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『平成マシンガンズ』三並夏 を読んで[2008-11-18]

2008-11-18

『平成マシンガンズ』三並夏 を読んで


平成マシンガンズ (河出書房新社)三並 夏平成マシンガンズ
(河出書房新社)
三並 夏


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
あたしの夢には死神が降臨する。――ボロのジーンズに出刃包丁をもって夢に現れる男。
あたしはそいつが差し出すマシンガンを撃っては、頭を撫でられていた。
言葉という武器で世界と対峙する史上最年少15歳の恐るべき才能による文藝賞受賞作。

先日読んだ、青山七恵さんの『窓の灯』と同時に、第42回文藝賞を受賞したのが、今回読んだ『平成マシンガンズ』です。

著者の三並夏さんが本作を書いたのは、15歳中学3年のときだとか。
こんな若い作家さんの作品を読むことは、これまであんまりなかったんだけれど、
いやいや、年齢なんて関係ないんだよな、とあらためて感じました。

中学1年生の女の子の物語なのだから、っていうことなんかじゃなくって、そういうのをちょっと飛び越えてしまったレベルで、三並夏っていう一人の小説家をしっかりと感じることができます。
そこには、確かに、三並さんにだけしか書けない、三並さんだからこそ生み出せる、そんな物語がありました。

物語の主人公は朋美。中学1年の女の子です。
本文中では、"あたし"と一人称で表現されています。
クラスの中ではわりと地味な静かな感じの子として振る舞いながら、
でも"自分はこうなんだ、こうしたいんだ"っていう強い気持ちはしっかりと持っている。
そんな朋美が見て、感じた世界を、朋美自身の目線から生き生きと描いた物語です。
学校がいやな場所になった。決して初めからいい場所だったわけではなかったし辛いことも結構あったけど家よりはずっと居心地がよくてあたしにとっては大切な、無二の場所だった。あれでも。あたしの居場所は家と学校のふたつしかないというのにそのたったふたつがあたしを嫌っている。

クラスでは、仲良くてしていたとはずの友達に、ほんのささいなちょっとしたことがきっかけで無視されてしまい、クラス中からハブられてしまい…。
母親は家を飛び出してしまって、家には父親の愛人が転がり込んできて、その愛人は朋美の一番嫌いなタイプの女で…。

と、こんな風に学校でも家でも、自分の居場所を守るために、自身の存在をきっぱりと示すために、朋美は懸命にもがきます。
彼女の夢の中には、死神が登場してマシンガンを渡してくれます。
現実と夢との不思議な交錯。

リズム感のある、生き生きとした文章で、
女子中学生が今を生きるナマの姿をしっかりと描いています。

特に、女の子同士の会話の場面や、朋美の心の叫びを描いた場面なんかでは、彼女の気持ちがじかに伝わってきます。
もうだめなんだ。あたしは全部を諦める。これからのことなんて知らない。今あたしの心は絶対的な力をもってこの場所を拒否している。

自分はこんなにもちゃんと思っているのに、どうしてそれが周りには伝わらないんだろう、どうして分かってもらえないんだろう。
子供でいることが嫌で、早く大人になりたくて、でも大人のことは大嫌いで。
そんな中学生の物語です。

約100ページの短いこの小説の中に、15歳の三並夏の才能がぎゅっとつまっています。

史上最年少で文芸賞を受けた三並夏さん:YOMIURI ONLINE 大手小町
『平成マシンガンズ』書評 (茂木健一郎):YOMIURI ONLINE 本よみうり堂
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