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『東京奇譚集』村上春樹 を読んで[2008-02-24]
『現代語訳 舞姫』森鴎外 井上靖(訳) を読んで[2007-12-20]
プルーストの『失われた時を求めて』のコミックが日本語版に。[2007-11-11]
『美しい時間 冬の花火』村上龍 を読んで[2007-10-07]
『でかい月だな』水森サトリ を読んで[2007-09-10]

2008-02-24

東京奇譚集 (新潮文庫)村上春樹
東京奇譚集 (新潮文庫)
村上春樹

内容紹介
どうしてこんなことが起こるのだろう。都市の隙間のあやしく底知れぬ世界へと導く5つの物語。
肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却……。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。
孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。
サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、
見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。
もくじ
偶然の旅人
ハナレイ・ベイ
どこであれそれが見つかりそうな場所で
日々移動する腎臓のかたちをした石
品川猿

村上春樹の小説を読むのは、実はこの本が初めて。
一番に感じたのは、「スラスラ読める感じがたまらなく心地良い」ということ。
あっさりしているのにこくがある、みたいな。
5つの短編はどれも面白かったけれど、特に「偶然の旅人」が気に入った。導入部が上手いなと思った。
2007-12-20

現代語訳 舞姫 (ちくま文庫)森 鴎外(作), 井上 靖(訳)
現代語訳 舞姫 (ちくま文庫)
森 鴎外(作), 井上 靖(訳)

内容紹介
今では「古典」となりつつある鴎外の名高い短編小説『舞姫』を井上靖の名訳で味わう。
訳文のほか、原文・脚注・解説を付して若い読者でも無理なく読める工夫を凝らした。また資料篇として、ベルリン留学時代の鴎外や「舞姫」エリスの謎についてなど、作品の背景を探る代表的文献を紹介。
読みごたえのある名作をさらに深く味わえる一冊。

森鴎外の『舞姫』は、高校の現代文の教科書に全文が載っていた。文語で書かれたその短い小説を、確かに読んだと言う記憶はあるのだけれど、高校3年の私はどんな感想を持ったのかは、あまり覚えいていない。

今回、井上靖による現代語訳が原文とセットになった文庫本を見つけたので、6年ぶりくらいに再びこの『舞姫』を読んでみることにしたのだ。

原文と現代語訳のそれぞれの冒頭の部分をちょっと並べてみると、こんな感じだ。
石炭はもう積み終えてしまった。二等室のテーブルのある辺りはたいへん静かで、白熱電燈の光の晴れがましいのも無駄なことに思われる。今宵は夜毎ここに集まってくる骨牌仲間も、みな陸の客館に泊まって、船に残っているのは私一人であるからである。
井上靖 現代語訳

石炭をばはや積み果てつ。中等室の卓のほとりはいと静かにて、熾熱灯の光りの晴れがましきもいたづらなり。今宵は夜ごとにここに集い来る骨牌仲間もホテルに宿りて、舟に残れるは余一人のみなれば。
原文

今回は私は先に現代語訳を読んで、その後に原文を読んだのだけれど、言葉の置き換えが巧みで、明治の時代に書かれた文章のクウキっていうかニオイみたいなものが損なわれていない気がするのは、よくできてるなと感心させられる。

将来の成功を保証されたエリート官僚候補の豊太郎が主人公。
ベルリン留学中に一人のドイツ人女性に恋をして、そこから人生の迷路にはまっていく。
そして彼は決断を迫られる。
将来を捨てて恋人をとるか、それとも彼女を捨てて帰国し出世する道をとるか。

高校生の私は、『舞姫』を読んで、たぶん次のようなことを感じていたのだろう、と思い浮かべてみる。

やっぱり、人間は計算して最終的に楽なほうを選んでしまう。
たいていの場合は一番大切なのは自分自身で、都合のいい言い訳を用意して、周囲の環境や他人を悪者にして、自分の中の悪を隠そうとする。
そして、いつか自分の選択は実はミスだったのではないかと思い悩んだりする。
あのとき、もし違った道を選んでいたとしたなら、今とは別の世界にいたかもしれない、なんて考えたりする。
それは明治を生きた人も、平成を生きる人も、変わらない。

おそらく数年後にまた読み返してみても、いろんなことを考えさせるヒントをくれる、深い深い小説だと思う。
もくじ
・現代語訳 舞姫 井上靖訳
・解説 山崎一穎
・舞姫(原文)
資料篇
・資料・エリス 星新一
・兄の帰朝 小金井喜美子
・BERLIN 1888 前田愛
2007-11-11

失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレーマルセル・プルースト(著)ステファヌ・ウエ(翻案・画), 中条 省平(訳)
失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレー
マルセル・プルースト(著)
ステファヌ・ウエ(翻案・画), 中条 省平(翻訳・解説)

今日のSANKEI EXPRESSを見て驚いた。
プルーストの『失われた時を求めて』のコミックの日本語版が11/20に発売されるという。
しかも初版5000部は予約だけで完売だとか。
世界文学史上不朽の名作『失われた時を求めて』。
あまりにも有名なプルーストの大長編小説を、完全コミック化!
古典の冒涜か? 名作の新解釈か? 新しい読書体験への招待か?
フランス本国でも評価の分かれた問題作!
白夜書房HPより

「難解で読まれない名作」漫画で予約完売 :iza イザ!


