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『オアシス』生田紗代 を読んで[2008-11-15]

2008-11-15

『オアシス』生田紗代 を読んで


オアシス (河出文庫)生田紗代オアシス
(河出文庫)
生田紗代


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
私が<出会った>青い自転車が盗まれた。
呆然自失の中、私の自転車を探す日々が始まる。
家事放棄の母と、その母にパラサイトされている姉、そして私。
女三人、奇妙な家族の行方は?
第40回文藝賞受賞作。

1981年生まれの生田紗代さんが、大学生のときに書いた作品です。
(ちなみに、先日読んだ、『黒冷水』と同じ、第40回文藝賞受賞作です。)

第40回文藝賞選評:河出書房新社「文藝」

コンビニでバイトをしている私(芽衣子・メー子)と、
OLをしている姉(サキちゃん)と、
家事一切を放棄し、何もしていない母と、
近所に住んでいる和美叔父さんと、
福岡に単身赴任している父と、
そんな人たちの、日々の生活を淡々と描いた、サラサラした物語。

メー子さんと、サキちゃんが会話するシーンの描き方が、とってもイイ。
普通の日常の中にある、ありふれた出来事と、
彼女たちの心情・心境と、言葉と、動作と、
一つひとつは何でもないことばかりなんだけれど、それらがつながって、
独特の雰囲気を作っている、っていうのかな。
おもわずクスッと笑ってしまう、そんな空気が心地よかった。

夫の単身赴任をきっかけに、家事一切を放棄し、軽いひきこもり生活を送る、
娘たちからは"粗大ゴミ"呼ばわりされる、
そんな母。
家事を放棄しながらも、家族を見捨てたわけではなく、娘に対しては、
掃除洗濯料理などさまざまな場面で母親的な言い方であれこれ注文をだす、
そんな母。

そうか、こういう家族の形もあるんだ、って。
母のことは決して嫌いではない。この世で一番愛しているけど、この世で一番憎い。
母親とはそういうものなんじゃないだろうか。少なくとも私はそうだし、それは全然矛盾していない。私は今でも母に甘えたいと思うのと同時に、このうすら馬鹿女と怒鳴りつけてやりたくなる。

とにかく、見えたもの、思ったことを次々に言葉にしてみた、そんな感じの表現がつづく文章で、それにコンビニの商品などの固有名詞の表現もストレートで、
それは、誰にもできそうで、しかし生田さんにしか書けない、そういものを感じさせる。

スタートもゴールもはっきりしないが、でも何か気持ちよくなる、そんな小説だ。
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