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『飛ぶ教室』ケストナー作 丘沢静也訳 を読んで[2008-03-08]
『雪国』川端康成 を読んで[2008-02-06]
『RUN!RUN!RUN!』桂望実 を読んで[2007-11-29]
劇団ひとり『陰日向に咲く』の映画が1月に公開[2007-11-24]
『夢見る黄金地球儀』海堂尊 を読んで[2007-11-12]

2008-03-08

飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)ケストナー
飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)
ケストナー(作), 丘沢静也(訳)

良い!私の中での久々のヒット小説だ。
内容紹介
孤独なジョニー、弱虫のウーリ、読書家セバスティアン、正義感の強いマルティン、いつも腹をすかせている腕っぷしの強いマティアス、同じ寄宿舎で生活する5人の少年が友情を育み、信頼を学び、大人たちに見守られながら成長していく感動的な物語。ドイツの国民作家ケストナーの代表作。
作者紹介
エーリッヒ・ケストナー (1899-1974)
ドイツの作家。8歳から80歳までの「子ども」たちに愛され、軽快で、簡潔で、男らしく、ユーモアにみちた作品を書いた。

20世紀のドイツ児童文学の傑作といわれる『飛ぶ教室』。
作者ケストナーはこの小説を子供たちに向けて書いたそうだ。それを私は20代半ばになった今になって初めて読んだのだけれど、いや、もう素晴らしく面白かった。
これは私個人の好みだけれど、やっぱり“少年たちの勇気と友情の物語”っていうのは、読んでいて一番面白い、最高のテーマだよな、と。

舞台はドイツの寄宿制の学校ギムナジウム。10歳で入学する9年制の中高等学校だ。そして季節はクリスマス。
主な登場人物は5年制の5人の少年たち。どいつも一人ひとりにそれぞれ固有の特別な魅力と才能と悩みを持っている。絵が得意、力強い、読書好き、才知に富む、様々だ。
学校の内外で巻き起こるいくつもの問題に立ち向かい、闘う中で、彼らの素晴らしい友情で結ばれた場面を、読者は何度も目撃する。
私は彼らを、文句なしの最高の仲間たちだと思う。

彼らに与えられた環境はバラバラだ。裕福な家の子・貧乏な家の子、親のいない子、勉強が得意な子・不得意な子、体の大きな子・小さな子。
でもそんな違いは全然関係ないのだ。
彼らは互いに信頼しあい、互いの才能を認め尊重し、喜びも悲しみも分かち合うことができる。

もちろん、この物語には大人たちだって出てくる。
学校の教師も舎監も、町の人も、両親も、少年たちが人生に必要ないろいろなことを学ぶ上で、たいせつな要素をいくつも与えてくれる。
大人の私が読んでいても、「ああ、そうだよな」と思うような、胸の奥のほうにズーンと入ってくる教訓的な言葉・話を、大人たちは子供たちに投げかける。

1933年に世に出た小説で、1899年生まれの作者が自信の学生時代のエピソードも基にして書いたという『飛ぶ教室』。
2008年の日本とは、国も時代も違うのだけれど、やっぱり正義とか勇気とか友情とか、そういうものの価値っていうのは共通な部分があるんだな、と。
だからこそ、時代も国も超えて読まれる小説になれるんだと思って、何だかそれって実はすごいことだよな、と感心してしまう。

いろいろダラダラと書いてしまったけれど、文章が上手くまとまらずにイライラしてしまうけれど、何とかしてこの傑作の魅力を伝えたいと思う。
こんな名作に対していろいろ語るのはやめて「とにかく読んで」と言うだけでもいいかなとも思う。
とにかく、この少年たちの物語を読んで、私は本当に楽しくて面白くてとっても良い気持ちになれた。感動したのだ。

やっぱりこれは実際に読んでいただくしかないや。
本当に薦められる小説だと思うから、ぜひ読んでみてほしい。
例えばそう、石田衣良の『4TEEN』が好きな人なら、きっと本作も好きだと思う。

最後に、私が特別にお気に入りの場面の文章を書いておこう。
マルティンとジョニーは黙って、菜園ブロックのあいだをどんどん走った。ギムナジウムの垣根のところで立ちどまり、息をついた。ふたりはなにも言わなかった。けれども垣根を越える前に、がっちり握手をした。
それは、無言の約束をしているようだった。言葉ではまったく言えない約束を。

