DJの心を描く、絲山秋子の最新小説。

絲山秋子さんの新作です。
けっこう久しぶりに読んだ絲山さんの小説は、「やっぱり私は絲山さん好きだな」とあらためて感じさせてくれる素敵な物語でした。

読み終わってから知ったのですが、絲山さんってFMぐんまの番組に隔週で出演されているんですね。
ああ、それでこんな物語が生まれたんだな、と納得です。

主人公は、相場野枝という女性。
群馬県のFM局のアナウンサー。彼女がパーソナリティを担当する番組が、タイトルにもなっている「ラジ&ピース」。

野枝は、いろいろな思いを抱えて、全然縁もゆかりもない群馬県にやってきた。
そこで、孤独な自分を守りつつも、地元の友人やリスナー、局の同僚と交流する中で、ちょっとずつ群馬の町になじみ、気持ちをやわらかくしていく、そんなストーリー。

群馬、車、働く女性主人公、という、これぞ絲山秋子な感じの物語。

大学卒業までを東京の実家で過ごした野枝と、群馬の方言を話す地元人との会話が、面白い。

普段は、他人との関わりを極力避ける孤独な野枝が、スタジオでマイクに向かって話すときだけは、明るく楽しげな人気者に変身する、その姿が、その複雑な心情が、とてもよく描かれている。

停電が終わって突然夜景が目の前に広がったようだった。野枝の胸の中にきらきらと無数の灯りがともった。
野枝は生まれて初めて人気者になった気がした。こういうことだったのだ。
野枝の声が空を飛んでいるのではなかった。
リスナーたちが空を飛んで、スタジオの野枝のそばに座るのだった。
(中略)
目に見えぬリスナー、言葉を発さぬリスナーと心が寄り添っていくのを野枝は感じた。

家族とか、故郷とか、友人とか恋人とか、会社とか、そいういういろんなものに対する、もやもやしたものを抱えながら生きていく、強くも弱くもある主人公が、すごく素敵に思えた。

一緒に収録されている、「うつくしま ふぐすま」という短編は、同姓同名の2人の女性のお話。
これもさわやかな感じでイイ。

FMぐんま ラジ&ピース

絲山秋子 OFFICIAL WEB SITE

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