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『ハル、ハル、ハル』古川日出男 を読んで[2011-03-22]
『ぼくらのひみつ』藤谷治 を読んで[2010-12-12]
『トーキョー・クロスロード』濱野京子 を読んで[2010-08-19]
『ボーダー&レス』藤代泉 を読んで[2010-01-24]
『人生最高の10のできごと』アディーナ・ハルパーン を読んで[2009-11-15]

2011-03-22

『ハル、ハル、ハル』古川日出男 を読んで


ハル、ハル、ハル (河出文庫)ハル、ハル、ハル
(河出文庫)
古川日出男


souiunogaii評価 

内容紹介
この物語は全部の物語の続編だ」
――親に捨てられ、行き場を失った少年と家出少女、リストラされた中年男。
世間からはみ出してしまった3人のハルが世界を疾走する。
乱暴で純粋な人間たちの圧倒的な"いま"を描き、話題沸騰となった著者代表作。
表題作に加え、「スローモーション」「8ドッグス」を収録。


「ハル、ハル、ハル」の世界は、次ような一文で始まる。
この物語はきみが読んできた全部の物語の続編だ。

読んでいる時の、あの感じ。
読み終えた後の、あの感じ。
とにかく、衝撃的だった。何もかもが。
"言葉"というものが生み出すチカラ、そういうものがこの物語から伝わってきた。
すごい。そう思った。

題名となっているハルとは、この物語の3人の登場人物だ。

親に捨てられた少年・春臣、13歳。
家でした女子高生・三葉瑠、16歳。
タクシー運転手の中年男・原田悟、41歳。

この3人の、奇妙なロード小説。

一つひとつのフレーズの選び方、つなぎ方がとても面白いし、
多様される太字の効果も、上手い。

冒頭からラストまで、全力疾走の感じが、読んでいてすごく快感。

古川日出男、癖になりそうな作家に出逢ってしまったと思う。

「文学はテロだ!そしてこの小説は、天才・古川日出男が仕掛けた恐るべき時限爆弾だ」
太田光(爆笑問題)


「とにかくこの作品が大好きです。読むとすごくテンションがあがって、トリップしちゃう感じ!」
成海璃子


『ハル、ハル、ハル』刊行記念特設サイト:河出書房新社

ハル、ハル、ハル [著]古川日出男 マジやばいっすよ、この小説は:asahi.com書評

2010-12-12

『ぼくらのひみつ』藤谷治 を読んで


ぼくらのひみつ (想像力の文学)ぼくらのひみつ
(想像力の文学 早川書房)
藤谷治


souiunogaii評価 


本が好き!より献本。

内容紹介
ベストセラー『船に乗れ!』の著者が贈るゆるやかな青春小説
こんなこと信じてもらえるだろうか。ぼくの時間は2001年10月12日金曜日の午前11時31分で止まってる。喫茶店でコーヒーを飲む。部屋に戻り昼寝をする。起き上がってぼーっとする、文章を書く、顔を洗う、町を歩く、これだけしてもずっと11時31分。
そんなとき京野今日子と出逢ったから、僕のせいで彼女も11時31分にとどまることになってしまった。
やがてぼくらは思い立って、ある計画を考えるのだけど……
止まっているこの時から、ぼくらはゆっくり歩き出す。
スローモーションの新・青春小説。


とっても面白かった!

藤谷治さんの作品を読むのはこれが初めてなんだけど、この一冊ですっかりファンになってしまうくらい、とても楽しませてもらった。


主人公の「ぼく」がおかれてしまった奇妙な状況、それがこの物語のすべてだ。
時間の流れが止まってしまった。
その「止まっている」という現象が何とも不思議なのだ。
これはもう、実際に読んでもらう他になかなか理解してもらうのが難しいのだけど、
とにかく不思議、そう表現するしかない。

そして、その不思議な世界を描くのに、主人公が一人称で綴る「ノート」を読者が読んでいるという形式を用いているのが、非常に巧みだ。

もくじ
ノートI シチュエーション
ノートII 発端
ノートIII 金銭
ノートIV ミドリ
ノートV 京野今日子(1)
ノートVI 京野今日子(2)
ノートVII 情勢論
ノートVIII 哲学
ノートIX 哲学対話
ノートX 旅立ちのまえ
ノートXI 旅(1)
ノートXII 旅(2)
ノートXIII 旅(3)
ノートXIV ゆるいシステム
ノートXV チェス
ノートXVI 筆談
ノートXVII


物語の進み方は、非常にゆっくりで、一体この先どうなるんだろう、という読者の思いに反して、主人公のおかれた時間が止まっているという状況は全く変わることがない。
途中少しじれったく感じたころに、絶妙なタイミングで、彼女(京野今日子)が現れ、そして彼(ぼく)は、自ら何かを変えようと行動し始める。

