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『6TEEN シックスティーン』石田衣良 を読んで[2010-05-30]
『傷つきやすくなった世界で』石田衣良 を読んで[2010-02-13]
『シューカツ!』石田衣良 を読んで[2009-09-13]
『LAST[ラスト]』石田衣良 を読んで[2008-06-08]
『ブルータワー』石田衣良 を読んで[2008-05-31]

2010-05-30

『6TEEN シックスティーン』石田衣良 を読んで


6TEEN6TEEN シックスティーン
(新潮社)
石田衣良


souiunogaii評価 


内容紹介
腕の中の彼女のすべてを、受け止められると信じていた。
16歳――「永遠」の切なさを知る季節。

ダイ、ナオト、ジュン、テツロー――
あのベストセラー『4TEEN』(直木賞受賞)の少年たちが帰ってくる!
ぎこちない恋、初めての裏切り、仲間の死、少しだけリアルに感じられ始めた未来の自分……。
東京・月島を舞台に、16歳にしか訪れない一瞬の輝きを鮮やかに切り取った青春小説。
もくじ
おばけ長屋のばばあ / クラインの妖精 / ユウナの憂欝 / 携帯小説家に出会ったら / メトロガール / ウォーク・イン・ザ・プール / 秋の日のベンチ / 黒髪の魔女 / スイート・セクシー・シックスティーン / 16歳の別れ


『4TEEN フォーティーン』の続編です。
主人公の少年4人は16歳になっって、それぞれ別々の高校に通う1年生。
4人の成長を、1年間の季節の変化に乗せて描く、ザ・青春な物語だ。

中学生から高校生になって、少しだけ考え方が大人に近づき、自分の将来を意識し始めた彼らの成長ぶりが見られるのが、とっても面白い。

こいつらも大人になったな、と思う場面もあれば、逆に、こいつら全然変わらないな、と感じられる場面もあって、
いつまでたっても、バカな冗談を言い合いながら、しっかりと信頼と友情でつながっていられる仲間がいるって、とっても素敵なことだな、とこの4人をすごく羨ましく思ったりもする。

1つひとつの物語では、16歳ってことで女の子を女性として意識し始めた4人の心情が丁寧にリアルに描かれていて、
ああ、高校生の頃ってこうだったよな、なんて懐かしく思いながら読むことができて楽しかった。

ぼくたち四人と四台の自転車は、水音を背にして堤防のうえを軽やかに走りだした。対岸の街明かりが隅田川の水面で揺れている。



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4TEEN (新潮文庫)4TEEN フォーティーン
(新潮文庫)
石田衣良


souiunogaii評価 
2010-02-13

『傷つきやすくなった世界で』石田衣良 を読んで


傷つきやすくなった世界で (日経プレミアシリーズ 2)傷つきやすくなった世界で
(日経プレミアシリーズ)
石田衣良


souiunogaii評価 

内容紹介
格差社会、勝ち組負け組、ネットカフェ難民、少子化、サービス残業、いじめ――時代の風がどんなに冷え込んでも、明日はきっと大丈夫。
若い世代に向け、著者が優しく力強いメッセージを贈る。
「R25」の好評連載「空は、今日も、青いか?」をまとめたエッセイ集。

石田衣良さんのエッセイ集。

これまでに読んだ、『目覚めよと彼の呼ぶ声がする』『空は、今日も、青いか?』と同じく、今作も非常に面白かった。

「R25」の連載(2006年1月〜2008年2月)を一冊にまとめたものなので、若い男性向けの目線で書かれているのだけれど、テーマは実に多彩で、やっぱり石田衣良という人の感性はすごいなと思う。

不景気で、心も体も財布の中身も、みんな元気が無くなっているこの時代を生きる若者たちに、何とかして勇気と希望を与えようとくれる石田衣良という作家のカッコよさがたまらない。

『傷つきやすくなった世界で』日経プレミアシリーズ特設ページ

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2009-09-13

『シューカツ!』石田衣良 を読んで


シューカツ!シューカツ!
(文藝春秋)
石田衣良


souiunogaii評価 

内容紹介(文藝春秋)
マスコミに何としても就職するぞ!

