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『竜巻ガール』垣谷美雨 を読んで[2009-12-27]
『東京島』桐野夏生 を読んで[2009-10-11]
『黒部の太陽[新装版]』木本正次 を読んで[2009-05-13]
『蟹工船・党生活者』小林多喜二 を読んで[2008-08-22]
『飛ぶ教室』ケストナー作 丘沢静也訳 を読んで[2008-03-08]

2009-12-27

『竜巻ガール』垣谷美雨 を読んで


竜巻ガール (双葉文庫)竜巻ガール
(双葉文庫)
垣谷美雨


souiunogaii評価 

内容紹介
父親の再婚相手の連れ子と同居することになった高校二年生の哲夫。
なんと義妹は同学年のガングロ娘だった!その日から破天荒で過激な彼女に翻弄される日々が始まった。
第27回小説推理新人賞受賞作家のデビュー作。
もくじ
竜巻ガール
旋風マザー
渦潮ウーマン
霧中ワイフ


久しぶりに読んだミステリー短篇集。

最後に明かされる秘密が、爽やかでいいなと思う。
2009-10-11

『東京島』桐野夏生 を読んで


東京島東京島
(新潮社)
桐野夏生


souiunogaii評価 

内容紹介
あたしは必ず、脱出してみせる――。ノンストップ最新長篇!

32人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か? いつか脱出できるのか――。欲を剥き出しに生に縋りつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読む者の手を止めさせない傑作長篇誕生!

『東京島』特設サイト:新潮社

『東京島』桐野夏生:[書評]asahi.com
衝撃作『東京島』の桐野夏生さんに聞く:MSN産経ニュース

無人島に漂流した人間たちのサバイバル物語。

41歳の清子は夫と2人でクルーザーで世界一周の旅の途中で不運にも無人島に漂着してしまう。
後に、日本人の若者たち、そして中国人の集団がその島に漂着。
彼らはその無人島に、トウキョウと名前をつけ、いつか日本に帰る日を夢見て集団生活を始める。

桐野夏生の独特の文体で、必死になった人間の腹黒さが生々しく描かれている。
生き残るために全力を尽くそうとする人間の強さを感じて、ただただそのすごさに圧倒されてしまう。

後半では、次々に予想外の事件が巻き起こって、もう最後まで一気に読んでしまう。
そして、見事な結末。さすがだなと思う。

2009-05-13

『黒部の太陽[新装版]』木本正次 を読んで


黒部の太陽[新装版](新潮社)木本正次黒部の太陽[新装版]
(新潮社)
木本正次


souiunogaii評価 

内容紹介
昭和30年代、前人未到の難工事を成し遂げた男たちの魂の記録!

「このトンネルをぶち抜かなければ黒四ダムはできない!」
毎秒600リットル以上の水を噴出する破砕帯の脅威!それでも男たちは、日本の電力不足を救うために掘った。
かつてこれほど熱かったニッポン、その世紀の大事業を描く実録小説の傑作が新装版で登場!

先日フジテレビで放送されたスペシャルドラマを見て、何だかすごく胸が熱くなって、ぜひこの奇跡の物語についてもっと詳しく知りたい!
そう思った。
で、ドラマの原作である本書『黒部の太陽』を読んだ。
すごかった。
感動した。
ノンフィクション小説独特の、建設機器や過酷な自然条件、時代背景などの客観的な説明文と、
登場人物である大町トンネル建設スタッフの方たちの丁寧な心情描写とのバランスは絶妙だし、
ドラマを先に見ているせいもあって、物語の世界にぐっとひきこまれてしまった。

この奇跡的な物語が、昭和の日本で達成された事実であることには、もうその凄さに言葉が出ない。

映画「アルマゲドン」で彗星に穴を掘ったブルース・ウィルスもかっこよかったけれど、
大破砕帯に打ち勝ち見事にアルプスの山をぶち抜いたトンネルを掘った彼らのカッコよさは、それ以上かもしれない。
もくじ
1 神話への出発
2 三正面作戦
3 市民の中で
4 アルプスの横穴
5 地の果てへ
6 作廊、東谷前線
7 白い大敵
8 死生一瞬
9 二つの破砕帯
10 一本の鋲
11 一枚の紙も黒四へ!
12 光あまねき陰に
13 神話の中、人は流れる

