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『夢見る黄金地球儀』海堂尊 を読んで[2007-11-12]

2007-11-12

『夢見る黄金地球儀』海堂尊 を読んで


夢見る黄金地球儀 (東京創元社)海堂 尊
夢見る黄金地球儀
(東京創元社)
海堂 尊

souiunogaii評価 ハート4つ

本が好き!より献本していただきました。

まず一言。「いや実に面白かった!」
タイトルに惹かれて、読んでみたいと思い本書を選んだのだけれど、正直、金塊泥棒の話でこんなにも楽しめるとは思わなかった。
期待通り、いや期待以上の興奮と感動を久しぶりに感じた。

著者の海堂尊がデビューしたのは『チーム・バチスタの栄光』という作品。第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、さらに2008年2月には竹内結子・阿部寛主演で映画化されるという。

私が海堂尊を読むのは本書『夢見る黄金地球儀』が初めてなのだけれど、これほどに注目を集めている新人作家だとは知らなかった。ぜひ、他の作品も読んでみたい。
内容紹介
首都圏の端っこに位置する桜宮市に突如舞い込んだ1億円。その名も「ふるさと創生基金」。だがその金は黄金をはめこんだ地球儀に姿を変え、今では寂れた水族館にひっそりと置かれているだけとなった――はずだった。が、ある日を境にトラブル招聘体質の男・平沼平介の日常を一変させる厄介の種へと変貌する。
8年ぶりに現れた悪友が言い放つ。「久しぶり。ところでお前、1億円欲しくない?」かくして黄金地球儀奪取作戦が始動する。2転3転4転する計画、知らぬ間に迫りくる危機。平介は相次ぐ難局を乗り越え、黄金を手にすることができるのか。『チーム・バチスタの栄光』の俊英が放つ、抱腹絶倒のジェットコースター・ノベル!

さて、物語の内容はというと、簡単に書けば、市の所有物である金の地球儀を盗んでしまおう、という話だ。

主人公であり、泥棒チームのリーダーとなるのは、平沼平介。父親が社長を務める家族経営の小さな町工場の営業職だ。
物語は平介を「俺」という一人称にして、彼の目線から描かれている。
大学院で理論物理学を学んだ彼の言葉で作られる文章は、論理的で、理系的で、そして漢字が多い。
読み始めは、軽い抵抗感というか少し疲れを感じたのだけれど、それは始めだけで、読み進めるにしたがって、その文章の魅力に気づき、物語の世界にどっぷりとはまり込んでしまう。
不思議な力だ。著者の才能を感じる。

そして、主人公平介をかこむ泥棒チームのメンバーたち。
まず、ガラスのジョニー。平介の学生時代の悪友。表紙のチューリップ帽の男がそうだ。

そしてアイ。平介に想いをよせるバーテンダーの女性。重さ80kgの金の地球儀を持ち上げてくれる怪力の持ち主。

この2人の他にも、様々な人物たちが、「え!この人が?」「は!コイツも?」という驚きの形で泥棒作戦にからんでくる。

金を盗まれる側の市の職員の面々も、クセのある人物たちで面白い。

金塊泥棒、それは完全に違法行為であり、れっきとした犯罪であり、絶対にイケナイことなのだけれど、それでも読者としては「何とか成功してくれ」「うまく盗んでくれ」と、彼らを応援する気持ちが沸いてくるから、不思議だ。
その理由は、盗む相手である「自治体職員」が、現実社会では日頃から庶民の敵として報道されているからかもしれない。
「厳密に考えれば違法行為だ。だけどやることは、あいつら役人と大して違わない。ヤツらは自分たちのやっていることが都合悪くなるとルールを変える。法律を作り直し、自分たちだけは甘い汁を吸い続けようとする。それだけの違いだ」

「税金を取り返してやろうぜ」みたいな。(実際にはそうではないのだが)

なんて頭の良い方法だ、これならきっとバレない。うまくいくはずだ。と感心しながらも、本当にうまくいくのか?もしバレたら……という不安も強くなっていく。
泥棒計画スタートからは、ドキドキ・ワクワク・ハラハラの連続だ。

そして、ラストでの大どんでん返し。全然予想もつかなかった結末が待っている。
「様々な断片が、一点に向かって収束していく。」
その瞬間が、もう、たまらなく気持ちいい。

舞台は桜宮市という架空の町。現実世界をパロディしたものや人の数々。町工場の脅威の技術力。魅力あふれる登場人物たち。空中三回転半ひねり的なストーリー展開。笑いと興奮と感動。
「これは面白かった!」と心から感じられる要素がぎっしりつまっている。

この一冊で、私は海堂尊のファンになってしまった。

物語終盤、平介が父豪介からかけられた言葉には、ちょっと感動してしまった。
「平介、お前はよくやってくれている。だが才能というものは、本人が無意識のうちに認識してしまうものだ。(中略)自分の本当の姿から目を逸らすな。すべてをありのままに見つめろ。結果は問題じゃない。本当は何をやりたいのか、もう一度、自分に問いかけてみろ」


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