いたるところに引用される、ヴァジニア・ウルフやカポーティの小説の一節が、
これまた不思議な効果を引き出していて、物語の世界観を作っている。


そこからラストまでの展開、物語が徐々に加速していく感じが、読んでいてとても興奮した。
そして、あの超衝撃的なラストには、もう感動して言葉が出ない。
それまで気になっていた謎を、一気に答えに導いてくれる、あの最後の一文。
作者がこの小説にこめたパワーが解き放たれた瞬間のあの衝撃は、しばらく忘れられない。




冷血 (新潮文庫)冷血
(新潮文庫)
トルーマン・カポーティ


2010-08-19

『トーキョー・クロスロード』濱野京子 を読んで


トーキョー・クロスロード (ポプラ文庫ピュアフル)トーキョー・クロスロード
(ポプラ文庫ピュアフル)
濱野京子


souiunogaii評価 

内容紹介<作品によせて・新海 誠>別人に変装して、ダーツにあたった山手線の駅で降りてみる。これが休日の栞の密かな趣味。そこで出会ったかつての同級生、耕也となぜか縁がきれなくて……。
素直になれない二人をジャズ喫茶のバンドマン、一児の母、辛口の秀才、甘えん坊の美少女(すべて高校生!)が支える。
「東京」という街の中ですれ違う人間関係が静かなジャズの音楽にのせて描かれる極上の青春小説!

「トーキョー・クロスロード」を読んだ。
濱野京子という作家の大ファンになった。
すごく良かった。

何ていうか、この作品全体にただよう雰囲気っていうか、世界観みたいなものが、私の大好きな感じで、もうすっかりハマってしまった。

一言で表現するなら、ザ・青春恋愛小説!

主人公は森下栞。高校2年生の女の子。
彼女の趣味は、山手線に乗って見知らぬ駅で下りて、その街を歩いて回り、その景色を写真に撮るというもの。

いわゆるぶらり途中下車の旅的なことを、高校2年の女の子が一人でやっているのだ。
自分のことを誰も知らない街を一人で歩くのが、不思議と心地よい。
私ではない私。だれも知らない私。孤独という名の解放。私が何ものであってもいい。そこで私はあわい喪失感にひたる。それはもしかしたら、自虐的な快感かもしれない。

そんな栞は、ある日、偶然に中学のときの同級生の耕也と出会う。

そこから、二人の物語が動き始める。

お互いにめちゃくちゃ強く意識し合いながらも、その気持ちが本当に「好き」と呼べるものなのかどうか分からない。
そんな非常にビミョーな二人の距離感の描き方が、とっても繊細で上手い。
忘れよう、と思った。でもたぶん、忘れられない。

この物語に輝きを与えてくれているのが、
栞の周りのクラスメートたちの存在。
いつも一緒にお昼を食べる、亜子と美波。
それぞれに全く性格の違うこの3人が、実は深く確かな友情でしっかりとつながっていて、そのことを見せてくれる一つひとつのエピソードが、とても瑞々しくて眩しくて、これぞ青春という感じが、読んでいてたまらなく気持ちいい。

そして、さらに重要なのが、川田さんと青山の2人。
クラスメートなんだけど、2人ともある事情があって、栞より2歳年上。
このちょっぴり大人な彼らの存在が、物語をぐっと深みと広がりを持たせてくれている。
(何と彼女の方は、高校生でありながら結婚して家庭をもっており、さらに可愛い赤ん坊までいる)
「じゃあ」
と、せつなげに笑う。泣きそうな顔だ。私はもう、泣いてなどいない。メガネをかけているから。何も起きなかった。でも、何もなかったわけじゃない。そして、もう二度と会えない。その思いが、絶望的なまでの確信となっていく。

とにかく、栞と耕也の二人の微妙な関係が、もう切なくてしょうがない。

ラストは、ベタと言えばベタな展開なんだけど、でも青春小説なんだから、そういう爽やかな終わり方がやっぱり気持ちがいい。

すごく楽しめた。
すばらしい青春恋愛小説に出会えた。

祝・第25回坪田譲治文学賞受賞!『トーキョー・クロスロード』:ポプラ社
2010-01-24

『ボーダー&レス』藤代泉 を読んで


ボーダー&レスボーダー&レス
(河出書房新社)
藤代泉


souiunogaii評価 

内容紹介
この世界はどこにだって、見えない溝がある。僕ら二人の間にも……
新入社員の僕が出会った独特な魅力の在日コリアンのソンウ。二人の友情を通して“世界の今”を描く
第46回文藝賞受賞作。