集英社文庫版で全13巻、抄訳版でも全3巻の長編。
まずは、コミックで挑戦してみようかな。
完訳版 失われた時を求めて (1) (集英社文庫)マルセル・プルースト(著), 鈴木 道彦(訳)
完訳版 失われた時を求めて (1) (集英社文庫)
マルセル・プルースト(著), 鈴木 道彦(訳)

抄訳版 失われた時を求めて (1)  (集英社文庫)マルセル プルースト(著), 鈴木 道彦(訳)
抄訳版 失われた時を求めて (1) (集英社文庫)
マルセル・プルースト(著), 鈴木 道彦(訳)
2007-10-07

美しい時間 (KKベストセラーズ) 村上 龍, 小池 真理子
美しい時間 (KKベストセラーズ)
村上 龍, 小池 真理子

花火が打ち上げられるたびに、妻の肩が震えるのが伝わってくる。冬の空気の冷たさがわたしたちの身体と心の輪郭をくっきりと際立たせている?。温かな眼差しで豊かな人生の味わいと愛の深奥を描いた、極上のラヴ&ロマン

セレブの世界というか、優雅な、どこまでも優雅な小説。

村上龍は、テレビ東京の「カンブリア宮殿」で、ゲストとして登場する企業の社長たちに、毎回同じ質問をする。
その質問は、
「成功した人生、というのを定義するのは難しいですが、これだけは外せないという条件を一つ教えてください」
というものだ。

父の残してくれた財産によって、お金には不自由ない生活を送りながら、高級ステッキ店を営む主人公。
ある日、知人の投資会社社長がモナコで1億円をカジノで勝って手に入れながら自殺した、というニュースを見る。

豊かで、平穏で、成功者といえる人生。

はたして成功した人生とは何なのかを考えさせられる。

花火の写真が、良い。

レストランでの食事のシーンが、良い。
2007-09-10

でかい月だな (集英社)水森サトリ
でかい月だな (集英社)
水森サトリ

「でかい月だな」というタイトルだけでは、一体どんな物語なのか、なかなか想像できない。
でもなんとなく表紙を見て、「この本は良い」そんな予感を感じた気がしたんです。
その結果、とっても良い小説でした。
青春、爽やか、ちょっぴりSF、みたいな要素が入っていて、文章も好感の持てるもので、この本を手にとってよかった、と思いました。
あらすじ
ある満月の夜、友人に突然崖から蹴り落とされた中学生の「ぼく」。
一命はとりとめるが、大好きなバスケットボールができない身体になってしまう。加害者の友人は姿を消し、入れ替わるように「ぼく」の前にあらわれたのは、インチキ錬金術師、邪眼を持つオカルト少女、そして「やつら」。そのうちに、世界は奇妙な「やさしさ」につつまれてゆき、やがて、地球のみんながひとつに溶け合おうとする夜がくる…。

一人称の「ぼく」が主人公なんですが、読んでいる私もその少年の目線で物語の世界を見ているような気になれました。
ユキ、中川、かごめ、3人のキャラがとっても好きになりました。

物語の前半は非常にゆっくりな展開で、実は本文を3分の1くらい読み進めても、この物語の正体が見えませんでした。
現実と夢が入り混じったなんとも言えないもやもやした感じ、この後一体何が起こるんだ!っていう期待と少しのイライラとを抱きながら読むことになりますが、文章が良いんで、退屈はしません。

脚の後遺症のせいで、大好きなバスケットを取り上げられ、退屈な毎日を送りながら、なぜ綾瀬は自分を蹴ったのかに答えが出されないことに悩むユキ。
理科室で植物の声を聴く機械を作り、周囲の人間とは距離を置いているが、ユキとは友だちであり、苦しんでいるユキを助けてくれる中川。
眼帯をし、教室で孤立しているが、一人だけ話しかけてくるユキをも無視し続け、ユキに「世界でいちばんアンタが嫌い」という かごめ。
中川京一にしろ横山かごめにしろ、どこか辺境の地に旗を立て、毅然と立っているように思う。その立ち位置からはどんな景色が見えるんだろう。そこは荒涼とした世界だろうか、それとも、とても美しい場所なのだろうか。
ぼくはと言えば、自分の立つべき位置がわからず、どこでもない場所にただぼんやりと浮かんでいるみたいだった。そしてぼくの目に映る世界はピースの欠けこぼれたジグソーパズルの絵のように、いくつかが不足していた。
ぼくの埋めるべきピースを握ったまま、どこかに消えてしまったひとがいる。
ぼくは彼を待っていた。

そしていよいよ後半の3分の1くらいから、徐々に加速していき、それまでもやもやしていたパズルのピースが組み合わさり、最後にいろんなことが分かってくるんです。オブラートみたいに薄いSFが物語全体を包んでいきます。「ぼく」の目で世界を見ながら、「そうだったんだ!そうなんだよ!」そんな感じを楽しみながら読むことができました。

中学生の頃の自分はどんな人間だったかな、なんて思い返しながらいろんなことを考えました。
親、兄弟、クラスメート。いろんな悩み・不安を抱えながら、それでもどうにかして今の苦しい状況を変えていこうとする、そんな中学生の青春を描いた、読み終わったあとの爽やか感がなんとも言えない、青春小説です。
生きてりゃこの先まだ悪いことがいっぱいある。――だから生きよう


水森サトリは、この小説で第19回小説すばる新人賞を受賞しています。
素敵な新人作家に出会えたと嬉しい気持ちになりました。
「次回作もぜひ読みたい」私を水森サトリのファンにさせてくれる、「でかい月だな」はそんな本になりました。