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『また会う日まで』柴崎友香 を読んで[2010-11-07]
『星のしるし』柴崎友香 を読んで[2010-04-25]
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2010-11-07

『また会う日まで』柴崎友香 を読んで


また会う日まで (河出文庫)また会う日まで
(河出文庫)
柴崎友香


souiunogaii評価 

内容紹介
高校の修学旅行の夜。鳴海くんとの間に感じた、恋とは違う、何か特別な感情……。
七年後、会社員になった有麻は、それを確かめるべく、東京に行くついでに、彼に会ってみようと思い立つ。はたして鳴海くんは、同じあの時間、何を感じていたのか?
せつない一週間の東京観光を描くロングセラー!

大阪から東京に遊びにやってきた主人公の有麻。
彼女が過ごした東京での一週間を、独特の感性で綴ったナチュラルな物語。

著者の柴崎友香さん自身も、大阪から東京に移り住んできた方ということで、その"関西人から見た東京"という街そのものの描かれ方が、実に面白い。

私は町自体がすごく好きで、町って時間の積み重ね、人間のやってきたことの積み重ねでできていると思うんです。そこに不特定多数の人がいて、知らない人との接触がある。よそ者はよそ者なりに鞄一つでうろうろして、ホームレスの人でも生きていけるような、町の懐の深さ、自由さってあると思うんですよ。
『文藝』2008年冬号 柴崎友香インタビューより


私も、大学に入るときに東京に来て、今も東京の会社で働いていて、でも、本作を読んでみて改めて気付いた東京がたくさんあった。
近くに住んでいるのに行ったことのない場所、知らずに通り過ぎてしまっていた場所、そういうところがいっぱいあるんだと、そう思った。

物語は、高校時代の思い出と、現在の東京探検とを交互に場面を切り替えながら進んでいく。
主人公の有麻という女の子の、周りの人物に対する視線や姿勢が、ちょっと他の人と位相がわずかに違う、独特な雰囲気を感じさせる部分があって、この感じは柴崎作品に共通する魅力だと思った。

また、有麻はカメラで写真を撮るのが趣味で、作品中でも、何かに心ひかれたものを見つけてはそれにレンズを向けてシャッターを切る。
その姿が、何だかとっても素敵な感じがした。
彼女が使っているカメラがTC-1っていうのもまたイイ。
カメラを出してきて構えなくても、今この瞬間に見ているものの全部をあとでプリントできたらいいのに。でも、もしかしたら、しょっちゅうカメラを構えて目の前に見えるものが写真になったところを想像しているわたしの目は、あとでプリントするもの、みたいな感じでなんでも見ているのかもしれない。


あと、しょうちゃんという男の子の次のセリフが、とても印象に残った。
「おれ、思うねんけど、たぶんそういうことやねんで。なんか急に、いつもと違うこととか新しいことをやってみようとか思う瞬間があって、それでいつも実際やるわけじゃないけど、たまにほんまにやってみるときがあって、なんでかわからんけど、できるときがあって、そういうのだけがちょっとずつ変えていけるんちゃうかなあ、なんかを」


柴崎友香公式サイトshiba-to.com

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2010-04-25

『星のしるし』柴崎友香 を読んで


星のしるし星のしるし
(文藝春秋)
柴崎友香


souiunogaii評価 

内容紹介
大阪に暮らす29歳の果絵(わたし)は、祖父の死をきっかけに体に不調をきたす。
会社の同僚、友人の紹介で、占い≒スピリチュアルカウンセリングへ。
恋人・朝陽の家に入り浸るカツオは、独自の霊感で宇宙人襲来の恐怖を語り出す……。
今まで通り笑いの要素は織り込みながらも、ホラー作家としての新境地を開拓した新作長編。

