2008-08-02

『神様のパズル』機本伸司 を読んで

神様のパズル (ハルキ文庫)機本 伸司神様のパズル
(ハルキ文庫)
機本伸司


souiunogaii評価 ハート5つ

物理を学ぶ人にゼッタイおススメ!
宇宙のはじまり、真理を追究する、壮大な青春理系SF小説。

内容紹介
留年寸前の僕が担当教授から命じられたのは、不登校の女子学生 穂瑞沙羅華をゼミに参加させるようにとの無理難題だった。
天才さゆえに大学側も持て余し気味という穂瑞。だが、究極の疑問「宇宙を作ることはできるのか?」をぶつけてみたところ、なんと彼女は、ゼミに現れたのだ。
僕は穂瑞と同じチームで、宇宙が作れることを立証しなければならないことになるのだが……。
第3回小松左京賞受賞作。

映画『神様のパズル』(2008年公開)の原作小説です。
私が今年読んだ小説の中のNo.1です!本気で、一番面白かったです。
大きな感動をもらいました。

今から数年後のちょっとだけ未来の、K大学理学部が物語の舞台。
主人公は、16歳の天才物理少女と、留年落ちこぼれ大学生の僕。
2人は卒業研究のテーマに「宇宙は作れるか?」という問題を選ぶ。
理論を組み立て、コンピュータ上でシュミレーションをして、最終的には巨大実験施設で、本当に宇宙を作ろうとする。何ともスケールの大きな青春SF小説。

理系的な要素がかなり強く、ぎっしりと詰まった小説なんだけれど、物語としても魅力のポイントは何と言っても、人間ドラマの部分かなと私は思いました。
幼い頃から天才ともてはやされ、飛び級で大学に入学し、既にいくつもの革新的理論を発表しているほどのずばぬけた頭脳を持ちながらも、天才ゆえの苦悩を抱える主人公の沙羅華ちゃん。
周囲の人とのコミュニケーションを極力避けてきた。

そしてもう一人の主人公は、留年し、成績は悪く、単位不足で卒業が危うい、就職活動も思うように進まない、やりたいことが見つからない、物理にも興味が沸かない、という完全な落ちこぼれ大学生の、僕。

この2人が、お互いに自分に足りない部分を見出し、補いながら、卒業研究の一年間で、少しずつ変わっていく、成長していくその様子が、とても丁寧に象徴的に描かれている。ほとんどひきこもりのような生活を送っていた彼女が、僕に対しては心を開いてくれるようになるところとか、今まで真面目に勉強してこなかった僕が、彼女のアドバイスを受けて、自分の力でレポートを書き上げるようになるところとか、2人の会話の中でのちょっとした変化とか、そういう内面的な成長・変化が見える部分が、読んでいて実にイイ。
また、2人が恋人関係ではなく、2人にしか理解できない不思議な微妙な関係でいるところも、また何とも言えずにイイ。

その他の登場人物たちも、物語を構成する一つひとつのエピソードも、とってもよく作り上げられている。小説としての濃度も完成度もかなり高い。
「宇宙は"無"から生まれた」と彼は言った。「すると人間にも作れるんですか?無なら、そこら中にある――」

もちろん、物語の重要なテーマである「宇宙は作れるか?」という物理学の根源的な問題の部分については、作者の機本伸司さん自身も理学部応用物理学科を卒業されている方だし、非常にしっかりと書かれていて、理系の人には、ここはじっくりと読んで楽しいでもらえると思う。
私も、大学は理学部物理学科だったので、宇宙とかは大好きなので、もうたまらなく面白かった。
「宇宙は無から生まれた―。君たちはそれを無批判に受け入れているのに、じゃあ人間が無から宇宙を作ろうと言うと、それはできないと言う。何かおかしいと思わないか?」穂瑞は僕たちの顔をじっと見ていた。「人間に宇宙など作れるわけがないと言いつつ、何故"宇宙が無から生まれた"というような話は鵜呑みにできるのか。そもそも、宇宙が無から生まれたというのは、本当に正しいのか」

タイトルにもある「神のパズル」というのは、もともとはアインシュタインが言ったとされる言葉だそうだ(真偽はわからないが)。
そういえば、「神様はサイコロを振らない」なんて言葉もあったっけ。
科学で全てを解き明かそうとする、物理学者の口から、"神"という言葉が出てくるのは、じっくり考えると、矛盾を抱えているようにも思えてくる。
この世界はどうやって生まれたのだろうか。そういう問いに人間が答えを出そうとするときには、必ず"神"の存在を登場させることになる。
自然科学と哲学と宗教とが入り乱れて、もうわけがわからなくなってくる。
一体、信じるべきものをどこに求めればいいのか。
そういうデリケートで、でもしかし逃げることの許されない大切なことにも、この小説は、作者は、正面から真剣に向き合って答えを出そうとしている。
「分からない。一体"彼"は、どうやったんだ……」
穂瑞の口から、また"彼"という言葉が漏れた。

最後のシーンは、かなり迫力のあるものになっている。
ある意味では、こういうSF小説にはよくあるパターンに沿った終わり方になっているかもしれないし、そいういう面では王道といえるかもしれない。
しかし、それでも読んでいて強いドキドキを感じずにはいられなかった。
素晴らしい展開に、すごいと思った。読んでいる私のテンションも、どんどん上がった。物理学的な話と、人間ドラマの話とが混ざり合って、最高潮に達したところで、1つの答えが出される。
わぁっとこみ上げてくる確かな感動があった。

特に、物理を学ぶ大学一年生や理学部受験を目指す高校生には、超おすすめだ。
ぜひ、この夏休みに読んで欲しい。
「何のために物理を学ぶのか?」という問いに、確かなヒントを与えてくれる貴重な一冊だと思います。

もちろん、谷村美月さんと市原隼人さん主演の映画『神様のパズル』の方も、素晴らしく好いと思います。

「神様のパズル」
映画「神様のパズル」:Movie Walker

谷村美月のナイスバディに市原隼人クラクラ? 『神様のパズル』初日舞台挨拶:cinemacafe.net 2008-06-08
神様のパズル出演: 市原隼人, 谷村美月 監督: 三池崇史神様のパズル
出演:市原隼人, 谷村美月
監督:三池崇史


この記事へのコメント
TBどうも。
宇宙創世、近くは人類誕生に「神様」が深く関わっているというのは、アイデアとして理解できても、リアル感がないのは、現代人ですね。
>「神様はサイコロを振らない」
もアインシュタインですか?
こちらの方が、科学者の言葉らしいです。
「神様のパズル」は文学的のように感じるのですが。

本「神様のパズル」は面白かったですよ。
もちろん、映画も面白かったです。
Posted by keyakiya at 2008-08-02
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