元気で真面目な水越千晴は、鷲田大学3年生。このたび、学内の仲間たちと「シューカツ・プロジェクトチーム」を結成した。夢のマスコミ就職に向けて、目標は全員合格。
クールなリーダー・富塚圭、準ミスの佐々木恵理子、女性誌志望の犬山伸子、理論派のメガネ男子・倉本比呂氏、体育会柔道部の小柳真一郎、そしてナンパなテニスサークル副部長・菊田良弘。読めば誰もがもう1度就職活動をしたくなる(?)、ど真ん中の青春小説です。
もくじ
嵐のスタート
働くって、なに?
ワイドショーに、ようこそ
わたしに、エントリー
よろしく、先輩
シューカツ戦線、異状あり
エピローグ

久しぶりに読んだ石田衣良の作品は、大学生の就職活動のお話。
物語の舞台は数年前の「学生側の超売り手市場」と言われてい頃なので、今と比べると社会情勢は若干違うんだろうけれど、それでも現役の大学3年生が読んでも十分に共感できる部分がたくさんあると思う。

主人公の千春は、長野出身で都内の私立大学に通い、ファミレスでバイトしながら独り暮らしをする元気な明るい女の子。
そんな彼女が、倍率数百倍の出版社やテレビ局への就職を目指して、同じ大学の仲間たちと奮闘する。

物語は、大学3年生の春から始まる。
グループディスカッションの練習、テレビ局のインターン、エントリーシート合宿、OBOG訪問、そして筆記試験、一次面接、二次面接、……。
千春の就職活動の様子を、千春自身の目線で、季節の変化とともに描かれていく。

働くって何?みたいな漠然とした疑問を抱きながらも、少しずつ「私、この仕事がやりたい。この会社で働きたい」って気持ちを見つけて確かなものにしていく、そんな千春の姿が、とっても一生懸命で、読んでいる私も応援したくなる。
頑張れ!、て。

数々のアルバイトを経験し、転職を繰り返した後に、小説家として成功した石田衣良さんの書く物語だからこそ、伝わってくるメッセージには何だか確かな重みがある気がする。
「不安で心が折れそうになる、でも自分に負けたくない」
っていうのは、去年のマイナビのCMで使われてたフレーズだけれど、
この物語の主人公、千春にぴったりの言葉だと思う。

2011年の就職を目指して頑張る大学3年生の皆さんにも、ぜひおススメの小説です。

石田衣良『シューカツ!』特設サイト
マイナビ2011 - 学生向け就職情報サイト

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2008-06-08

『LAST[ラスト]』石田衣良 を読んで


LAST (ラスト) (講談社文庫)石田衣良LAST [ラスト]
(講談社文庫)
石田衣良


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
もう、あとがない!でも明けない夜はない。

“現実”に押しつぶされそうになった7人の、予想もできない反撃!
外国人窃盗団に雇われ、通帳から現金をおろす出し子の男が最後に打った手は(「ラストドロー」)。
住宅ローンに押し潰されそうな主婦が選んだ最後の仕事とは(「ラストジョブ」)。
リアルで凶暴な世界に、ぎりぎりまで追い詰められた者たちが、最後に反撃する一瞬の閃光を描く。明日への予感に震える新境地の連作集。