Das Fliegende Klassenzimmer Erich Kästner
Das Fliegende Klassenzimmer
Erich Kästner
2008-02-06

雪国 (岩波文庫)川端康成
雪国 (岩波文庫)
川端康成

内容紹介
頑なに無為徒食に生きて来た主人公島村は、半年ぶりに雪深い温泉町を訪ね、芸者になった駒子と再会し、「悲しいほど美しい声」の葉子と出会う。
人の世の哀しさと美しさを描いて日本近代小説屈指の名作に数えられる、川端康成の代表作。

『雪国』を読んだ。作者はノーベル文学賞を受賞した川端康成。
冒頭の一文は、あまりにも有名で、それだけは私も知っていた。
というか、それだけしか知らなかった。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落とした。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように、
「駅長さあん、駅長さあん。」

冒頭の一文だけしか知らず、どういう物語なのかは全く知らなかった。

そして、読んでいきいながら、「あぁ、『雪国』ってこういう小説だったんだ」と小さなショックを受けながら、
やはり、実際に読まなくてはダメなんだと思い知らされる。

島村という男と、駒子と葉子という2人の女の物語。
作者自身による「あとがき」によると、駒子にはモデルとなった女性がいるが、島村と葉子とは完全に空想だそうだ。
そして、舞台は越後の湯沢温泉だが、文中ではあえて地名を明らかにはしなかったのだ、ともある。

とにかく、駒子という女性のキャラクターが、ものすごい。
顔などの視覚的なイメージは、文章からは私にはあまりはっきりとは見えてこなかったのだけれど、
彼女の繰り出してくるセリフ・言葉によって、読んでいる(というか彼女の声を聞いている)私の頭の中に、彼女の姿がしっかりと植えつけられた。
もう、なんて女なんだ!と。
わがままで、臆病で、弱さを見せた次の瞬間には強い女になり、自由奔放であり、苦しみに耐える女であり、運命には腹を立てているようで逆らわず。
駒子のキャラクターの強さといったら、ない。

そして、もう一人の女。葉子。
駒子とは違って、島村と言葉を交わすシーンはほとんどない。
どんな人なのかは、ゆっくりじわじわと分かってくる。
ひたすらに濃い駒子のキャラに浮かび上がらされる形で描かれる葉子の美しさ。
2人の女性の対照がまたよくできている。

ラストの天の川の描写にも、心を打たれる。素敵な表現だと思う。

ノーベル賞作家の書いた小説なんて、きっと難解なものだろうと、勝手に想像してしまい読むことを拒否していたことが、今ではなんともったいないことだったのか、と。
『雪国』は、非常に読みやすい小説だった。
2007-11-29

RUN!RUN!RUN! (文藝春秋)桂 望実
RUN!RUN!RUN! (文藝春秋)
桂 望実

タイトルと表紙が気に入って、どんな内容なのかは全然確かめずに、この本を選んだ。
つぶれたシューズの写真に、「この本は良い!」って予感を強く感じた気がした。

著者は桂望実(『県庁の星』が映画化されている)。

読み始めると、大学の陸上部で箱根駅伝を目指す人たちの話だと分かった。
正直、「あぁ……」と思った。私はスポーツ(特にマラソンや駅伝)にはあまり興味が無い。駅伝を観戦したりすることなど、無い。面白いポイントが分からないのだ。

しかし、この本を読んで、そういった考えは変わったかもしれない。
表紙を見たときの「この本は良い!」の予感は、やっぱり合っていた。
ページをめくるうちに、すっかりその世界に入り込んでしまった。
もう、一気に読んでしまった。
駅伝選手の話で、こんなにも面白い小説ができるなんて、驚きだった。感動だった。
文藝春秋書誌ファイル 内容紹介 より
アスリートとして最高の資質を持つ主人公が知った事実とは。箱根駅伝に懸ける仲間と走るうちに、閉じかけていた世界が開いていく