黒部の太陽
「黒部の太陽」:フジテレビ

黒部ダム
黒部ダムオフィシャルサイト:関西電力

笹島建設
笹島建設

熊谷組

最後に、非常に印象に残った、関西電力の太田垣社長の言葉を。
「危いって君、みんなそこで仕事してくれてるんじゃないか。仕事をいいつけた僕が、行かないという法はないよ」
「金は幾らでも使ってくれ。機械は世界中で一番いいのを使ってくれ。すべては僕が責任を持つ。君たちは何も心配せずに、ただトンネルの貫通だけに全力を尽くしてくれ」


【関連記事】
写真集『ダム』萩原雅紀 を見て
2008-08-22

『蟹工船・党生活者』小林多喜二 を読んで


蟹工船・党生活者 (新潮文庫)小林多喜二蟹工船・党生活者
(新潮文庫)
小林多喜二


souiunogaii評価 ハート3つ

ワーキングプアなんて言葉が生まれるずっと昔から…
いま再び、プロレタリア文学の代表作。

内容紹介
海軍の保護のもとオホーツク海で操業する蟹工船は、乗員たちに過酷な労働を強いて暴利を貪っていた。“国策”の名によってすべての人権を剥奪された未組織労働者のストライキを扱い、帝国主義日本の一断面を抉る「蟹工船」。
近代的軍需工場の計画的な争議を、地下生活者としての体験を通して描いた「党生活者」。
29歳の若さで虐殺された著者の、日本プロレタリア文学を代表する名作2編。

1929年に発表された、小林多喜二の『蟹工船』。
これが、2008年の今、再びブームになっているそうで、私も読んでみた。
「おい、地獄さ行ぐんだで!」

で始まる、この物語は、東北地方・北海道の最貧困層の人たちを乗せて、極寒の嵐のオホーツク海で、カニ漁をし、船上で缶詰をつくる船の話です。
蟹工船は「工船」(工場船)であって、「航船」ではない。だから航海法は適用されなかった。  (中略)
それに、蟹工船は純然たる「工場」だった。然し工場法の適用もうけていない。それで、これ位都合のいい、勝手に出来るところはなかった。

時代が現在とは全く違うので、この小説が書かれた当時に、これを読んだ人々が何を感じていたのか、私にはわかりません。
しかし、ここに描かれている蟹工船の労働環境のひどさには、強く胸を打たれました。
"生きる"ための労働が"死"の恐怖と隣り合わせにあること、その事実を見て見ぬ振りをする資本家たちの存在。
時代は違い、程度や規模の差こそあれ、私にもこれは現代にそのまま通じる問題のように思えました。

少し前に、日雇い派遣が規制されたり、グッドウィルが廃業したり、日テレやNHKがワーキングプアやネットカフェ難民の問題を取り上げている今、80年前に書かれたこの『蟹工船』が再び読まれていることに、何だか深い意味があるような気がしてなりません。
「よオし、さ、仕事なんてやめるんだ!」
ロープをさっさと片付け始めた。「待ってたんだ!」
そのことが漁夫達の方にも分った。二度、ワアーッと叫んだ。

以前、テレ東の「カンブリア宮殿」で、日本交通の川鍋社長が、従業員のタクシードライバーたちに言っていた言葉を思い出す。
「誇りを持って仕事をして欲しい」
厳しい労働条件の下で必死に働く彼らに、川鍋社長はそう語っていた。
そのときの、社長と従業員の目が、何だか非常に印象的だったのを、覚えている。
日本のタクシーを変えろ! :カンブリア宮殿 2007-05-14

『党生活者』には、
これから何年目かに来る新しい世の中にならない限り(私たちはそのために闘っているのだが)

という文章が出てくる。
共産党員として闘い、プロレタリア文学で世界を変えようとした小林多喜二。
1933年に特高警察に逮捕され、虐殺された彼が書いたこの小説が、時をこえて読み続けられているこの事実に、本当にいろいろなことを考えさせられる。

小林多喜二「蟹工船」突然のブーム ワーキングプアの“連帯感” :(2008-05-14)MSN産経ニュース
「マンガ」化で読者激増!小林多喜二「蟹工船」ブレイクの理由 :(2008-05-31)gooニュース

