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『RUN!RUN!RUN!』桂望実 を読んで[2007-11-29]

2007-11-29

『RUN!RUN!RUN!』桂望実 を読んで


RUN!RUN!RUN! (文藝春秋)桂 望実RUN!RUN!RUN!
(文藝春秋)
桂 望実


souiunogaii評価 ハート3つ

タイトルと表紙が気に入って、どんな内容なのかは全然確かめずに、この本を選んだ。
つぶれたシューズの写真に、「この本は良い!」って予感を強く感じた気がした。

著者は桂望実(『県庁の星』が映画化されている)。

読み始めると、大学の陸上部で箱根駅伝を目指す人たちの話だと分かった。
正直、「あぁ……」と思った。私はスポーツ(特にマラソンや駅伝)にはあまり興味が無い。駅伝を観戦したりすることなど、無い。面白いポイントが分からないのだ。

しかし、この本を読んで、そういった考えは変わったかもしれない。
表紙を見たときの「この本は良い!」の予感は、やっぱり合っていた。
ページをめくるうちに、すっかりその世界に入り込んでしまった。
もう、一気に読んでしまった。
駅伝選手の話で、こんなにも面白い小説ができるなんて、驚きだった。感動だった。
文藝春秋書誌ファイル 内容紹介 より
アスリートとして最高の資質を持つ主人公が知った事実とは。箱根駅伝に懸ける仲間と走るうちに、閉じかけていた世界が開いていく

長距離ランナーとしての高い能力を持って生まれ、地道な努力も重ねてきた反面、自分以外には興味がなく、仲間も必要としなかった岡崎優。箱根駅伝での優勝を狙う陸上部のメンバーからは猛反発をくらうが、同じ1年生のムードメーカー・岩本だけは優を尊敬し庇う。そんな中、突然の兄の死をきっかけに、優は岩本をサポートする立場に追い込まれるのだが……。
映画にもなった「県庁の星」の大ヒットで、今大注目の著者が、過酷な運命を背負わされた青年の友情と成長を熱く爽やかに描きます。

とにかく主人公・岡崎優の描かれ方がいい。
大学1年生の若い彼は、はじめは「はぁ?コイツ何様だよ!」と言われるような、天才気取りで生意気な少年だった。
(その上、裕福な家庭に育ち、経済的にも恵まれている)
周囲から反感を買い続ける。

でも不思議と、私は彼には腹が立たなかった。

そんな彼が、あるきっかけから少しずつ変わっていく。
両親、兄、陸上部の“仲間”、コーチ、周りの人間たちとのつながりを少しずつ意識するようになっていく。
ずっと、自分のためだけに生きてきた人間に、初めて「他の誰かのために」という気持ちが芽生えていく。
気持ちがギザギザになっていくのはなんでだろう――。自分の心のことなにに、わからないことが多すぎる。

そういう、一人の人間の内面の変化の様子が、丁寧に丁寧に表現されている。
悩んで、苦しんで、迷って、それでもゆっくりと大きくなっていく彼の姿が、たまらなく素敵に見えた。
こういうのが、小説を読む楽しみだよな、そう思う。

陸上というスポーツの話なのに、この小説には主人公が走る試合のシーンがほとんどない。
大部分を占めるのは、トレーニングのシーン。
それでも、まったく退屈せずにどんどん読み進められるのは、やっぱり文章の力、作者の力なんだろう。
努力はね、裏切らない神様だ。努力した分、必ずご利益がある神様だ。だけどこの神様はのんびり屋で、ちょっと気まぐれだから、いつご利益があるかはわからない。だから神様を信じられなくなるときがある。でもちゃんと見てる。知ってる。

この本を読んで、やっぱり良かった。
来年の箱根駅伝が、今までとは大分違った気持ちで観戦できそうな、そんな気がしてくる。

人であるために走る あさのあつこ :文藝春秋 本の話 私はこう読んだ
県庁の星 (小学館)桂 望実県庁の星
(小学館)
桂 望実

ボーイズ・ビー (幻冬舎文庫)桂 望実ボーイズ・ビー
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