2008-10-12

『メシアの処方箋』機本伸司 を読んで

メシアの処方箋 (ハルキ文庫)機本伸司メシアの処方箋
(ハルキ文庫)
機本伸司


souiunogaii評価 ハート5つ

「神様はいるのか?」どころの騒ぎじゃない。
遺伝子が伝えるメッセージを解明かし、救世主を誕生させる奇跡の物語。

内容紹介
ヒマラヤで発生した氷河湖決壊。下流のダム湖に浮かび上がったのは古代の「方舟」だった。こんな高地になぜ文明の跡が?
いぶかる調査隊をさらに驚愕させたのは内部から発見された大量の木簡だった。それらにはみな、不思議な蓮華模様が刻まれており、文字とも絵とも判然としなかったが、なんらかのメッセージを伝えているのは確かだった。
一体、何者が、何を、伝えようというのか?
第3回小松左京賞受賞の前作『神様のパズル』で“宇宙の作り方”という謎に挑んだ著者が、今回提示するのは“救世主の作り方”。傑作長編SF、堂々の誕生!

機本伸司さんの小説を読むのは、『神様のパズル』に続いて、これが2冊目です。
今回も、もうお腹いっぱい、ぞんぶんに楽しませてもらいました。

物理学の力で、宇宙創造に挑戦した『神様のパズル』では、そのスケールの大きさと、人間味溢れる登場人物の描写とに感動しましたが、
本作もまたそれに負けないくらいに非常に良く作られています。

今回のテーマは、遺伝子操作による救世主誕生。
ヒマラヤの氷河から発見された、5000年前に何者かが残した暗号を解明かし、その設計図通りに遺伝子を操作し、実際に生み出してしまうという、信じられないような奇跡の連続。

機本伸司さんの作品の魅力といえば、やはり何と言っても、"科学と人間"というテーマを扱っているところだと思うんです。
「科学技術を追求したその先にある人間の未来とは」のような、ある意味で科学者にとっての究極の問題、みたいなものかな。
そんなところに、平凡で普通な主人公が巻き込まれてしまい、それでも懸命に自分なりの答えを探そうとする。
読んでいるものにとっては、とてつもない難題について、主人公と一緒になって、様々なことを考えることで、自分もこの物語の中に入り込んでいるような気持ちにもなれ、
そいういう中で、心の変化を主人公と共有できるような気さえして、何ともいえない充足感を感じることができるんです。

舞台は、2030年。最先端の遺伝子医療・生物学を駆使して、という話なので、当然のように専門用語が多く使われています。
この分野に詳しい方なら、よりいっそう楽しめると思いますし、逆に私のような専門外の人間が読んでも十分に分かるように、本文中で必要な言葉はしっかりと語られている構成になっています。
それに、やはり物語の核になっているのは、生命倫理である。
そこでは、むしろ難しい理論や用語は必要ないのかもしれない。
そういう大切なことは、もっと、誰にでも理解できる言葉で語られるべき問題であり、
本能的・根源的な欲求である、「知りたい」という気持ちと、人間はそこまでやってしまっていいのか、触れてはいけない世界があるのでは?ということとのせめぎ合いになってくる。

作者は、そこでも逃げないで丁寧にこの問題を描いている。
答えの出せない問題に、正面から取り組んでいる。そんな気がする。
それに、生命倫理という難しい問題を、科学者だけに負わせずに、一般大衆をきちんと議論に参加させる、そういうシーンをもしっかりと作り出し、しかもそれが物語終盤の局面で大きな意味を持ってくる構成になっている。
じゃあ、"人間とは何か"は、これから一体、何を手がかりにして解いていったらいい?だから俺は、"箱"を開ける。
(中略)
けど、こいつは本質的に違う。これを送ってきたのは、人間じゃない。そして俺は、そのメッセージが知りたいだけだ。そのためには…。いや、"デザイナー"だって、それを望んでいるのかもしれない

久しぶりに読んだ、400ページ近い長編SF。
とっても良かった。
神様のパズル (ハルキ文庫)機本伸司神様のパズル
(ハルキ文庫)
機本伸司


souiunogaii評価 ハート5つ

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