蟹工船・党生活者 :情報考学 Passion For The Future
2008-03-08

『飛ぶ教室』ケストナー作 丘沢静也訳 を読んで


飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)ケストナー飛ぶ教室
(光文社古典新訳文庫)
ケストナー(作)
丘沢静也(訳)

souiunogaii評価 ハート5つ

良い!私の中での久々のヒット小説だ。
内容紹介
孤独なジョニー、弱虫のウーリ、読書家セバスティアン、正義感の強いマルティン、いつも腹をすかせている腕っぷしの強いマティアス、同じ寄宿舎で生活する5人の少年が友情を育み、信頼を学び、大人たちに見守られながら成長していく感動的な物語。ドイツの国民作家ケストナーの代表作。
作者紹介
エーリッヒ・ケストナー (1899-1974)
ドイツの作家。8歳から80歳までの「子ども」たちに愛され、軽快で、簡潔で、男らしく、ユーモアにみちた作品を書いた。

20世紀のドイツ児童文学の傑作といわれる『飛ぶ教室』。
作者ケストナーはこの小説を子供たちに向けて書いたそうだ。それを私は20代半ばになった今になって初めて読んだのだけれど、いや、もう素晴らしく面白かった。
これは私個人の好みだけれど、やっぱり“少年たちの勇気と友情の物語”っていうのは、読んでいて一番面白い、最高のテーマだよな、と。

舞台はドイツの寄宿制の学校ギムナジウム。10歳で入学する9年制の中高等学校だ。そして季節はクリスマス。
主な登場人物は5年制の5人の少年たち。どいつも一人ひとりにそれぞれ固有の特別な魅力と才能と悩みを持っている。絵が得意、力強い、読書好き、才知に富む、様々だ。
学校の内外で巻き起こるいくつもの問題に立ち向かい、闘う中で、彼らの素晴らしい友情で結ばれた場面を、読者は何度も目撃する。
私は彼らを、文句なしの最高の仲間たちだと思う。

彼らに与えられた環境はバラバラだ。裕福な家の子・貧乏な家の子、親のいない子、勉強が得意な子・不得意な子、体の大きな子・小さな子。
でもそんな違いは全然関係ないのだ。
彼らは互いに信頼しあい、互いの才能を認め尊重し、喜びも悲しみも分かち合うことができる。

もちろん、この物語には大人たちだって出てくる。
学校の教師も舎監も、町の人も、両親も、少年たちが人生に必要ないろいろなことを学ぶ上で、たいせつな要素をいくつも与えてくれる。
大人の私が読んでいても、「ああ、そうだよな」と思うような、胸の奥のほうにズーンと入ってくる教訓的な言葉・話を、大人たちは子供たちに投げかける。

1933年に世に出た小説で、1899年生まれの作者が自信の学生時代のエピソードも基にして書いたという『飛ぶ教室』。
2008年の日本とは、国も時代も違うのだけれど、やっぱり正義とか勇気とか友情とか、そういうものの価値っていうのは共通な部分があるんだな、と。
だからこそ、時代も国も超えて読まれる小説になれるんだと思って、何だかそれって実はすごいことだよな、と感心してしまう。

いろいろダラダラと書いてしまったけれど、文章が上手くまとまらずにイライラしてしまうけれど、何とかしてこの傑作の魅力を伝えたいと思う。
こんな名作に対していろいろ語るのはやめて「とにかく読んで」と言うだけでもいいかなとも思う。
とにかく、この少年たちの物語を読んで、私は本当に楽しくて面白くてとっても良い気持ちになれた。感動したのだ。

やっぱりこれは実際に読んでいただくしかないや。
本当に薦められる小説だと思うから、ぜひ読んでみてほしい。
例えばそう、石田衣良の『4TEEN』が好きな人なら、きっと本作も好きだと思う。

最後に、私が特別にお気に入りの場面の文章を書いておこう。
マルティンとジョニーは黙って、菜園ブロックのあいだをどんどん走った。ギムナジウムの垣根のところで立ちどまり、息をついた。ふたりはなにも言わなかった。けれども垣根を越える前に、がっちり握手をした。
それは、無言の約束をしているようだった。言葉ではまったく言えない約束を。

Das Fliegende Klassenzimmer Erich KästnerDas Fliegende Klassenzimmer
Erich Kästner
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