柴崎友香さんの『星のしるし』、これまで読んだ他の作品とは違う、新たな柴崎ワールドを発見した気がする。

占いとか霊的なものとか、はたまた宇宙人とか、現実と非現実が絶妙なバランスで織り交ざった不思議な雰囲気が物語全体に漂っていて、
あぁ柴崎さんもこういう作品を書くんだって。
見上げると、周りを囲むマンションに区切られて、青い空があった。雲はなくて、高さがわからなくなって怖くなるような濃い水色一色の空だった。そこから、鳩が数羽飛んできて、滑り台の向こうに降りた。灰色の羽根を閉じ、地面を、なにかを探して歩き回り始めた。

でも、主人公の"わたし"が持つ清々しくサラサラした香りはやっぱり柴崎作品に共通しているもので、自分と周囲の間に微妙に隙間を作りながらもそれが全然嫌な感じじゃない、何とも言えない不思議な魅力があって、読んでいてたまらなく気持ちがイイ。


わたし自身は、占いとかはあまり信じたり気にする方ではないし、女の子が占いにハマる理由がいまいち分からないんだけど、本作品を読んで、あぁ結局こういうことなんどよな、みたいなことが見つかった気がした。





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2009-12-27

『主題歌』柴崎友香 を読んで


主題歌主題歌
(講談社)
柴崎友香


souiunogaii評価 

内容紹介
柴崎友香2度目の芥川賞候補になった表題作「主題歌」は、
大阪のキャラクター商品製作会社に勤める28歳の実加と、かわいい女の子好きの女子達が織りなすおしゃべりお茶会小説。
初挑戦の三人称小説「六十の半分」、デビュー短篇とほぼ同題のクラブ小説「ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド」と、収録3作品すべて三人称の短篇集。

最近何気にハマっている柴崎友香。

日常のその普通な空気の感じをそのまま切り取って描いて小説にしてしまうことで生まれる、柴崎友香独特のこの雰囲気の感じが、どんどん好きになってしまっている。

「主題歌」の主人公の実加、その周りの女の子の友だち、みんなそれぞれのキャラクターが生き生きしていて、彼女らのおしゃべりの楽しい空気が伝わってくる。


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2009-11-29

『きょうのできごと』柴崎友香 を読んで


きょうのできごと (河出文庫)きょうのできごと
(河出文庫)
柴崎友香


souiunogaii評価 

内容紹介
大阪から京都へ引っ越した友人の新居祝いに集まった、20代前半の男女。
けいと、真紀、中沢、かわち、正道……5人のわたし/ぼくを語り手に、真夜中を越えて続く「きょう」のちいさな「できごと」を切り取った全5編の連作短篇集。
文庫版の書下ろし短篇「きょうのできごとのつづきのできごと」も収録。
もくじ
レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー
ハニー・フラッシュ
オオワニカワアカガメ
十年後の動物園
途中で
きょうのできごとのつづきのできごと

柴崎友香さんの単行本デビュー作となった『きょうのできごと』。
本作品は、行定勲監督によって同タイトルで映画化もされている。

先日、『フルタイムライフ』を読んで柴崎友香という作家が俄然気になっていた私だが、
この『きょうのできごと』を読んで、ますますその魅力にハマってしまった。
あぁ、こういう作風もあるのか、いやむしろこっちが原点か、みたいな感じの発見もあった気がして、柴崎友香やるな、と思った。

短篇連作ということで、物語それぞれの語り手になる人物を変えながら、一つひとつのできごとを絶妙なバランスとタイミングでリンクさせ、視点移動の効果を最大限に引き出すその手法は、本当にみごとだと思う。

深夜零時をまたいでの一日のできごとを描いた物語なんだけれど、人物一人ひとりの過去現在を、時間と空間とに大きな広がりを持たせて伝えてくれると同時に、
一瞬一瞬のその場の雰囲気をも大切に表現しようとする、読んでいてすごく面白いと感じる場面の多い作品だった。
ほんまに、始まりすらなくて終わりすらない、そんなとてもささやかな
一シーンを切り取っただけなんだけど、
その一瞬で彼らたちがほんの少しだけ前に歩いたような、
そんな風にふと思える瞬間が幾度もあり、
私はとても前向きな気分になりました。
本を読む女。改訂版

