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『婚礼、葬礼、その他』津村記久子 を読んで[2010-07-11]
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『ミュージック・ブレス・ユー!!』津村記久子 を読んで[2009-09-13]

2010-07-11

『婚礼、葬礼、その他』津村記久子 を読んで


婚礼、葬礼、その他婚礼、葬礼、その他
(文藝春秋)
津村 記久子


souiunogaii評価 

内容紹介
疎遠になっていた友人の結婚式に招待された会社員のヨシノ。
計画していた旅行をキャンセルして式に出席すると、上司の親の葬儀に呼び出されてしまう――。
結婚披露宴、葬儀に「召喚」され、その準備に追われるヨシノの心境を丹念に描きつつ、会場での友人や同僚との会話を通して、現代人にとっての冠婚葬祭をつぶさに見つめた力作です。
『君は永遠にそいつらより若い』で太宰賞を受賞し、前作『カソウスキの行方』で芥川賞候補になった著者の描く人物は、現代的である一方、どこか切なく、多くの共感を呼びます。

津村記久子さんはこれで3冊目。

登場人物たちの名前をカタカナにする表現はもう津村さんの作品ではおなじみの手法。
どこか冷めていて、乾いていて、何ていうか独特の空気をもつ世界だ。

友人の結婚式に出席していたのに、会社の上司に呼び出されて葬式に出席することになってしまう主人公のヨシノさん。

式で出る食事をあてにしていたのに、それを食べそこなってしまい終始空腹に苦しめられる姿には、何とも言えない笑いがある。

一緒に収録されている「冷たい十字路」という作品の方は、
これまた津村記久子の世界なんだけど、とってもダーク。

語り手になる人物を順に変えながら、自転車交通事故っていうひとつのできごとを中心に描かれる、ある街の物語。

津村記久子「婚礼、葬礼、その他」:文学賞メッタ斬り!(第139回芥川賞)



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2009-11-08

『八番筋カウンシル』津村記久子 を読んで


八番筋カウンシル八番筋カウンシル
(朝日新聞出版)
津村記久子


souiunogaii評価 

内容紹介
30歳を目前にして体調を崩し、会社を辞めたタケヤス。地元の八番筋商店街では近くに巨大モールができることで青年団(カウンシル)の会合が騒がしくなっていく。
地元を出た者と残った者、それぞれの姿を通じ人生の岐路を見つめ直す成長小説。

津村記久子さんの作品を読むのは『ミュージック・ブレス・ユー』に続いてこれが2冊目。
"八番筋カウンシル"というのは、商店街の青年会のこと。
地元を離れてサラリーマンをしていた主人公のタケヤスは、小説の新人賞を受賞するも体調を壊して会社を辞め、実家のある商店街に戻ってくる。
そこには中学の同級生のヨシズミ、ホカリ、カヤナたちがいて…。

津村さんの作品の特徴なのか分からないが、登場人物が結構たくさんなわりに、序盤ではあまり説明的な描写がなく、また人物名はみんなカタカナなので少しとっつきにくいかもしれないんだけれど、それがまた、"地元の商店街"が持つ微妙な雰囲気を描くのに効果的に働いているのかもしれない。

テーマになっているのは、子供のころから、大人になり家庭を持ち、年をとって老いるまでをずっと地元の限られたエリアの中だけで過ごす生き方を選択した人と、
高校、大学へと進み、いつしか地元を離れて都会で生きることを選んだ人との、その間に出来てしまったどうしようもない溝みたいなもの、かな。

そして、中学のときの同級生と、大人になってから再開したときの、
「夢や希望なんて結局かなわない、現実とはそんなもんだろう」的な何とも言えないガッカリ感というか。

また、世代間のギャップみたいなものも本作の重要なテーマになっている。
商店街の中では、30代の主人公たち若手のメンバーと、青年会の中心メンバーである中高年メンバーたちと、そして熟年、高齢者世代の人たちと、それぞれの世代にはそれぞれの歩んできた歴史の違いがあって、これからの商店街に対する意見があって、それらがせめぎ合って、物語は進んでいく。
家族というか、親と子の間の関係にも結構な力点が置かれている。

そういう難しいモヤモヤとした、人と人の間にある空気を、非常に上手く形にしている。
津村さんの作品、いろいろな物が一つのストーリーの中にぎゅっと詰め込まれていて、何とも味わい深い。


ちなみに本書の表紙は、写真家・佐藤信太郎さんの作品です。

SATO Shintaro PHOTO GALLAERY
非常階段東京―TOKYO TWILIGHT ZONE非常階段東京
TOKYO TWILIGHT ZONE
(青幻舎)
佐藤信太郎




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2009-09-13

『ミュージック・ブレス・ユー!!』津村記久子 を読んで


ミュージック・ブレス・ユー!!ミュージック・ブレス・ユー!!
(角川書店)
津村記久子


souiunogaii評価 

内容紹介
アザミよ、ヘッドホン1個耳に引っ掛けてどこへ行く――。
オケタニアザミは「音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事」な高校3年生。髪は赤く染め、目にはメガネ、歯にはカラフルな矯正器。数学が苦手で追試や補習の連続、進路は何一つ決まらない「ぐだぐだ」の日常を支えるのは、パンクロックだった!超低空飛行でとにかくイケてない、でも振り返ってみればいとおしい日々・・・・・・。
青春の新スタンダード、ここに誕生!
第30回野間文芸新人賞受賞作

楽しかった。面白かった。
久しぶりに「ああ、これすごくイイ!」って思える青春小説に出会った、そんな気がした。

津村記久子さんの作品を読むのは実は今回が初めてなんだけれど、もうすっかりファンになってしまった。
芥川賞受賞作の『ポトスライムの舟』(講談社)など、他の作品もぜひぜひ読んでみたい、そう思った。

で、今回読んだ『ミュージック・ブレス・ユー!!』ですが、
主人公は高校3年生の女の子、アザミ。
もうとにかく音楽が大好きな子で、いつでもヘッドフォンから流れてくるパンクを聴いている。
大学受験を控えて勉強をしなきゃいけないんだけれど、やっぱり音楽以外のことには身が入らなくて、だいたい将来自分がやりたいこともはっきりとイメージできなくて……。
そんなアザミが、不器用ながらも何とかして「あたしはどうすればいいんだろう?」を一生懸命に考え、今日を精いっぱいに生きていく。
その姿がとっても若々しくてエネルギッシュな感じがして、読んでいて元気をもらえる。
"とにかく自分はコレが好きなんだ"って気持ちを大事にして、それを忘れないで、隠さないで、ずっとずっと"自分らしさと正直さ"を持ち続けること、そういうことが本当に大切なことなんだってことを教えてくれる。

舞台は大阪で、登場人物たちのセリフはみんな関西弁。
アザミの心の声を素直に表現したような文体から、とってもリアルに高校生の悩み葛藤しながら一生懸命に毎日を過ごす姿が感じられる。

アザミの周りの友達も、それぞれ素敵なキャラで、イイ。
チユキ、ナツメ、モチヅキ、トノムラ、みんなそれぞれアザミから何かをもらい、アザミに何かを与えてくれる。
高校卒業を控え、すこしずつ変わっていきながらも、大切なことを失わずにいられる彼女たちの姿は、まさに青春小説って感じで、読んでいていとても心地よい。
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