2008-08-31

『ウチのシステムはなぜ使えない』岡嶋裕史 を読んで


ウチのシステムはなぜ使えない (光文社新書)SEとユーザの失敗学岡嶋裕史ウチのシステムはなぜ使えない 
SEとユーザの失敗学
(光文社新書)
岡嶋裕史

souiunogaii評価 ハート4つ

皮肉にあふれた文章で、SEを斬る。これほど面白くIT業界を語った本は他に無い!
内容紹介
IT化したのに、なぜか書類の量が激増!
SEに痛い目に遭わされたユーザ、ユーザの無理難題にぶち切れたSE、ともに必読!

その業務、IT化する意味がありますか?
せっかく高いお金をかけてIT化するのであれば、多少今までと仕事のやり方が異なることになっても、従来の手法では不可能だった業務やサービスを可能にするなどの高度化や効率化を追求した方が吉である。IT化された慣れない作業手順で、一時的にせよ却って仕事の効率が悪くなることを懸念するのは当然だが、それは習熟によっていくらでも埋め合わせることができる。
もちろん、SEによる基礎設計が悪ければこの限りではないが、「悪い設計」にさせないための手練手管は本書でゆっくり練習していただければよい。

これ1冊で、IT業界で働くサラリーマン(いわゆるSEという職業)のことと、それを取り巻く環境のことについて、一通りのことが全てざっと理解できる。

私自身、就職活動を始めた頃から、研修を終えて新人SEとして働いている現在に至るまでに、いろんなチャネルから様々なレベルで、たくさんの情報を見て・聞いて・読んできたけれど、
ずばり本書の面白さ・分かりやすさはNo.1であると思う。

何がそんなにすごいのかって、「リアルさ」「現実感」をひしひしと感じれることができる点。
SEという職種とその仕事について、"本音で語っている"特別な本です。
しかもその本音を、IT企業にとってのお客様である、システム導入先の担当者に向けているところがすごいのだ。

SEの職場にある、ありとあらゆる問題や矛盾や悪習を、もう皮肉たっぷりの、そして笑いもたっぷりの文章でバッサリと斬りまくっている。
もくじ
第一部 SEという人々

SEという生き物
開発系の人々
開発技術者の周縁の人々
運用系の人々
第二部 SEと仕事をするということ
間違いだらけのIT企業選び
システム開発を依頼する
SEへバトンタッチ
システム開発の工程を追う
第三部 ユーザとSEの胸の内

そして"SEとは何か"を解説した後には、
ではSEと上手く付き合って、高品質のシステムを安く早く製造納品してもらうためには、一体どうすればよいのか、ということを企業の担当者向けの、IT知識に自信の無い人が理解できる言葉を使って、面白おかしく分かりやすく提案してくれている。

最新の技術知識や専門用語、カタカナ語なども、こういう風に理解をしておけば、十分にSEと話ができる、SEにごまかされたり騙されたりする心配がなくなる、という姿勢で丁寧に本音で説明してくている。

例えばこんな感じだ。

【用語】
オブジェクト指向(objec oriented, 対象指向、使い回し指向)
【想定される文例】
「オブジェクト指向で作っているので、高機能です」
【想定される文例に含まれる誤り】
「オブジェクト指向で作っているので、高機能です」※オブジェクト指向と性能は関係ない
【切り返し技】
「使い回し指向で作っていただいているわけですから、構築費用はお安くなりますよね?」
(中略)
単に作り方が違うだけだ。第二東京タワーの模型を作って下さいと言われたとき、粘土を渡される(=従来型プログラム)のとレゴ(=オブジェクト指向)を渡されるのでは、なんとなくレゴで作った方が失敗はなさそうだ、という程度の頼もしさである。

IT企業でシステムを開発する側の人間にとっては、笑えない冗談や皮肉的表現にあふれた文章が終始続くので、読んでいると、ハッとさせられるとうか、現実を思い知らされるというか、とにかく気づきの多い本です。
それでも、笑わずにはいられませんが。
PL法がソフトウェアに適用されなくて本当によかったと感じている開発技術者はとても多いのである。立法府もさすがにソフトウェアに対してはそんな冒険はできない。

