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『ヘヴン』川上未映子 を読んで[2010-01-30]

2010-01-30

『ヘヴン』川上未映子 を読んで


ヘヴン
ヘヴン
(講談社)
川上未映子


souiunogaii評価 

内容紹介
驚愕と衝撃!圧倒的感動!
「僕とコジマの友情は永遠に続くはずだった。もし彼らが僕たちを放っておいてくれたなら――」

涙がとめどなく流れる――。
善悪の根源を問う、著者初の長篇小説
「苛められ、暴力をふるわれ、なぜ僕はそれに従うことしかできないのだろう」
彼女は言う。苦しみを、弱さを受け入れたわたしたちこそが正義なのだ、と。彼は言う。できごとに良いも悪いもない。すべては結果にすぎないのだ、と。ただあてのない涙がぽろぽろとこぼれ、少年の頬を濡らす。少年の、痛みを抱えた目に映る「世界」に、救いはあるのか――。

『ヘヴン』特設ページ:講談社BOOK倶楽部

とにかく、凄まじい衝撃作だった。
読んでいて、こんなにも心が震えた小説は本当に久しぶりだった。

川上未映子さんの作品は、初めて読んだのだけれど、彼女の描く何とも言えない独特の哲学のある世界に、私は一気にはまってしまった。

学校でのイジメを題材にした小説はこれまでにもいくつか読んできたが、この『ヘヴン』は全くの別物だ。
正義とか罪悪とかそういう善悪の価値観みたいなものが、丁寧に丁寧に選ばれた言葉で綴られている。
200ページを超える長編だが、もう取りつかれるような感じで読んでしまい、時間なんて忘れてしまうくらいだった。

主人公の"僕"は、斜視で、同じクラスの二ノ宮や百瀬たちのグループからロンパリと呼ばれて、壮絶なイジメを日常的に受けている。
そのイジメのやり方が、実に酷いもので、もう精神も肉体もボロボロに傷つけられて、それでも何とか学校に通い続ける"僕"の姿に、私は言葉にできない痛みに、心が苦しくてたまらなかった。

そんな"僕"が、同じクラスの女の子コジマと手紙のやり取りを始める。
コジマもまた、クラスの中で「汚い、臭い」と言われてイジメの対象になっている一人だった。
コジマは、苦しみに耐えて、負けずにイジメに立ち向かい続ける自分たちこそ正しい存在なのだと語る。
自分たちにしか見えない世界があるんだってことを、懸命に語る。
いじめられている自分たちの正しさ、存在している意味を、だから自分たちは大丈夫なんだってことを一生懸命に、自身を納得させるように語る。
わたしたちは弱いかもしれないけれど、でもこの弱さはとても意味のある弱さだもの。弱いかもしれないけれど、わたしたちはちゃんと知っているもの。なにが大切でなにがだめなことなのか。
(中略)
君のその方法だけが、いまの状況のなかでゆいいつの正しい、正しい方法だと思うの

物語の終盤で、"僕"がイジメグループの一人の百瀬と一対一で話をする場面がある。
そこで百瀬の語る言葉の一つひとつが、私にはもう信じられないくらいの衝撃をぶつけてきた。
もう読んでいて一気に沸騰するような怒りが込み上げてきたのだけれど、でもすぐ次の瞬間には、百瀬の言葉の方が実はリアルで正で善なんだった見方もできるんじゃなにのか?っていう気持ちが生まれてきて、自分で自分が分からなくなってしまった。

そしてすごく暗い沈んだ気持ちになった。
「地獄があるとしたらここだし、天国があるとしたらそれもここだよ。ここがすべてだ。そんなことにはなんの意味もない。そして僕はそれが楽しくて仕方がない」

こんなことってあるだろうか。
何が悪で、何が正しいのか、その基準が一気に崩壊するような、そんな衝撃だった。

しかし、物語のラスト、"僕"が見る景色の美しさが、それまでのいろいろな問に一つの答えを与えてくれる
僕の目からは涙が流れつづけ、そのなかではじめて世界は像をむすび、世界にははじめて奥ゆきがあった。世界には向こう側があった。

最後のこの場面に、救われた気がする。

川上未映子、素晴らしい物語をありがとう。

川上未映子の純粋非性批判(公式ブログ)

【書評】『ヘヴン』川上未映子著:MSN産経ニュース(2009/10/04)
善悪の価値観、問い直す 川上未映子さん長編「ヘヴン」:asahi.com(2009/10/14)


http://www.youtube.com/watch?v=Un5TKFUzscI

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