長距離ランナーとしての高い能力を持って生まれ、地道な努力も重ねてきた反面、自分以外には興味がなく、仲間も必要としなかった岡崎優。箱根駅伝での優勝を狙う陸上部のメンバーからは猛反発をくらうが、同じ1年生のムードメーカー・岩本だけは優を尊敬し庇う。そんな中、突然の兄の死をきっかけに、優は岩本をサポートする立場に追い込まれるのだが……。
映画にもなった「県庁の星」の大ヒットで、今大注目の著者が、過酷な運命を背負わされた青年の友情と成長を熱く爽やかに描きます。

とにかく主人公・岡崎優の描かれ方がいい。
大学1年生の若い彼は、はじめは「はぁ?コイツ何様だよ!」と言われるような、天才気取りで生意気な少年だった。
(その上、裕福な家庭に育ち、経済的にも恵まれている)
周囲から反感を買い続ける。

でも不思議と、私は彼には腹が立たなかった。

そんな彼が、あるきっかけから少しずつ変わっていく。
両親、兄、陸上部の“仲間”、コーチ、周りの人間たちとのつながりを少しずつ意識するようになっていく。
ずっと、自分のためだけに生きてきた人間に、初めて「他の誰かのために」という気持ちが芽生えていく。
気持ちがギザギザになっていくのはなんでだろう――。自分の心のことなにに、わからないことが多すぎる。

そういう、一人の人間の内面の変化の様子が、丁寧に丁寧に表現されている。
悩んで、苦しんで、迷って、それでもゆっくりと大きくなっていく彼の姿が、たまらなく素敵に見えた。
こういうのが、小説を読む楽しみだよな、そう思う。

陸上というスポーツの話なのに、この小説には主人公が走る試合のシーンがほとんどない。
大部分を占めるのは、トレーニングのシーン。
それでも、まったく退屈せずにどんどん読み進められるのは、やっぱり文章の力、作者の力なんだろう。
努力はね、裏切らない神様だ。努力した分、必ずご利益がある神様だ。だけどこの神様はのんびり屋で、ちょっと気まぐれだから、いつご利益があるかはわからない。だから神様を信じられなくなるときがある。でもちゃんと見てる。知ってる。

この本を読んで、やっぱり良かった。
来年の箱根駅伝が、今までとは大分違った気持ちで観戦できそうな、そんな気がしてくる。

人であるために走る あさのあつこ :文藝春秋 本の話 私はこう読んだ
県庁の星 (小学館)桂 望実
県庁の星 (小学館)
桂 望実

ボーイズ・ビー (幻冬舎文庫)桂 望実
ボーイズ・ビー (幻冬舎文庫)
桂 望実
2007-11-24

陰日向に咲く (幻冬舎)劇団ひとり
陰日向に咲く (幻冬舎)
劇団ひとり


劇団ひとりの小説デビュー作『陰日向に咲く』が原作の、映画「陰日向に咲く」が来年1月26日にいよいよ公開されるとか。

出演は、岡田准一、宮アあおい、伊藤淳史、平山あや、緒川たまき、塚本高史、西田敏行、三浦友和。

監督は「そのときは彼によろしく」の平川雄一郎、脚本は金子ありさ。
そして音楽は、「医龍」「タイヨウのうた」の澤野弘之。

ちょっと楽しみな映画じゃないですか。
これは観たい。
いや、その前に、「お笑い芸人の書く小説?」と遠ざけていた原作本、やっぱり読んでみたい。


映画「陰日向に咲く」公式サイト
2007-11-12

夢見る黄金地球儀 (東京創元社)海堂 尊
夢見る黄金地球儀 (東京創元社)
海堂 尊

本が好き!より献本していただきました。

まず一言。「いや実に面白かった!」
タイトルに惹かれて、読んでみたいと思い本書を選んだのだけれど、正直、金塊泥棒の話でこんなにも楽しめるとは思わなかった。
期待通り、いや期待以上の興奮と感動を久しぶりに感じた。

著者の海堂尊がデビューしたのは『チーム・バチスタの栄光』という作品。第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、さらに2008年2月には竹内結子・阿部寛主演で映画化されるという。

