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『はつ恋』ツルゲーネフ を読んで[2009-08-29]

2009-08-29

『はつ恋』ツルゲーネフ を読んで


はつ恋 (新潮文庫)はつ恋
(新潮文庫)
ツルゲーネフ(著),神西清(訳)


souiunogaii評価 

内容紹介
16歳のウラジミールは、別荘で零落した公爵家の年上の令嬢ジナイーダと出会い、初めての恋に気も狂わんばかりの日々を迎えるが、ある夜、ジナイーダのところへ忍んで行く父親の姿を目撃する……。
青春の途上で遭遇した少年の不思議な"はつ恋"のいきさつは、作者自身の一生を支配した血統上の呪いに裏づけられて、不気味な美しさを奏でている。
恋愛小説の古典に数えられる珠玉の名作。

物語の舞台は1833年のロシア。
主人公は16歳の少年ウラジミール。大学入学の準備のために勉強中の彼は、隣りの家に引っ越してきた21歳の女の子ジナイーダと出会い、恋をする。
現代の日本とは、時代も国も違うけれど「少年の初恋」の物語は、やっぱり読んでいると心を揺さぶられるパワーがある。
年上の女の子に恋をしてしまい、自分の気持ちを届けたくてしかたがないのに、それが上手く表現できずに悩む少年の気持ちが、丁寧に大切にきちんと描かれていて、物語が進むにつれて切なさに胸が苦しくなる。
その日は一日じゅう、わたしは堪らないほど浮き浮きと誇らかな気持ちだった。のみならず、ジナイーダのキスの感触も、顔一面にありありと残っていたので、わたしは興奮に身震いしながら彼女の言葉を一つ一つ思い浮かべたり、自分の思いがけない幸福を、胸の底で愛でいつくしんだりしていた。それで、現にそうした新しい感覚の源をなした当の彼女に会うのが、むしろ怖ろしくなって、できることなら会いたくない、と思ったほどであった。もうこの上、何ひとつ運命から求めてはいけない、今こそ『思いっきり、心ゆくまで最後の息をついて、そのまま死んでしまえばいいのだ』と、そんな気持ちがした。

もちろん、恋のライバルとなる男性たちも大勢登場するし、後半では、なんと自分の父親がジナイーダと…、というまさかの展開になっていき、少年ウラジミールの葛藤の様子が強く伝わってきて、何だかたまらなかった。
でも読了後には、言葉では表せない清々しさが残るから不思議だ。
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