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『DSJ―消える街―』ふかわ りょう を読んで[2007-12-26]
『老人と海』ヘミングウェイ を読んで[2007-12-21]
『コップとコッペパンとペン』福永信 を読んで[2007-11-17]
『百人の王様 わがまま王』原田宗典 を読んで[2007-11-04]
『大人ドロップ』樋口直哉 を読んで[2007-10-10]

2007-12-26

DSJ―消える街― (宝島社)ふかわ りょう
DSJ―消える街― (宝島社)
ふかわ りょう

内容紹介
メンズファッション誌・smartで約1年間連載されたふかわりょう初小説が、書き下ろしの完結編を加え単行本化!
物語の舞台はどこにでもあるような平凡な街。その街から、ある日を境に少しずつ何かが消えていく……。
魅力的な登場人物、テンポのよい会話、そして不思議な余韻と後を引くストーリー展開に、連載時にもハマる人続出!!
一話完結だった連載『消える街』に加え、連載で明かされなかった「街からモノが消された理由」、そして「消した正体」がついに明かされる、書き下ろしの『DSJ』を収録。

芸人ふかわりょうの小説デビュー作である。
最初は、「え、ふかわりょうって小説も書くの?」と驚き、ほぼ興味本位100%でこの本を手に取ったのだけれど、読み終わってまた驚いた。
ふかわりょうにこんな才能があったとは、まったく感心するばかりだ。

作者が芸人であることを忘れて、新人作家の作品として読んで十分に楽しめるものに仕上がっている。これはすごい。

『DSJ―消える街―』というタイトルからも想像できるかもしれないが、内容は現代SF小説だ。
オムニバス的に描かれたいくつもの物語を、パズルのピースのようにつなぎ合わせていき、最後に用意されているひとつのゴールにたどりつく。
そういう構成を、第1章と第2章とで2回繰り返すのが面白い。
第1章で物語りは一旦は結末を迎えつつも、多くの謎を残している。
それを第2章で全て解き明かしていく。

主人公が誰なのか、読みはじめでははっきりと分からないほど、登場人物は多い。
そして文章の90%以上は会話文で書かれている。
会話文だけなのに、人物のキャラクターをそれぞれしっかりと描き上げ、情景までも表現している。
こういうあたりは、やはり日頃しゃべることが主な表現方法である芸人ふかわりょうならではの書き方なのかもしれない。
「おじさんって学生?」
「そう、おじさんじゃないけど」
「大学生?」
「うん」
「え、どこどこ?」
「東京大学」
その言葉を聞いたとたん、彼女の目の色が変わった。
「えっ?東京大学って、あの東京大学?!」
「そうだけど」
「東京の大学とかっていう寒いやつじゃなくて、ほんとに東京大学?!」
「そんなに驚く?」
「おじさん、すごいじゃん!アタマいいんじゃん!」
「おじさんじゃないんだけど……」
照れを隠すように、彼はコーヒーを飲んだ。
「私そういう人待ってたの!なんかそんな気はしてたんだ、貧弱な感じがさ。ねぇ、家庭教師やってよ!」

200ページもある小説だけれど、ほぼ一息であっという間に読み終えてしまった。
とにかく面白かった。

ふかわりょうのファンの人はもちろん、そうでない人もきっと楽しめると思う。
ぜひ、一読をおススメしたい一冊。

次回作にも期待したい。

ふかわりょう公式サイト Happy Note
無駄な哲学 (ゴマブックス)ふかわ りょう
無駄な哲学 (ゴマブックス)
ふかわ りょう
2007-12-21

老人と海ヘミングウェイ(作), 福田 恆存(訳)
老人と海 (新潮文庫)
ヘミングウェイ(作), 福田 恆存(訳)

内容紹介
キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく……。
徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。

中学生のときに読んで、大きなショックを受けたヘミングウェイの『老人と海』。
あれから10年たった今、もう一度この作品を読み返してみたくなった。

そのきっかけは、最近テレビで「乱獲による漁業資源の枯渇」みたいなニュースを見て、アメリカ人の老いた元漁師が、魚の獲れなくなった寂しい港を背にして「昔は良かった」なんて語っているのを見たから。
それを見て、小説の主人公サンチャゴの姿が連想されて、そうだまたあの小説を読もう、と思ったのだ。
誰にも助けを求めることができないはるか遠い沖の海で、たった一人で綱一本で巨大カジキマグロと闘い、何匹ものサメと闘った、あの勇敢で偉大で孤独な漁師に、もう一度会いたいと思った。

