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『手』山崎ナオコーラ を読んで[2010-11-27]
『ここに消えない会話がある』山崎ナオコーラ を読んで[2010-09-26]
『男と点と線』山崎ナオコーラ を読んで[2010-08-22]
『あたしはビー玉』山崎ナオコーラ を読んで[2010-08-22]
『この世は二人組ではできあがらない』山崎ナオコーラ を読んで[2010-07-20]

2010-11-27

『手』山崎ナオコーラ を読んで


手
(文藝春秋)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 


内容紹介(文藝春秋)
『人のセックスを笑うな』でベストセラー、その後も『カツラ美容室別室』などで、良質な読者を獲得した山崎ナオコーラさん。
山崎さんの端正な文章、と同時に偏光フィルターを通して見るような不可思議な作品世界の稀有な魅力。
新聞のラテ欄をつくる仕事をしている女性主人公はおじさんたちとお付き合いしてきました。また「ハッピーおじさんコレクション」というサイトを運営しています。この小説では何かが確実に起こっているのだけど、それはドラマとはいえないささやかなものかもしれません。人を驚かすことは簡単だけれど、人の心の位相を少しだけ動かすことはとてつもなく難しい。それを実現した傑作です。
もくじ

笑うお姫さま
わけもなく走りたくなる
お父さん大好き

2010-09-26

『ここに消えない会話がある』山崎ナオコーラ を読んで


ここに消えない会話があるここに消えない会話がある
(集英社)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 

内容紹介
何もない人生にも、キラキラ輝く会話がある
25歳の派遣社員、地味系男子の広田は半ば諦めの境地で生きている。しかし、会社で同僚と交わす会話が楽しくて世の中を嫌いになれない。人とのささいなやりとりのかけがえのなさを描く職場小説。


「ここに消えない会話がある」刊行記念 山崎ナオコーラさんロングインタビュー:集英社

微炭酸ホームページ(山崎ナオコーラが書いています)

またまた大好きな山崎ナオコーラさんの小説です。

とにかく、山崎ナオコーラ節というか、言葉の選び方・表現の仕方が絶妙すぎる!
小説なんだけど、ひとつひとつの文章から伝わってくるメッセージがたいへん力強い。


以前、他の作品でも扱われていた、新聞のテレビ欄の製作会社が舞台で、
登場人物たちは、そこで働く20代の男女。

一人ひとりの仕事に取り組む姿勢が、それぞれに違っていてその温度差みたいなものが面白い。
広田(アキバ系?)、岸(こそこそ小説を書いている)、佐々木(リーダーシップを取りたがる)、別所(いつも日焼けをしている)、魚住(ふざけている)、津留崎(美人)。
物語は三人称で綴られ、一応広田が中心になって語られるんだけれど、他の人物が中心になったりする場面もあったり、そのバランスがすごく上手い。
今日も、広田は出勤途中に空を見上げる。
空の青さ。「青」って一体なんだろう。人間にとって青ってなんだろう、青っていうのはどこにあるんだろう。

山崎ナオコーラ作品の最大の魅力とも言える、詩のような表現を織り交ぜた会話・心情描写が本作では特に印象的だった。
先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人間を成熟へと向かわせるわけではない。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ。

誰にも読めない流れるような字を書いて、郵便屋さんに届けられない手紙を出そう。

山崎ナオコーラさん、やっぱりこの人の書く小説を私は大好きだ。


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2010-08-22

『男と点と線』山崎ナオコーラ を読んで


男と点と線男と点と線
(新潮社)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 


内容紹介
運命って、あるんだ――大人になるまで、わからないことがある。大人たちに捧ぐ恋愛・関係小説。
この一瞬にも、世界のどこかで、男女はくっつき、つながりあっている。クアラルンプール、パリ、上海、東京、NY、世界最南端の町で、68歳の老夫婦、22歳の女子大生と男友だち、32歳の会社員、17歳の高校生カップル、42歳の独身男性、28歳の小説家が、何かと誰かと出会う。若き鬼才が新しい世界に挑む、地球規模の発見の物語。
もくじ
慧眼
スカートのすそをふんで歩く女
邂逅
膨張する話
男と点と線
物語の完結