などという文を読むと、もう汗が出てきてしまう。

そして、最後の第三部では、ページを上下に分けて、ユーザ側とSE側の心の動きを、物語風のプロジェクトを通して、業界の真実を語ってくれる。
著者の文才には本当に感心する。これほどの本を書けるひとはなかなかいないと思う。
そうした構造を持つIT業界は、幸せを生産できない螺旋(スパイラル)にとらわれつつある。

これからIT業界への就職を考えている学生さんなんかには、ぜひ読んでおくことをおススメしたい一冊です。

ExcelはWeb5.0death! - 書評 - ウチのシステムはなぜ使えない :404 Blog Not Found


2008-08-31

『星へ落ちる』金原ひとみ を読んで


星へ落ちる (集英社)金原ひとみ星へ落ちる
(集英社)
金原ひとみ


souiunogaii評価 ハート4つ

内容紹介
一つの恋愛と三人の孤独――

元彼の部屋を出て、「彼」と付き合い始めた「私」。
「彼」が女と浮気をしていると知り、自殺を考える「僕」。
突然去った「彼女」を待ち続ける「俺」。
愛するほど孤独になる、三人の絶望と激情。

また読んでしまいました。金原ひとみさんの小説。
読むたびに思う。このとりつかれるような魔法のような魅力は何なんだと。

ひとりの女性を中心にして、彼女が想いを寄せる男、その男の恋人、さらに彼女の別れた恋人、と、主人公となる人物を順に変えていく、という形の連作。
もくじ
星へ落ちる
僕のスープ
サンドストーム
左の夢

私、彼、僕、俺、と代名詞ばかりが続く。
この小説には、人物の名前が全然出てこない。
そのことが、何かとても不思議な効果を生み出している、気がする。
名前のもつイメージの力みたいなものが、逆に強く感じられる。

ココロもカラダも、とっても疲れている。疲れきっている。
都会に一人で生活する女性を主役にしている、そういうのが、やっぱり確かに金原ひとみワールドを感じさせるんだけど、
本作では他に見られるようなハードなエログロ表現はかなり抑え目になっている。

連作としての面白さっていう点では、
「何てヤバイ男なんだ」って思ってたヤツが、次の物語で視点を変えて描かれると、
とたんに、何てまっすぐで純粋でイイヤツなんだ、と全然別の印象を与える構成になっているのは、さすがによくできているなと思う。

一番良かったのは、「左の愛」かな。
もう主人公の男が、たまらなく切なくて、私は通勤電車の中で読んでいて、
気づいたら目がウルウルしちゃってきて、もう泣きそうになってしまって、
困ってしまった。
それくらいの感動があった。心が震えるっていうのかな。
会いたいどうして触れたい近くにねえどこ今すぐ触れたい触りたいねえ近くにそこに行きたい近くに行きたい近くに感じて少しでも少しでもねえ少しでいい感じたい感じたいよ感じたいそこにいたい近くにいたい触れたい感じたい近くにあと一ミリでいいあと一ミリ近くに!

もう苦しい心の叫びをそのまま一気に言葉にして救いを求めている、
そんな思いが伝わってくる文章が、金原ひとみの魅力だし、だから私はひきつけられる。

【関連記事】
『蛇にピアス』金原ひとみ を読んで
『アッシュベイビー』金原ひとみ を読んで
『ハイドラ』金原ひとみ を読んで。
2008-08-28

『English ZONE 35号』


English Zone 35号
English Zone 35号

EZ35号です。
"The 100 Most Beautiful Faces of 2008"の1位になったナタリー・ポートマンのインタビューが読めます。
2008-08-24

写真集『ダム』萩原雅紀 を見て


ダム (メディアファクトリー)萩原雅紀ダム
(メディアファクトリー)
萩原雅紀


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
放流 巨大 様式美 史上初!ダム写真集

「ふたつと同じものがない」ダムの魅力に取り憑かれ、ダムめぐりを続ける男・萩原雅紀による、史上初のダム写真集。
ダムの魅力である、1)とにかく巨大 2)放流の迫力 3)自然の中に様式美溢れる人工物が突如出現する非日常感をテーマに、著者が厳選した「好きなダム」を、写真+ダムへの愛あふれる解説コメントで紹介します。

