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『まっとうな経済学』ティム・ハーフォード を読んで[2008-05-11]

2008-05-11

『まっとうな経済学』ティム・ハーフォード を読んで


まっとうな経済学 (ランダムハウス講談社)ティム・ハーフォード(著), 遠藤真美(訳)まっとうな経済学
(ランダムハウス講談社)
ティム・ハーフォード(著)
遠藤真美(訳)

souiunogaii評価 ハート4つ

内容紹介
賢い消費者、損をしない投資家、黒字国家、
それにはみんなワケがあった―。「読者を夢中にさせる一冊!」
スティーブン・D・レヴィット『ヤバい経済学』著者


経済理論を駆使して、毎日の買い物、投資家心理、国家財政まで、実体経済を動かすしくみを根底から解き明かす!
大学生、ビジネスパーソン、公務員、政治家まで、経済活動にたずさわるすべての人の必読書!

この本に出てくるのは、為替や景気循環の話ではなく、中古車市場の謎解きや、スーパーで無駄遣いをしないための知恵である。
読み終わることには、みなさんがいまよりもっと聡明な消費者になって、いまよりもっと聡明な有権者になって、政治家が吹聴する話の裏側にある真実を見極められるようになっていることを願っている。

以前読んだ、『ヤバい経済学』はたいへんに面白かったが、こちらの『まっとうな経済学』もまた、たいへん楽しませてもらった。
著者のティム・ハーフォードは、フィナンシャル・タイムズ・マガジンのコラムニストで、世界銀行グループ国際金融公社の主任ライターで、オックスフォード大学経済学部の講師で、石油会社シェルのエコノミストだそうだ。

タイトルに“まっとうな”とあるが、その意味するところは何なのだろうか。
本書で扱われている題材は、現実世界に存在するさまざまな「経済行動」だ。
それらを著者のティムは、先入観をとっぱらって、極めて素直と思えるやり方で経済理論をあてはめて、状況を分析し、問題点を指摘し、問題解決の方法を提案する。
おそらく、“まっとうな”というのは、偏見や先入観や思い込みを排除し、慣習に流されずに、冷静に素直に、経済学者のあるべき姿、やるべき仕事をおしすすめると、こうなるのだ、ということを示しているのだろうと、私は感じた。

身近なところで言えば、スターバックスのコーヒーの値段はどうやって決まっているのか。
スーパーマーケットの商品ラインナップと価格はどうやって決まるのか、そこで実際に儲けているのは一体だれなのか。
私たちが様々な状況下でものの値段の高い安いを判断する根拠は何なのか。

少し視野を広げて、扱うテーマを大きくしてみると、交通渋滞を解消するにはどうすればよいか、環境問題を解決するには、効率的な競争入札を政府が実施するためには、などの方法を考えていく。

さらに、後半では世界的な問題に入っていく。アフリカの極貧国が貧困から脱出するためには、海外投資と貿易によって自国の産業を発展させるためには、中国が途上国から経済発展できた理由は、などのスケールの大きな問題だ。

本書で主に使われる経済の理論は、例えば、
希少性、価格ターゲティング、完全競争市場、外部性課金、内部情報、非対称性の経済、ゲーム理論、比較優位、などの用語で表せるものたちだ。
いずれも著者が丁寧に分かりやすく実例を多く取り入れながら語ってくれるので、経済学を学んだことのない人にも、抵抗無く読むことができ、理解することができる。
特に、希少性や比較優位などの考え方は、それまで私にはあまりなじみの無かったもので、とても新鮮で、感動すら覚えるような面白いものだった。
読んでいても、「へぇー」「あぁ、そうか!」「なるほど!」と、驚き感心することがたくさんあって、経済学って(経済学者って)面白くて楽しいなぁ、と思った。

本書が何より楽しめる本になっているポイントは、著者が導き出す提案の意外性だと思う。
コーヒーショップから世界情勢まで、非常に幅広いテーマを扱っているのだが、そのすべてに、常識で考えると一見間違っているのでは?と思える答えを出してくれる。
しかし、それが経済学にかなった真実なんだと、納得させられる。
その意外性というか、予想外の帰結とそこにたどりつくまでの理論・過程が、何とも言えない満足感を、読んでいる私に与えてくれた。

経済学と言うと、現実から少しかけ離れたところにある難しい理論だと思いがちだけど、そうではない。ティムは現実の問題を実際に観察しながら、何とかして経済学者が社会に役立つ方法を探そうと懸命になっている。その考え方はひたすらに人間を主役にしたものであると感じた。
そして彼が提案する解決方法は、誰かが富を独占するのではなく、経済活動に関わる参加者全員がハッピーになるための方法、「Win-Win」の関係を構築するための方法なのだ。
極貧国カメルーンに実際に取材をして、何とかして今の最低の状況を改善したいという熱意が伝わってくる。彼こそ真の経済学者だと、そう思う。
もくじ
第1章 誰がためにそのコーヒーはある
第2章 スーパーマーケットが秘密にしておきたいこと
第3章 安全競争市場と「真実の世界」
第4章 交通渋滞
第5章 内部情報
第6章 合理的な狂気
第7章 本当の価値をなにひとつ知らなかった男たち
第8章 なぜ貧しい国は貧しいのか
第9章 ビールとフレンチフライとグローバル化
第10章 中国はどのようにして豊かになったか

原書はこちら。
The Undercover Economist Tim HarfordThe Undercover Economist
Tim Harford


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