ほとんど主人公サンチャゴ一人で展開されていく物語。
舟の各部分、漁の道具類、舟の上から老人が見た光景、魚の姿、そして老人の手や足といったひとつひとつの部位など、ありとあらゆることが細部まできっちりと描き上げられたその文章には力がこもってる。
まるで手にとって見るかのようにその質感まで伝わってくるような気までする。

そして、物語世界をぐっと広げているのは、老人の頭の中の動き・考えていることの描写。
これもまたきっちりと丁寧に描いてある。
老人の思ったことは、すべて声になって私に聞こえてくる。
老人は海の上で魚と対峙しながら、ひたすらいろいろなことに考えを巡らせる。
昔を思い出す。
良いことを想像し、次の瞬間には悪いことを想像する。
自問自答を繰り返す。魚を殺し自分が生きるということ、命のこと。
いいことは長続きしないものだ、とかれは思った。これが夢だったらよかったのに、いまとなってはそう思う、魚なんか釣れない方がよかった。そしてひとりベッドで新聞紙の上に寝ころがっていたほうがずっとましだった。

読み終わった後には、やっぱり胸にぐっとくるものがあった。
THE OLDMAN AND THE SEA (講談社英語文庫)HEMINGWAY
THE OLDMAN AND THE SEA (講談社英語文庫)
HEMINGWAY
2007-11-17

コップとコッペパンとペン (河出書房新社)福永 信
コップとコッペパンとペン (河出書房新社)
福永 信

内容紹介
一行先も予測できない!
母から娘へ――娘から息子へ……
赤い糸がつなぐ現代家族の非人情物語を描いた表題作を含む、短篇3本に書き下ろしを加えた著者6年ぶりの大暴走小説集。阿部和重氏推薦。

もくじ
コップとコッペパンとペン
座長と道化の登場
人情の帯
2

いやいや、これはどんな言葉で表現したらいいのか、
そう「まるで場面が次々に移り変わり、あれ?が連続する、まさにそんな夢を見ているような」そんな感覚に捕まってしまった。

一読しただけでは、―いや、繰り返し読んだとしても―意味を把握できないというか、
蜃気楼のように、見えているのに手で触れることができない、というか、
実に不思議な世界観だ。しかし、私はこういうの、嫌いじゃない。

文体は挿入文(英語の論説文を日本語に訳したような)が多く、登場人物の描き方も、セリフも、ストーリーも、今までに私が読んだことのない種類のものだった。

一行一行のつながりが、散文という世界で、どこまで飛ぶと、意味まで飛んじゃうか、意味まで飛んだとして、それはどんな状態か、どんな光景が見えるのかというのを自分で試しながら書いてったものですね。みずたまりを飛び越えたその足で、次に、ビルとビルのあいだを飛んでやろうと、文字通りの無謀な飛躍をもとめるみたいなものです。ほんとにそんなことすれば死んじゃうわけですが、言葉の上でなら、みずたまりを飛ぶことができればビルとビルのあいだも飛ぶことができる。
福永信『コップとコッペパンとペン』刊行記念特別インタビューより

この本の魅力を分かってもらうには、もう実際に読んでいただく他に方法がない。
2007-11-04

百人の王様 わがまま王 (岩波書店)原田 宗典
百人の王様 わがまま王 (岩波書店)
原田 宗典

内容紹介
奇才・原田の待望久しい書き下ろしは、すべての挿画を自ら描いた、王様が主人公の2つの世界。
「いずれもこうして本にしてみると、単なる子供向けの童話ではなく、かつて子供だった大人向けの寓話、といった仕上りになったようです。どうぞ、まず大人の貴方からお楽しみ下さい」
原田ワールドの新しい地平がここから広がる。

大人も読める絵本。たまには、こういう本も良いなと。

「百人の王様」は、国民全員が王様というヘンテコな国に、一人の旅人が来て…。
「わがまま王」は、ありとあらゆる全てを自分のものにしようとした王の顛末。

両方とも、最初の数ページでラストが予感できる簡単なストーリーなんだけれど、でも抱えてるテーマは深い。

作者自身が描いたという挿絵も、また良い。
(小さい子供が見たら泣きそうな絵だけど)

