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『重力ピエロ』伊坂幸太郎 を読んで[2008-05-18]

2008-05-18

『重力ピエロ』伊坂幸太郎 を読んで


重力ピエロ (新潮文庫) 伊坂幸太郎重力ピエロ
(新潮文庫)
伊坂幸太郎


souiunogaii評価 ハート4つ

内容紹介
ルールは越えられる。世界だって変えられる。読書界を圧倒した記念碑的名作。文庫化にあたり改稿。

兄は泉水、2つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。

伊坂幸太郎さんの小説を初めて読みました。
読み終わって、衝撃を受けたというか、圧倒されたというか、ものすごい感動を覚えました。
「こんなに面白い小説を書く人がいたんだ」と、大げさな言い方ではなく、本当にそう感じたのです。
様々な面で、これまでに読んだことのない種類の小説家だと思います。
出会えてよかった。
伊坂幸太郎さんを勧めてくれたのは、会社の同期なんですが、彼にも心から感謝です。

私がこんなにも面白いと感じたのは、まず時間の不思議さ。
時系列的に順番に進んでいくのではなく、様々な時間軸が並行して走っていて、絶妙なタイミングで、別の時間にすっとジャンプする、その感覚が読んでいてたまらなく楽しかった。
こういう物語の構成のやり方があったんだ、と。
これほどまでに考え抜かれた物語を考えられる伊坂幸太郎さんの素晴らしい才能に、強く感動しました。
この一冊の本で、大ファンになってしまいました。

セリフの調子も、短くリズムの良い感じがとてもいいし、文章全体を見ても、文節のリズム感が最高に心地よくて、大好きです。

ストーリーは、連続放火事件、遺伝子、DNA、兄弟、レイプ、性、癌、死などの数多くの謎のピースが1つずつつながって組み合わさって、最後にパズルが完成する、という最高のミステリーで、それを過去・現在を行き来する素晴らしい時間構成でまとめてくれている、これほど面白いと感じた本を読むのは、本当に久しぶりでした。

「人間の行動のすべては遺伝子が決めるもので、運命は生まれつき決まっているのか?」というスケールの大きな問いかけに、この小説は、血のつながらない兄弟・親子の姿を通して、1つの答えを導かせてくれた気がします。
それは完璧な答えではないけれど、人間として生まれてきたことの意味まで考えたくなるような、ある種の希望を与えてくれる答えでした。
父はさらに春に向かって、こうつづけた。それは、私たち兄弟を救済する最高の台詞だった。

「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」

何でもない言葉だ。たわいもないやり取りだったのかもしれない。
けれど、私は動くこともできないでいた。

ラストに近い、この場面を読んだとき、私は感動して、思わず泣いてしまいそうになった。本当だ。

読めてよかった。こんな素敵な小説を書いてくれた伊坂幸太郎に、拍手だ。

『重力ピエロ』の映画化作品が森淳一監督で、2009年春に公開されるそうで、そちらも楽しみです。
主役の泉水を加瀬亮が、春を岡田将生、父は小日向文世、母は鈴木京香だそうです。(アスミック・エース配給)