私が海堂尊を読むのは本書『夢見る黄金地球儀』が初めてなのだけれど、これほどに注目を集めている新人作家だとは知らなかった。ぜひ、他の作品も読んでみたい。
内容紹介
首都圏の端っこに位置する桜宮市に突如舞い込んだ1億円。その名も「ふるさと創生基金」。だがその金は黄金をはめこんだ地球儀に姿を変え、今では寂れた水族館にひっそりと置かれているだけとなった――はずだった。が、ある日を境にトラブル招聘体質の男・平沼平介の日常を一変させる厄介の種へと変貌する。
8年ぶりに現れた悪友が言い放つ。「久しぶり。ところでお前、1億円欲しくない?」かくして黄金地球儀奪取作戦が始動する。2転3転4転する計画、知らぬ間に迫りくる危機。平介は相次ぐ難局を乗り越え、黄金を手にすることができるのか。『チーム・バチスタの栄光』の俊英が放つ、抱腹絶倒のジェットコースター・ノベル!

さて、物語の内容はというと、簡単に書けば、市の所有物である金の地球儀を盗んでしまおう、という話だ。

主人公であり、泥棒チームのリーダーとなるのは、平沼平介。父親が社長を務める家族経営の小さな町工場の営業職だ。
物語は平介を「俺」という一人称にして、彼の目線から描かれている。
大学院で理論物理学を学んだ彼の言葉で作られる文章は、論理的で、理系的で、そして漢字が多い。
読み始めは、軽い抵抗感というか少し疲れを感じたのだけれど、それは始めだけで、読み進めるにしたがって、その文章の魅力に気づき、物語の世界にどっぷりとはまり込んでしまう。
不思議な力だ。著者の才能を感じる。

そして、主人公平介をかこむ泥棒チームのメンバーたち。
まず、ガラスのジョニー。平介の学生時代の悪友。表紙のチューリップ帽の男がそうだ。

そしてアイ。平介に想いをよせるバーテンダーの女性。重さ80kgの金の地球儀を持ち上げてくれる怪力の持ち主。

この2人の他にも、様々な人物たちが、「え!この人が?」「は!コイツも?」という驚きの形で泥棒作戦にからんでくる。

金を盗まれる側の市の職員の面々も、クセのある人物たちで面白い。

金塊泥棒、それは完全に違法行為であり、れっきとした犯罪であり、絶対にイケナイことなのだけれど、それでも読者としては「何とか成功してくれ」「うまく盗んでくれ」と、彼らを応援する気持ちが沸いてくるから、不思議だ。
その理由は、盗む相手である「自治体職員」が、現実社会では日頃から庶民の敵として報道されているからかもしれない。
「厳密に考えれば違法行為だ。だけどやることは、あいつら役人と大して違わない。ヤツらは自分たちのやっていることが都合悪くなるとルールを変える。法律を作り直し、自分たちだけは甘い汁を吸い続けようとする。それだけの違いだ」

「税金を取り返してやろうぜ」みたいな。(実際にはそうではないのだが)

なんて頭の良い方法だ、これならきっとバレない。うまくいくはずだ。と感心しながらも、本当にうまくいくのか?もしバレたら……という不安も強くなっていく。
泥棒計画スタートからは、ドキドキ・ワクワク・ハラハラの連続だ。

そして、ラストでの大どんでん返し。全然予想もつかなかった結末が待っている。
「様々な断片が、一点に向かって収束していく。」
その瞬間が、もう、たまらなく気持ちいい。

舞台は桜宮市という架空の町。現実世界をパロディしたものや人の数々。町工場の脅威の技術力。魅力あふれる登場人物たち。空中三回転半ひねり的なストーリー展開。笑いと興奮と感動。
「これは面白かった!」と心から感じられる要素がぎっしりつまっている。

この一冊で、私は海堂尊のファンになってしまった。

物語終盤、平介が父豪介からかけられた言葉には、ちょっと感動してしまった。
「平介、お前はよくやってくれている。だが才能というものは、本人が無意識のうちに認識してしまうものだ。(中略)自分の本当の姿から目を逸らすな。すべてをありのままに見つめろ。結果は問題じゃない。本当は何をやりたいのか、もう一度、自分に問いかけてみろ」


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チーム・バチスタの栄光 (宝島社)海堂 尊
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ブラックペアン1988 (講談社)海堂 尊
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