2009-10-31

『猛スピードで母は』長嶋有 を読んで


猛スピードで母は (文春文庫)猛スピードで母は
(文春文庫)
長嶋有


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内容紹介
家族のカタチを爽やかに描いた芥川賞受賞作

「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。
小6の慎は結婚をほのめかす母を冷静に見つめ、恋人らしき男とも適度にうまくやっていく。現実に立ち向う母を子供の皮膚感覚で描いた第126回芥川賞受賞作と、
大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんとの共同生活を爽やかに綴った第92回文學界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。

いや、面白かった。
まず、「サイドカーに犬」。
本書を読む前に、映画『サイドカーに犬』(竹内結子主演)は見たことはあったのだけど、あらためて原作を読んでみると、やっぱり素晴らしい。
映画では原作にはないエピソードの追加もあったけれど、やはりあの爽快な世界観はこの原作があったらかこそ生まれたのだと思った。
小学生の女の子と、その父親の愛人の女性とが何故か友達になる、そういう話なんだけど、二人の関係がすごくイイ感じなんだ。
物語は小学生の薫の視点から描かれている。
薫からみた洋子さんは、それまで出会ったことのないタイプの女性で、いろんなことがどれも新鮮で、自分のルールをしっかり持っている洋子さんはとにかくカッコよくって爽やかさにあふれている。
ちょっと戸惑いながらも、洋子さんのカッコよさに魅かれていく薫の姿を、子供ならではの感覚を大切に描いていて、上手いなと思う。

表題作の「猛スピードで母は」の方も、同じく子供から見たカッコいい大人の女性の姿を描いた物語。
こちらは、小学生の慎とその母親のお話なんだけど、この母親もやっぱりちょっと世間一般とは違う自分自身のルールをしっかりと持っている強い女性で、爽やかなカッコよさがある。

映画『サイドカーに犬』公式サイト
サイドカーに犬 [DVD]サイドカーに犬
監督:根岸吉太郎
主演:竹内結子


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2009-10-17

『終わりは始まり』中村航&フジモトマサル を読んで


終わりは始まり終わりは始まり
(集英社)
中村航, フジモトマサル


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内容紹介
可愛くて不思議で面白い、ぐるぐるワールド
読者が投稿した回文をもとに、フジモトマサルのイラストレーションと、中村航のショートストーリーをコラボレーションさせた掌編集。言葉遊びの面白さを堪能できる、めくるめく回文の世界。

回文を題材にしたショートストーリー集。
一つの物語は3〜4ページほどの短いものばかりなんだけれど、そのどれもが中村航のニオイが感じられる素敵なもので、読んでいる心がろ過されているような気になる。

全部で27編の話がある中で、私が一番気に行ったのは「秀男さんの代わり」かな。
ひたむきに一つのことのために打ち込み、遂に素晴らしい成果をあげた男と、彼の努力を支え続けた男、二人の姿が何だかとってもカッコ良かった。
たった数ページの文章でこんなにも素敵な世界を作り上げ人を感動させることができるなんて、やっぱり中村航ってスゴイんだ!そう思った。

言葉の美しさを感じてとても満たされた気分になれる、そんな一冊だ。


中村航公式サイト

フジモトマサルの仕事
2009-10-16

『ジャージの二人』長嶋有 を読んで


ジャージの二人 (集英社文庫)ジャージの二人
(集英社文庫)
長嶋有


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内容紹介
『猛スピードで母は』で芥川賞を受賞した著者が、「低スピードな父」との関係を描いた話題作。
失業中で小説家志望の息子。妻はよその男と恋愛中。三度目の結婚生活も危うそうな、写真家の父親。
そんな二人が軽井沢の山荘で過ごす、とりとめのない夏の終わりの思い…。