ずばり、ダムの写真集です。

萩原雅紀の、「ダムの魅力を伝えたい!」っていう熱い思いが込められた写真と文章が、スゴイです。
もう、カッコいい写真ばかりで、この写真集を見たら、どんな人でもダムファンになってしまいそうです。
怒涛の放流、あふれる様式美、そして「ふたつと同じものがない」多種多彩なデザイン。
僕らの心を惹きつける巨大建造物――ダムの魅力がここにある。

重力式、アーチ式、ロックフィル、などなど様々なダムの形式の説明や、
クレスト、洪水吐、減勢工、といったダムの各部の説明も、写真や図を使って、丁寧に分かりやすく解説してくれていて、初心者の私にもダムの見方のポイントがすぐにつかめました。
さらに、巻末にはダム用語辞典まであります。
まさに、ダム入門書って感じです。
紹介されているダム一覧
宮ヶ瀬ダム / 奈良俣ダム / 矢木沢ダム / 藤原ダム / 黒部ダム / 南相木ダム / 深城ダム / 二瀬ダム / 宮川ダム / 日中ダム / 佐久間ダム / 笹流ダム / 湯田ダム / 長島ダム / 高瀬ダム / 新郷ダム / 二風谷ダム / 川治ダム / 畑薙第一ダム / 三国川ダム / 下久保ダム / 草木ダム / 石淵ダム / 奈川渡ダム / 滝沢ダム / 小渋ダム / 只見ダム / 田子倉ダム / 摺上川ダム / 大倉ダム / 浦川ダム / 川俣ダム / 井川ダム / 藪神ダム / 鳴子ダム / 糠平ダム / 白水堰堤

私が一番好きなのは、佐久間ダムかな。

見終わったら、もう実際に本物のダムを見に行きたくてしかたがなくなる、そんな一冊。

萩原雅紀のホームページ「ダムサイト」も要チェックです。
ダムサイト(萩原雅紀公式ホームページ)
ダム2 (メディアファクトリー)萩原雅紀ダム2
(メディアファクトリー)
萩原雅紀
2008-08-23

『会社がイヤになった』菊入みゆき を読んで


会社がイヤになった (光文社新書)やる気を取り戻す7つの物語菊入みゆき会社がイヤになった
やる気を取り戻す7つの物語
(光文社新書)
菊入みゆき

souiunogaii評価 ハート2つ

内容紹介
会社に対する嫌悪感の原因を探りながら、「自分なりの働き方」を見出す。

「会社がイヤになった」という気持ちは、会社づとめをしている人にとって、なじみのあるものではないだろうか。
具体的に退職を考えるところまでいかなくても、「辞表を叩きつけてやったら、あの上司は、どんな顔をするだろう」という夢想や、「今日は、会社に行きたくないなあ」という漠然とした嫌気は、多くの人が体験していると思う。
会社という組織の中で多くの人が、あるとき自分を見失い、モチベーション(意欲)を喪失し、悩みもがきながら、再び自分を見出し、モチベーションを回復させていく。本書では、仕事の中で起こる人の意識の変化を、物語という形式と、モチベーションの切り口での解説で追った。
もくじ
第1章 結果が出ない
第2章 "本流"にいない
第3章 上司とプライドの狭間で
第4章 転職のラスト・チャンス
第5章 人生の宿題
第6章 部下が信頼できない
第7章 サラリーマン人生の積み残し

いや、別に会社に行くのが嫌になったわけではありません。
そうじゃないんですが、でもこういうタイトルの本が気になってしまうのは何故なのかな。

著者の菊入みゆきさんは、仕事意欲の研究およびコンサルをしている方だそうです。
そんな彼女が、20代〜60代まで、それぞれの世代別に、仕事へのモチベーションについての分析・解説をしているのが本書です。

それぞれの章では、まず小説風にモチベーションの低い社員がいかにしてそれを高めていくかの物語を見せてくれます。
その後で、その世代の特徴や対処法などを説明しています。
この、「小説+解説」という構成がとっても読みやすくてわかりやすくてイイです。

私自身はまだ20代なんですが、30代〜60代のエピソードの方を読むと、
へー、なるほど、ふーん、といろいろ勉強になることがたくさんあって、面白かったです。
20代のエピソードには、うんうんと共感する部分も結構あって、これもまた面白かった。
文字通り、「やる気を取り戻したくなったとき」に読みたい一冊です。
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