山崎ナオコーラさんの短編集です。

「慧眼」は、サラリーマンを引退してマレーシアに移住した夫婦のお話。
こんな年の取り方も、いいな、そう思った。

「スカートのすそをふんで歩く女」は大学4年の私が、同じサークルの男子3人と一緒に、パリに卒業旅行に行くお話。
山崎ナオコーラ作品にたびたび登場する、彼女自身をモデルにしたと感じさせるあの独特の雰囲気を持った主人公の女の子が、とてもイイ。

「邂逅」は、上海に出張したサラリーマンが出会ったある姉弟のお話。

「膨張する話」は、東京の高校生のカップルのお話。
二人の会話が、若くて瑞々しくて、イイ。

「男と点と線」は、ある母娘と一緒にニューヨークに旅行にいくことになったある男のお話。

「物語の完結」は、アルゼンチンへ旅行にいった女の子2人が、現地で日本人の男女と出会うお話。

世界各地を舞台に、様々な年齢の男女が物語をつむぎます。

旅行気分で読んでいただきたいです。

何と何と何、「セックスと嘘とビデオテープ」、「部屋とYシャツと私」のような題名の本を一度作ってみたかったので、
『男と点と線』という三つの言葉のタイトルにしました。


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2010-08-22

『あたしはビー玉』山崎ナオコーラ を読んで


あたしはビー玉あたしはビー玉
(幻冬舎)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 

山崎ナオコーラの新世界、青春ラブファンタジー小説!
内容紹介
あたしはビー玉。高校二年生の男の子に片想いしてしまった。気難しい男の子は大好きだけど……。可愛がられるだけじゃ、満足できない!「新しい女の子」の生き方を探る、バカ可愛い高校小説!!

まず、この表紙を見て「えーっ!?」と思って、何だか読むのを少し躊躇しそうになったのだけれど、でも大好きな山崎ナオコーラさんの作品だから絶対に面白いはずだ、そう思って読み始めた。
そしたら、やっぱり山崎ナオコーラさんはスゴイ!
期待通り、いや期待していたそれ以上にもっとずっと楽しませてくれた。
面白かった!

主人公は高校2年生の清順、16歳の男の子。
物語は、彼が大事にしていたビー玉がある日突然しゃべりだすところから始まる。
ビー玉が女の子の人格を持ち、清順に恋をして、彼にだけ聞こえる声で話しかけるのだ。
何とも不思議な非現実なこの出来事を、あくまでも平凡な日常世界の中で起こる出来事として描き、そこに全然違和感を感じさせないのは、山崎ナオコーラ節とも呼べる独特の温度の文体の持つ力だと思う。

ビー玉は清順に対して「好きだ」というアピールを強くぶつけるんだけど、当の清順の方は、バイトをしているハンバーガーショップの先輩のお姉さん・竹中さんに恋をする。
「清順が、他の女の子を、好きになったら、あたしは溶けて、死ぬのかな……」
水からときどき顔を出して、息継ぎをしながら人魚姫みたいなことを言うと、
「なんだそれ?脅迫?めんどくせー。こええなー。女は怖い」
と清順が、さも嫌そうに、あたしを見た。こういうことを言うと愛されないんだな、とあたしは学習した。

ビー玉は、フライドポテトや炭酸飲料が好物で、時には感情を表に出して赤くなったり、涙を流したり、一つひとつの仕草がとっても可愛い。

若い人たちに読んで欲しい、という思いを込めて綴りました。
高校生たちが活躍する、ラブコメディのような物語なのですが、
私が今まで書いた小説の中では、原稿量としては意外と一番多いのです(『人のセックスを笑うな』が102枚で、この本は一応、300枚くらいなので)。
読みどころとしては、会話文の艶っぽさか。
室生犀星「蜜のあわれ」へのオマージュがあります。
清順、ビー玉、チクチュー、岡本たちがなんやかんやして、物語の山を作ります。

そして、清順は、高校の文化祭で、クラスの仲間の岡本と紺野と3人でバンドを組んで演奏する計画を立てる。
さらに岡本まで竹中さんに恋をしてしまい……。
と、家族や友達の描き方はまさに青春恋愛小説な感じで爽やかで気持ちい。

これまで読んだ山崎ナオコーラ作品は、女性が主人公の話が多かった気がして、だから高校生の男の子が主人公の小説というのが新鮮で、新たな山崎ワールドが始まったな、そんな気がした。

