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『現代語訳 舞姫』森鴎外 井上靖(訳) を読んで[2007-12-20]

2007-12-20

『現代語訳 舞姫』森鴎外 井上靖(訳) を読んで


現代語訳 舞姫 (ちくま文庫)森 鴎外(作), 井上 靖(訳)現代語訳 舞姫
(ちくま文庫)
森 鴎外(作)
井上 靖(訳)

souiunogaii評価 ハート4つ

内容紹介
今では「古典」となりつつある鴎外の名高い短編小説『舞姫』を井上靖の名訳で味わう。
訳文のほか、原文・脚注・解説を付して若い読者でも無理なく読める工夫を凝らした。また資料篇として、ベルリン留学時代の鴎外や「舞姫」エリスの謎についてなど、作品の背景を探る代表的文献を紹介。
読みごたえのある名作をさらに深く味わえる一冊。

森鴎外の『舞姫』は、高校の現代文の教科書に全文が載っていた。文語で書かれたその短い小説を、確かに読んだと言う記憶はあるのだけれど、高校3年の私はどんな感想を持ったのかは、あまり覚えいていない。

今回、井上靖による現代語訳が原文とセットになった文庫本を見つけたので、6年ぶりくらいに再びこの『舞姫』を読んでみることにしたのだ。

原文と現代語訳のそれぞれの冒頭の部分をちょっと並べてみると、こんな感じだ。
石炭はもう積み終えてしまった。二等室のテーブルのある辺りはたいへん静かで、白熱電燈の光の晴れがましいのも無駄なことに思われる。今宵は夜毎ここに集まってくる骨牌仲間も、みな陸の客館に泊まって、船に残っているのは私一人であるからである。
井上靖 現代語訳

石炭をばはや積み果てつ。中等室の卓のほとりはいと静かにて、熾熱灯の光りの晴れがましきもいたづらなり。今宵は夜ごとにここに集い来る骨牌仲間もホテルに宿りて、舟に残れるは余一人のみなれば。
原文

今回は私は先に現代語訳を読んで、その後に原文を読んだのだけれど、言葉の置き換えが巧みで、明治の時代に書かれた文章のクウキっていうかニオイみたいなものが損なわれていない気がするのは、よくできてるなと感心させられる。

将来の成功を保証されたエリート官僚候補の豊太郎が主人公。
ベルリン留学中に一人のドイツ人女性に恋をして、そこから人生の迷路にはまっていく。
そして彼は決断を迫られる。
将来を捨てて恋人をとるか、それとも彼女を捨てて帰国し出世する道をとるか。

高校生の私は、『舞姫』を読んで、たぶん次のようなことを感じていたのだろう、と思い浮かべてみる。

やっぱり、人間は計算して最終的に楽なほうを選んでしまう。
たいていの場合は一番大切なのは自分自身で、都合のいい言い訳を用意して、周囲の環境や他人を悪者にして、自分の中の悪を隠そうとする。
そして、いつか自分の選択は実はミスだったのではないかと思い悩んだりする。
あのとき、もし違った道を選んでいたとしたなら、今とは別の世界にいたかもしれない、なんて考えたりする。
それは明治を生きた人も、平成を生きる人も、変わらない。

おそらく数年後にまた読み返してみても、いろんなことを考えさせるヒントをくれる、深い深い小説だと思う。
もくじ
・現代語訳 舞姫 井上靖訳
・解説 山崎一穎
・舞姫(原文)
資料篇
・資料・エリス 星新一
・兄の帰朝 小金井喜美子
・BERLIN 1888 前田愛