文藝賞受賞作で、芥川賞の候補にもなった作品。

物語は主人公の二人が入社式で出会うところから始まる。
日本人の江口理倫(まさとも)と趙成佑(チョ・ソンウ)。
すぐに親しくなった二人はお互いを"りーりん"、"なりすけ"と呼び合う。

江口の、学生気分が抜けきらないお気楽なサラリーマン一年生の、何とも軽い感じが物語全体を明るく爽やかなものにしている。

でも、本作が扱っているテーマの中心は"在日コリアン"のアイデンティティの問題であり、深く重い。

ある夜、ソンウが江口に言った言葉がとても印象に残る。
「お前はなんなの?語れないの?語らないの?」
すごい力だった。僕は口を開いても声が出なかった。
「向き合えないの?向き合わないの?どっちだよ」
ソンウの詰問する声はどんどん僕をえぐっていった。

でも、江口もソンウもお互いをかけがえのない親友だと認識しあっている。
そんな二人の関係を、何だかとても羨ましく思った。

ああ、そういうことなんだ。
2009-11-15

『人生最高の10のできごと』アディーナ・ハルパーン を読んで


人生最高の10のできごと (イソラ文庫)人生最高の10のできごと
(早川イソラ文庫)
アディーナ・ハルパーン(著), 田辺千幸(訳)


souiunogaii評価 

内容紹介
天国に住み続けるためにわたしは人生をふりかえる。

わたしは死んだ。29歳のある夜、突然に。気がつけば天国にいて、そこはなんでも思い通りになるすばらしい場所。ずっと憧れていた家に住み、クローゼットには憧れの服や靴。食べ物は想像するだけで現われ、お腹いっぱい食べても太らない。まるで夢みたい!
ただし、ここに住み続けるために合格しなければならないテストがあるという。
こうしてアレックスは、人生でもっとも良かったできごとを10選ぶことになる……
ひとりの女の子が大人になるまでをコミカルに、ときどきシリアスに振り返りながら、生きることの喜びを描きだす感動作。

本が好き!より献本いただきました。
とっても良かった!

著者のアディーナ・ハルパーンはアメリカでファッション誌にコラムを書いているフリーライターで、小説家としては本書がデビュー作になる。
そんな彼女が書いた本書『人生最高の10のできごと』は、
アメリカ人のごく普通の女の子が、家族、友だち、恋、仕事に悩みながら成長していく波乱万丈の半生を、笑いあり涙ありのとってもドラマチックに描いた素敵な物語。

物語は、主人公のアレックスという女性が、29歳にして交通事故で死んでしまい、天国にやってくるところから始まる。
最初は天国があまりにも快適な場所なので、それに非常に満足していたアレックスだが、ある日、守護天使のデボラが現われて、次のようなことを告げられる。

・天国には第7〜第1までの階層がある。
・最も素晴らしい第7天国に住み続けるにはテストに合格する必要がある。
・テストの内容は"人生最高の10のできごと"という題で作文を書くこと

さあ、大変だ。ということでアレックスは生まれてから29歳で死ぬまでの間の人生の中で起こったできごとを思い返していき、良かったことベスト10を挙げていくことになる。

いま私自身は26歳なんだけれど、この小説を読みながら、
自分だったら、"人生最高の10のできごと"としてどんなことを挙げるだろう?みたいなことを一緒に考えさせられた。
で、結局頭に浮かんでくるのは、物語の主人公アレックスが作文に書いたことと大体同じようなこと(つまりはどんな人と出会って、それによって自分がどれだけ成長することができたか、そして他の誰かをハッピーにする手助けをできたか)だったりして、
なんだ自分の人生って結構幸せいっぱいなのかもしれないな、なんて思ったりした。

具体的に、アレックスがどんな出来事を最高の10個にリストアップしたのかは、この本を読んでもらうとして、とにかく人が今まで生きてきた時間をどれだけ幸せだと感じられるかは、物質的な満足なんかじゃなくって、心がどれだけ温かく感じられるかなんだ、そういうことを様々なやり方で伝えてくれる、とてもメッセージ性の強いお話でした。

天国みたいな世界が本当にあるんだとしたら、それが本書のような素敵な世界だったとしたら、変な言い方かもしれないが、そこに行ける日がちょっとだけ楽しみな気もする。
そして、その時、アレックスが書いたような作文を自分が書くことになったら、と想像して、そのために幸せいっぱいの人生を送れるように頑張らなきゃ、そう思わせてくれる小説でした。
読んで良かった、そう思います。


この『人生最高の10のできごと』は、エイミー・アダムス主演で映画化が計画されているそうで、そちらの方もとても楽しみです。


人生最高の10のできごと
  • アディーナ・ハルパーン/田辺千幸
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書評/SF&ファンタジー

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