『ジャージの二人』映画の方は観たことがあって、たまたまその原作本を見かけたので読んでみました。
原作の雰囲気を見事に映画作品にした中村義洋監督の手腕を感じ、やっぱりすごいなと思った。
この親子って大事なことは何も言わないんですよね。でもその関係はねじれてはいない。世の中には何でも話し合う気味悪いぐらい健全な家族もいると思いますけど、人とのつき合い方や家族とのつき合い方の距離感が僕にとってはかなりリアルなところに共感できたんです。
中村義洋監督

森の中の古びた家で、中年の男二人が過ごす。平凡な生活風景の中に見る何とも言えない気だるい感じがとっても面白い。
妻が浮気しているとか、やりたい仕事ができないとか、結構深い悩みを抱えていながらも、決して深刻そうな姿は見せない、そんな父と息子の間の距離感がほんとに絶妙で、おもわずクスッと笑ってしまう。

派手な事件やクライマックス的な場面は全くなくラストまでずうっとフラットな感じの静かな物語。
たまにはこういうのもいいな、と思う。

映画『ジャージの二人』公式サイト

ジャージの二人 [DVD]ジャージの二人
出演:堺雅人, 鮎川誠
監督:中村義洋


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2009-10-11

『東京島』桐野夏生 を読んで


東京島東京島
(新潮社)
桐野夏生


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内容紹介
あたしは必ず、脱出してみせる――。ノンストップ最新長篇!

32人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か? いつか脱出できるのか――。欲を剥き出しに生に縋りつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読む者の手を止めさせない傑作長篇誕生!

『東京島』特設サイト:新潮社

『東京島』桐野夏生:[書評]asahi.com
衝撃作『東京島』の桐野夏生さんに聞く:MSN産経ニュース

無人島に漂流した人間たちのサバイバル物語。

41歳の清子は夫と2人でクルーザーで世界一周の旅の途中で不運にも無人島に漂着してしまう。
後に、日本人の若者たち、そして中国人の集団がその島に漂着。
彼らはその無人島に、トウキョウと名前をつけ、いつか日本に帰る日を夢見て集団生活を始める。

桐野夏生の独特の文体で、必死になった人間の腹黒さが生々しく描かれている。
生き残るために全力を尽くそうとする人間の強さを感じて、ただただそのすごさに圧倒されてしまう。

後半では、次々に予想外の事件が巻き起こって、もう最後まで一気に読んでしまう。
そして、見事な結末。さすがだなと思う。

2009-10-04

『この本が、世界に存在することに』角田光代 を読んで


この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)この本が、世界に存在することに
(メディアファクトリー)
角田光代



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内容紹介
本への愛情をこめて角田光代が描く新境地!

第132回直木賞受賞作家 最新短編集。
本への愛情をこめて角田光代が描く新境地!泣きたくなるほどいとおしい、ふつうの人々の“本をめぐる物語”が、あなたをやさしく包みます。
心にしみいる九つの短編を収録。

たびする本 / だれか / 手紙 / 彼と私の本棚 / 不幸の種 / 引き出しの奥 / ミツザワ書店 / さがしもの / 初バレンタイン / あとがきエッセイ 交際履歴

読んで良かった。
『この本が、世界に存在することに』このタイトルを見た瞬間に「なんて素敵な言葉なんだ。これは絶対に読むべきだ」って感じた。
その予感は間違ってなかった。
とっても素敵な物語ばかりの、とっても素敵な短編集だった。
私自身、この本に出会うことができて、本当に良かった、そう思えた。

本にまつわる短い物語、その一つひとつから、伝わってくるメッセージが、心にしみ込んでくる感じがたまらなく心地よかった。
この本を、中原千絵子は中学三年生のとき読んだ。読み終えて、神さまありがとうとまず思った。神さま、この本が世界に存在することに感謝します、と。この本が存在するのとしないのとでは世界はだいぶ違うだろうと中原千絵子は考えた。

本によって、世界の見え方が変わる瞬間がある。
本によって、人生が動く瞬間がある。

これからも、素敵な本に出会いたい、そう心から思える一冊。
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