2008-11-30

『やさしいため息』青山七恵 を読んで


 やさしいため息 (河出書房新社) 青山七恵やさしいため息
(河出書房新社)
青山七恵

souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
今日はどんな一日だった?
4年ぶりに再会した弟が綴るのは、嘘と事実が入り交じった私の観察日記。
立ちこめる湯気の中、私は冷たい肌が温まっていくのを感じている……。
『ひとり日和』で芥川賞を受賞した著者が描く、OLのやさしい孤独

先日読んだ『窓の灯』に続いて、青山七恵さんを読むのはこれが2冊目。

物語の主人公は、人材派遣会社で事務をしているOLのまどか。
一人暮らしをする彼女の元へ、ある日突然、弟の風太が姿を現し、2人はしばらくの間一緒に暮らし始める。
風太は、学生で、あちらこちらとふらふらしている自由人。
そんな風太は、姉まどかの毎日の生活を、日記のようにノートに記録し始める。
それまで内向的で他人との係わりを極力避けるように生活してきたまどかが、
弟との生活をきっかけに、ほんの少しずつだけれど、自分を変えようとしていく。

職場での周りの人たちのランチや飲み会なども、断り続けているうちに誘われなくなり、"一人が好きです"オーラを無意識のうちに振りまいてしまっている、
そんなまどかが、弟に一日の出来事を話すときには、何もない空虚な自分の生活を恥ずかしがり、見栄を張って、社交的な自分を演出してしまう。

そんな彼女の、ひたむきで純粋でけなげな様子が、青山さんの薄味だけれど飽きのこない、透明感のある文章で、丁寧に綴られている。
数週間前までと生活の場はまったく変わっていないはずなのに、見えている景色が違う。ぴったり合う眼鏡をかけたときのように、風景が自分から飛び込んでくる。

ほんの少しだけの勇気を手に入れて、
会社の忘年会に参加する返事をして、男の人を食事に誘って、
そんな風にゆっくりと変わっていくまどかの姿を、読んでいる私は思わず応援せずにはいられない。

一緒に収録されている『松かさ拾い』は、学者の先生とその秘書との微妙な関係を描いた作品で、こちらも青山さんの涼しげな文章が心地よい作品だ。

著者来店「やさしいため息」青山七恵さん:YOMIURI ONLINE 本よみうり堂

書評「やさしいため息」by 阿刀田高:asahi.com BOOK

『やさしいため息』の青山七恵さんに聞く:【週末読む、観る】MSN産経ニュース

【関連記事】
『窓の灯』青山七恵 を読んで

【追記】
『ひとり日和』青山七恵 を読んで


2008-11-29

『Tiny, tiny タイニィ・タイニィ』濱田順子 を読んで


Tiny, tiny(タイニィ・タイニィ) (河出書房新社)濱田順子Tiny, tiny(タイニィ・タイニィ)
(河出書房新社)
濱田順子


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
“わたし”と“ぼく”と“オレ”――
三人の高校生のひと夏を描きつつ、この時代の真の絶望を淡々とうたう、
第36回文藝賞受賞の傑作。
いきなり芥川賞候補になった話題作。

奈美と大森と山崎と、高校生の男女3人の物語。
舞台は、震災後の神戸。
100ページちょっとの短い小説。
場面ごとに、1人称になる人物が交代していく構成になっていて、
それぞれの目線を感じることができる。