ラストは、ファンタジー小説ならではの素敵で綺麗で夢のある終わり方で、とにかくイイ感じの物語だった。

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2010-07-20

『この世は二人組ではできあがらない』山崎ナオコーラ を読んで


この世は二人組ではできあがらないこの世は二人組ではできあがらない
(新潮社)
山崎ナオコーラ


souiunogaii評価 

内容紹介
どうして全員が男女二人組でなくてはならないのか。社会とのつながりに切り込む〈反恋愛小説〉。

社会とは一体なんだろうか。この小説の舞台は狭いアパートだ。川を二つ越え、私は日々を営んでいた。大学卒業後、働き始め、経済力がついてきた。好きになること、二人暮らし、戸籍などへの疑念、小説に取り組むなかで、私はなにを捨て、なにを掴んでいくのだろうか。無冠の帝王が描く、純粋素朴な社会派小説。


山崎ナオコーラさんの『この世は二人組ではできあがらない』を読んだ。
感想、とてもとても良かった。
これまで、『人のセックスを笑うな』『カツラ美容室別室』『長い終わりが始まる』『論理と感性は相反しない』を読んできて、読むたびに山崎ナオコーラさんの書く文章が好きだ、そういう気持ちが強くなるのを感じてきたけれど、それがより一層強くなった気がする。

私は、山崎ナオコーラさんの書く小説が大好きだ。

そして本作は、著者自身も以下のように日記に書いている通り、間違いなく山崎作品の集大成的なものになっていると思う。
完全に力を出し尽くしました。
自分でも信じられないくらい、やりきった。
小説について、ずっと考えた。
これは、読んでいただきたい、と思ってしまいます。
構成とか、伏線とか、すごく考えたので、できたら深読みしていただきたい。
もう、これで山崎ナオコーラ第一期は、終わり。



主人公は、大学で日本文学を学び、卒業後は小説家を目指して作品を新人賞に応募し続ける女の子の栞ちゃん。
物語の舞台になっているのが、たまプラーザ、二子玉川、渋谷という東急田園都市線の沿線で、それが著者自身の自叙伝的な雰囲気を感じさせる。
栞ちゃんが、大学の先輩の紙川さんという男性と半同棲生活をしながら、ビミョーな距離感を保ちつつのある意味ちょっと不思議な恋人関係を作る姿が綴られる。
人はひとりで完全だ。だからベターハーフなんて探していない。価値はひとりの人間に十分ある。
「自分の存在のために誰かが必要」という考えでは生き続けられないだろう。アンドロギュヌスが半分に割れて、現在の人間が生まれたなんて、嘘だ。
人と人とは、関係がない。誰も、誰かから必要とされていない。必要性がないのに、その人がそこにいるだけで嬉しくなってしまうのが、愛なのではないか。

栞ちゃんの言葉として綴られる中に、著者山崎さん自身の人生に対する思想というか信念のようなメッセージ性を感じる、非常に力強い言葉がいくつも埋め込まれている。
これぞ山崎ナオコーラワールドだと、そう思う。

いつものテーマが、一つひとつのエピソードによって丁寧に真面目に正面からしっかりと描かれている。

とにかく、主人公・栞はブレない。全然ブレない。
そんな彼女が、半同棲の生活を通して、紙川さんや周囲の人間を少しずつ変えていく、その姿に真理のようなものさえ感じられて、何だかとってもカッコいいなと思った。

一人の人間が自立して自分の人生を歩んでいくということの、意味とか目的とか、そういうものを真剣に考えなきゃというような気持ちになる。
そんな力が、彼女の言葉に込められている。

ただひたすらに、文学というものに真摯に向き合う、山崎ナオコーラの本気を感じられるすごい一冊だった。

社会に放つ若い女性の「つぶやき」
[書評]『この世は二人組ではできあがらない』:asahi.com

【書評】『この世は二人組ではできあがらない』山崎ナオコーラ著:MSN産経ニュース
『この世は二人組ではできあがらない』刊行記念対談 川村 湊×山崎ナオコーラ

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『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ を読んで
『カツラ美容室別室』山崎ナオコーラ を読んで
『長い終わりが始まる』山崎ナオコーラ を読んで