もくじ
ラストライド
ラストジョブ
ラストコール
ラストホーム
ラストドロー
ラストシュート
ラストバトル


石田衣良が書く、「人生の終わり→再出発」をテーマにした短編集。
爽やかさはあんまり無い。どちらかといえば、暗く沈んだ重たい物語。
7作の中で一番好きなのは、「ラストホーム」かな。
職を失って、アパートを追い出され、上野公園でホームレスの仲間入りをして、雑誌集めを始める男の物語。
クリスマスシーズンの商店街で、彼がなけなしのお金で肉屋のローストチキンを買うシーンがあるんだけど、それが何とも言えないくらい、すごく美味しそうな表現で描かれている。
1個350円のチキンを、しばらく迷った後に、我慢できなくなって買ってしまい、涙を流しながら食べるそのシーンが、何故か非常に印象に残ったのだ。
お金があって、好きなものが食べられるということが、どんなに幸福なことか、あらためて強く実感させられた。

何でもない毎日をただ平凡に過ごしながらも、お金の心配をせずに暮らせることが、人生においてどれほど重要な基本要素なのかを感じる。

2008-05-31

『ブルータワー』石田衣良 を読んで


ブルータワー (徳間文庫)石田衣良ブルータワー
(徳間文庫)
石田衣良


souiunogaii評価 ハート4つ

内容紹介
悪性の脳腫瘍で、死を宣告された男が200年後の世界に意識だけスリップした。地表は殺人ウイルスが蔓延し、人々は高さ2キロメートルの塔に閉じこめられ、完璧な階層社会を形成している未来へ。「…この物語は平凡な一人の男が、天を衝く塔を崩壊から救う。『ブルータワー』へようこそ! 夢みる力が決して失われる事のない世界へ」

石田衣良が9.11テロで崩壊した世界貿易センタービルに衝撃を受けて、書き上げた初のSF小説です。
400ページを超える結構な長編です。でも本当に面白くって、寝る間を惜しんでどんどん先へと読み進んで、一気にラストまで読んでしまう。
あらためて、石田衣良さんの作家としての力を感じさせられます。

大きな戦争の後、恐怖の生物兵器「黄魔」によって地上に住むことができなくなり、交配した200年後の未来の世界。
人類は、高さ2キロメートルの超高層タワーのなかで何とか生き延びています。
タワーの下層には貧困に苦しむ人々がひしめき合い、タワーの上層には、富裕な支配者階級が優雅に暮らす。ひどすぎる格差社会。
そんな未来に、主人公はタイムスリップし、伝説の救世主の役割を与えられてしまう。
タワーの格差問題を解決し、人々を導き、戦争を終わらせ、生物兵器「黄魔」に戦いを挑みます。人類の存亡をかけて。

実に壮大なスケールの世界観で描かれる未来の物語。
そこには、現在に既に存在している様々な問題に対する危機感を強く呼び起こすものがありました。
果てしなく発達した科学テクノロジー。人類を滅ぼそうとする生物兵器・殺人ウィルス。解決の糸口を見出せないまま続く、戦争・紛争そしてテロ。

SFという新たなジャンルでも、石田衣良ならではの街の描写力は変わりません。
本作の舞台は新宿。200年後の荒れ果てた新宿の町は、現在と上手くリンクさせた表現によって、何ともいえないリアルさを持っています。

そして何より、この物語を感動的なものにしているのは、主人公の心の動きの表現。
意図せずして救世主としての役割を負うことになった彼は、タワーの上下の戦争の中で、自身の居場所を探してさまよう中で、何度も自爆テロや戦闘を目の当たりにして、何人もの人々の死を目にします。
命をかけて戦争を終わらせるために闘おうと決意する彼は、一人で活躍するヒーローではありません。周囲の様々な立場の人々と互いに協力し、正しいと信じる道を進んでいく、そういう感じです。
そんな彼の心情描写が、表現豊かな文章からあふれるように伝わってきます。

最後に人類を救うのは、科学テクノロジーでもコンピュータでもない。
もっと大切なものがある。そんなメッセージを感じさせてくれる素敵な物語でした。
スター・キング (創元SF文庫)エドモンド・ハミルトン
スター・キング
(創元SF文庫)
エドモンド・ハミルトン