過食・嘔吐、同性愛、被災、それぞれに特別な想いを持った高校生3人。

文章は、読点が少なくて一文が長いために、最初はすこし違和感があるかもしれないが、それも慣れてくると逆に面白い。

淡々とした雰囲気が続く中での、登場人物たちのちょっとした心情の移り変わり、心の動きが見える部分での表現はやはり絶妙で、はっとする。

姉妹小説である『ラブリー』も読んでみたい。

ラブリー (河出書房新社)濱田順子ラブリー
(河出書房新社)
濱田順子
2008-11-22

『できる人の資格勉強法』佐藤孝幸 を読んで


できる人の資格勉強法 (中経出版)佐藤孝幸できる人の資格勉強法
(中経出版)
佐藤孝幸


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介(中経出版)
皆と同じことをやっていても差はつかない。常に先を見て、よりよい将来のために準備を進める必要がある。そのひとつが資格を取ること。
本書では、司法試験、米国公認会計士試験に「働きながら」「独学で」「一発合格」した著者が、「受かる」勉強法を伝授。
時間がない人のための「超」効率勉強法や、やる気を上げる方法、受かる人の生活習慣なども教える。「今さらなぜ資格が必要なの?」という疑問や、資格の選び方までアドバイス。
一見エリートの著者も、実は「首を切られるのではないか」という不安から資格取得を目指し、預金が底をついた時期もあったという。そこから生まれた勉強法は、共感できるものばかり。
大ヒット「できる人」シリーズの第4弾!

もくじ
プロローグ 働きながら独学で、私が難関資格に合格するまで
第1章 いま、なぜ資格なのか?
第2章 2年で難関資格「合格」をモノにした勉強法
第3章 無理なく勉強がつづけられる「好循環の法則」
第4章 時間がない人の勉強時間のつくり方
第5章 合格する人が実践している生活習慣とは?
第6章 不思議と「やる気」が復活する方法
第7章 「生き残れる資格」をどう見つけるか?

著者の佐藤孝幸さんの経歴を見て、まず圧倒される。
早稲田大(政経)卒で、外資系銀行に入行、
その後、独学で米国公認会計士(USCPA)試験に合格、アメリカの大手会計事務所に転職、
さらに、アメリカで働きながら独学で日本の司法試験の勉強をして、
帰国後に合格、弁護士になった、というものすごく優秀な方です。

そんな佐藤さんが、これまでに実践してきた資格勉強法を、普通のサラリーマンにも分かる言葉で、丁寧に解説してくれたのが本書です。

本書の中では、資格の勉強をする上での大切なポイントが3つ挙げられています。
それは、
1. 短期間(2年以内)の合格を目指すこと
2. お金をかけずに、独学で勉強すること
3. 時間を効率的に使い、働きながら勉強すること
です。
この3つのポイントを軸に、具体的な勉強法(参考書や問題集の選び方・使い方、勉強の進め方、時間の上手な使い方、など)を、順番にひとつずつ説明してくれています。
それぞれには、佐藤さん自身の経験談も随所におりこまれていて、
なるほど、と納得する話ばかりです。

非常に読みやすく、面白く、なによりためになる本です。

著者プロフィール:佐藤経営法律事務所 弁護士紹介
2008-11-18

『平成マシンガンズ』三並夏 を読んで


平成マシンガンズ (河出書房新社)三並 夏平成マシンガンズ
(河出書房新社)
三並 夏


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
あたしの夢には死神が降臨する。――ボロのジーンズに出刃包丁をもって夢に現れる男。
あたしはそいつが差し出すマシンガンを撃っては、頭を撫でられていた。
言葉という武器で世界と対峙する史上最年少15歳の恐るべき才能による文藝賞受賞作。

先日読んだ、青山七恵さんの『窓の灯』と同時に、第42回文藝賞を受賞したのが、今回読んだ『平成マシンガンズ』です。

著者の三並夏さんが本作を書いたのは、15歳中学3年のときだとか。
こんな若い作家さんの作品を読むことは、これまであんまりなかったんだけれど、
いやいや、年齢なんて関係ないんだよな、とあらためて感じました。

中学1年生の女の子の物語なのだから、っていうことなんかじゃなくって、そういうのをちょっと飛び越えてしまったレベルで、三並夏っていう一人の小説家をしっかりと感じることができます。
そこには、確かに、三並さんにだけしか書けない、三並さんだからこそ生み出せる、そんな物語がありました。