↑は「本を読む女。改訂版」のざれこ さんの感想。
私的にぴったりな感じがしたので紹介させてもらいます。

何でもない、"日常"のなかにある「いいな、これ」と思える瞬間をとらえて、その連続でこんなに素敵な世界観を持つ物語として形にする、柴崎友香という作家、私はすごく好きです。

なにかドラマチックなものがあるものが小説、という意識もなかったですし、自分の好きな映画や写真は、場面や風景だけでも好きだから、それは小説でやっても全然おかしくないと思っていたんですね。とにかく私としては、なんにもないことを書きたい、と。なんにもなくても生きていけるということを書きたいと思ったんです。
柴崎友香ロングインタヴュー「世界をありのままに描きたい」
『文藝 2008年冬号』より





きょうのできごと スペシャル・エディション [DVD]きょうのできごと
監督:行定勲
出演:妻夫木聡、田中麗奈




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2009-11-23

『フルタイムライフ』柴崎友香 を読んで


フルタイムライフ (河出文庫)フルタイムライフ
(河出文庫)
柴崎友香


souiunogaii評価 

内容紹介
美術系の大学を卒業し、心斎橋の包装機器会社に就職した喜多川春子(わたし)。
事務の仕事に慣れ、働くことの楽しさに気付いていく彼女の変化とともに、会社の上司や同僚のOL、友達の紹介で知り合った男の子らとの人間関係も少しずつ変化していく。
会社員生活一年目の5月から翌年2月までの10カ月を、全10章構成で綴る。

柴崎友香さんの作品を読むのはコレが初めてだったんだれけど、とっても良かったです。
初めて読む作家の作品が自分の中での"あたり"だったときって、何だかとっても嬉しい気持ちになれる。
見つけたぞ!って。

主人公の喜多川春子は、美術系の大学を卒業して、食品包装機械のメーカーの事務職として就職したごく普通の女の子。
本当はデザイン関係の仕事をしたかった、って気持ちもほのかに漂わせながら、事務・総務の仕事にも楽しみ・面白さを見つけだせている。
彼女の仕事は、コピーやデータ入力、社内報製作、などのいわゆる事務一般で、派手に目立つものではない。

よくある小説のパターンだと、平凡な主人公が何か"やりたいこと"を見つけだして、カッコ良く変わっていく姿を描くものが多いような気がするけれど、
本作『フルタイムライフ』はそういう話とは全然違う。
ごくごく普通で平凡であることを否定しない、カッコ悪く思わせない。

夢や目標が明確にあってそれに向かって突き進む、そういう人たちだけが素敵なんじゃない。
いまの自分を好きで、毎日の日常の中で普通の当たり前のことを続けていく、そういう人の姿にも素敵な部分が実はたくさんある、それをしっかりと伝えてくれた。
必要なのは、なにかするべきことがあるときに、それをすることができる自分になることだと思う。(中略)
きっと、それでいいと思う。

『文藝 2008冬号』で柴崎友香さんの特集が載ってたのを思い出して、読み返してみると、こんなことが書いてある。
なんか、負けたくないという気持ちはありますよね。悲観的な気分とか、行き詰っている状況とか世の中の大きい流れとか、いろんなことに。『フルタイムライフ』の女の子は、「なにか」に負けたくないから好きな仕事じゃなくても働く。
柴崎友香ロングインタヴュー「世界をありのままに描きたい」 『文藝 2008冬号』より


とにかく、良かったです。
読み終えた後の清々しい感じや、主人公への共感できる度合いの深い感じ、すごくイイ。平凡な事務の女の子を主人公に、こんなにも素晴らしい物語を作ってしまう、柴崎友香という人が他にはどんな作品を書いているのか、とっても気になります。
ぜひ、別の作品も読んでみたい。


そうそう、本書を手に取ったきっかけは、表紙の絵がとっても気に行ったからなんですが、これ『センネン画報』の今日マチ子さんの絵です。
作品の世界観にぴったりハマっています。

今日マチ子のセンネン画報

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『センネン画報』今日マチ子 を読んで
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