はらだしき村(原田宗典 公式サイト)
2007-10-10

大人ドロップ (小学館)樋口 直哉
大人ドロップ (小学館)
樋口 直哉

いかにもさわやかな青春小説です、という感じの表紙が気に入って、「これは読まなきゃ」と思って手に取ったのが、この「大人ドロップ」。

そしてその内容は、私が表紙を見て想像というか期待した通りの、みずみずしい高校生の青春の物語でした。
派手な展開はないんだけれど、「こいつらなんだか良いな」と感じれる登場人物たち。
こうこう小説、私は好きです。
内容紹介
高校生の夏。ぼくは親友のハジメに頼まれて、彼と、彼が片思いをしているクラスメートの入江さんのデートをこっそりとセッティングする。しかし、そのことが原因でぼくは入江さんをカンカンに怒らせてしまう。そして、ちゃんと仲直りできないうちに、入江さんは突然、遠くへ引っ越して行ってしまう。自分でもその気持ちが恋なのかどうかよく分からなかったけれど、入江さんのことが気になっていたぼくは、勇気をふりしぼって彼女に手紙を書くが――。
焦ったり、悩んだり、ドキドキしたり。コドモ以上、オトナ未満のぼくらが過ごした、もどかしいあの夏。大人になるって、どういうこと?
芥川賞候補作「さよならアメリカ」の新鋭が描く、みずみずしい青春物語。

特に主人公の「ぼく」が良い。
(表紙イラストのガードレールに腰掛けてる少年)
セリフと心の声とで、内面の動き・変化がよく伝わってくる。悩みとか葛藤とか迷いとか。
高校生の男子って、こうなんだよね。なんて共感しながら読めたのは、高校生のときの自分と、この主人公とがどこか似ていてたからかもしれない。
とにかく、主人公として魅力ある少年だ。

それに、「ぼく」の周りに登場するメンバーたちのキャラクターもまた良い。

ハジメ。(表紙イラストの眼鏡の少年)
ぼくの唯一の親友。女の子と話すのが苦手。うんちく好き。

入江さん。(表紙イラストの真ん中の女の子)
転校を繰り返してきた彼女は、どこか不思議な雰囲気を持つ。

ハル。ぼくとも入江さんとも仲がよい。明るい女の子。ぼくも女の子と話すのが苦手などだが、ハルとだけは普通にしゃべれる。

そんな4人の高校生の夏休みの物語。
その頃、ぼくは高校生で、大人でも子供でもない中途半端な地点にいた。

夏休みに起こる出来事を通して、4人はそれぞれ「大人になるとは?」という問題に自分なりに向き合って、そしてほんの少しずつ成長していくように見える。

印象的なシーンはいくつもあるけど、特に私が気に入っているのは、ぼくとハジメの2人が夜の運動場で話すシーン。
その穴をくぐり抜けると、誰もいない運動場に夜空が広がって月が見えていた。月明かりは思ったよりもずっと強く、視界が暗くて困るということはなかった。空を眺めるのは本当に久しぶりだった。
(中略)
「べつにいいじゃないか。だって俺が悪いんだからさ。そいで俺、彼女に告白しようと思ったわけ」
「バカだな。そんなことしてもなんにもならないで断られて終わりだろ」
打ち明けてしまったら後戻りはもうできない。そんなことをしてしまったら彼女がどこかぼく達の知らない場所に行ってしまうかもしれないじゃないかと腹が立った。

大人になるって一体どういうことなんだろう?
子供と大人との違い・境界線ってどこにあるんだろう?

高校を卒業して、あるいは大学を卒業して、あるいは社会人になって。
人はいつから大人になったといえるんだろうか。

たぶん、それは大人になってしまった人たちにとっても永遠の問題なのかもしれない。

そんなことを登場人物たちと一緒に考えながら、読んでいく、そんな小説だ。
「大人になるための魔法のドロップだから、大人ドロップ。それをあなたは食べ損ねたから大人になれないって、ずっと思っているわけね?」
「たぶんそうだと思う。そういう小さい頃の記憶とかトラウマとかって結構、後まで尾を引くものなんだよな。つまらないことに」
「ねぇ私も今、あなたから貰ったドロップをもう一粒食べたら、すぐ大人になれるかしら?」

高校生の男女だからこその、互いがつかずはなれずの距離を保ってるというか、友達以上恋人未満みたいな微妙な関係が、上手く描かれている。

世界が似ているもので私が思いつくのは、例えばアニメ映画「時をかける少女」とか、石川寛監督の映画「好きだ、」とかかな。

この本「大人ドロップ」と私とをつないでくれるきっかけになった素敵な表紙イラストを描いてくれた、浅野いにお さんに感謝。
さよならアメリカ (講談社)樋口 直哉
さよならアメリカ (講談社)
樋口 直哉

月とアルマジロ (講談社)樋口 直哉
月とアルマジロ (講談社)
樋口 直哉

ソラニン (1) (小学館ヤングサンデーコミックス)浅野 いにお
ソラニン (1) (小学館ヤングサンデーコミックス)
浅野 いにお

時をかける少女 通常版 DVD 監督: 細田守
時をかける少女 通常版 DVD
監督: 細田守

好きだ、 DVD出演:宮崎あおい, 監督:石川寛
好きだ、 DVD
出演:宮崎あおい, 監督:石川寛