物語の主人公は朋美。中学1年の女の子です。
本文中では、"あたし"と一人称で表現されています。
クラスの中ではわりと地味な静かな感じの子として振る舞いながら、
でも"自分はこうなんだ、こうしたいんだ"っていう強い気持ちはしっかりと持っている。
そんな朋美が見て、感じた世界を、朋美自身の目線から生き生きと描いた物語です。
学校がいやな場所になった。決して初めからいい場所だったわけではなかったし辛いことも結構あったけど家よりはずっと居心地がよくてあたしにとっては大切な、無二の場所だった。あれでも。あたしの居場所は家と学校のふたつしかないというのにそのたったふたつがあたしを嫌っている。

クラスでは、仲良くてしていたとはずの友達に、ほんのささいなちょっとしたことがきっかけで無視されてしまい、クラス中からハブられてしまい…。
母親は家を飛び出してしまって、家には父親の愛人が転がり込んできて、その愛人は朋美の一番嫌いなタイプの女で…。

と、こんな風に学校でも家でも、自分の居場所を守るために、自身の存在をきっぱりと示すために、朋美は懸命にもがきます。
彼女の夢の中には、死神が登場してマシンガンを渡してくれます。
現実と夢との不思議な交錯。

リズム感のある、生き生きとした文章で、
女子中学生が今を生きるナマの姿をしっかりと描いています。

特に、女の子同士の会話の場面や、朋美の心の叫びを描いた場面なんかでは、彼女の気持ちがじかに伝わってきます。
もうだめなんだ。あたしは全部を諦める。これからのことなんて知らない。今あたしの心は絶対的な力をもってこの場所を拒否している。

自分はこんなにもちゃんと思っているのに、どうしてそれが周りには伝わらないんだろう、どうして分かってもらえないんだろう。
子供でいることが嫌で、早く大人になりたくて、でも大人のことは大嫌いで。
そんな中学生の物語です。

約100ページの短いこの小説の中に、15歳の三並夏の才能がぎゅっとつまっています。

史上最年少で文芸賞を受けた三並夏さん:YOMIURI ONLINE 大手小町
『平成マシンガンズ』書評 (茂木健一郎):YOMIURI ONLINE 本よみうり堂
2008-11-15

『窓の灯』青山七恵 を読んで


窓の灯 (河出書房新社)青山七恵窓の灯
(河出書房新社)
青山七恵


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
大学を辞め、時に取り残されたような喫茶店で働く私。
向かいの部屋の窓の中を覗くことが日課の私は、やがて夜の街を徘徊するようになり……。
ゆるやかな官能を奏でる第42回文藝賞受賞作。

『ひとり日和』で芥川賞を受賞した青山七恵さんののデビュー作です。

100ページちょっとの、短い小説です。
私はこういう感じの小説、とっても好きです。

主人公の、私(まりも)は、大学を退学して、何となく通っていた喫茶店で、店主のミカド姉さんに誘われて、一緒に働くことになる。店に住みこみで。

店の向かいのアパートに男の人が引っ越してきて、「私」はその部屋の窓を、自分の部屋から覗き見るのを日課にする。

不思議な魅力を持つ、ミカド姉さんのもとには、いろんな男が次々に訪ねてくる。

私と姉さんの関係が、とても面白い。

何を考えているのかさっぱり読めない、それでも周囲の人を引きつけて離さない魅力を持つ、そんなオーラを持つミカド姉さんがいて、
彼女を好きで、でも嫌いで、彼女のことを知りたくて、近づきたくて、でもやっぱり束付けなくて、近づきたくなくて、みたいな私がいる。

そんな微妙な関係を、青山さんのどこまでも澄んでいて美しくて、さわやかなのに、しっとりとしている、そんな感じの文章で描かれている。
息を整えながら、手のひらで胸から下腹までそっと撫で下ろす。皮膚の内側は忌まわしいほどほてっているのに、体の表面はひんやりと冷たかった。
頭の隅がかすかに痛む。
私は痛みをそのままにしておいた。全身でその痛みを感じようとした。

青山七恵の素晴らしい才能を、ひしひしと感じられる。

[気鋭新鋭]青山七恵さん 22(作家):YOMIURI ONLINE 本よみうり堂(2005/12/09)

【追記】
『ひとり日和』青山七恵 を読んで
『やさしいため息』青山七恵 を読んで
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