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『最高学府はバカだらけ―全入時代の大学「崖っぷち」事情』石渡嶺司 を読んで[2007-12-24]
『子どもにいちばん教えたいこと―将来を大きく変える理想の教育』レイフ・エスキス を読んで[2007-12-22]
『学校のなぞ』中村弥和 を読んで[2007-12-03]
『予備校が教育を救う』丹羽健夫 を読んで[2007-09-02]

2007-12-24

『最高学府はバカだらけ―全入時代の大学「崖っぷち」事情』石渡嶺司 を読んで


最高学府はバカだらけ (光文社新書)全入時代の大学「崖っぷち」事情石渡 嶺司最高学府はバカだらけ
全入時代の大学「崖っぷち」事情
(光文社新書)
石渡 嶺司

souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
大学全入時代をほぼ迎えたいま、私大では定員割れが続出し、潰れる大学も出てきている。こうした、世間からそっぽを向かれた「崖っぷち大学」は生き残りに必死だが、それは、東大や早慶上智、関関同立といった難関大といえども他人事ではない。どの大学も受験生集めのために手を尽くしている。ところが、その内容は――AO入試で辞退さえしなければ誰でも合格、就職率や大学基本情報の非公表・偽装、イメージをよくするために大学名を改名(秋田経済法科大からノースアジア大へ)、新しいことを学べる新学部を新設(シティライフ学部や21世紀アジア学部)など、世間の常識と大いにズレていて、どこかアホっぽいのだ。本書では、こうした大学業界の最新「裏」事情と各大学の生き残り戦略を、具体例を交えながら紹介していく。

著者の石渡嶺司氏は、大学の抱える諸問題や大学生の就職活動をテーマにした記事を書き続けているライター・大学ジャーナリスト。
これまでに全国の250もの大学を見て回ってきたという。

そんな彼が、昨今の大学事情を新書として一冊にまとめたのが本書だ。
冒頭、最初の一文はこうだ。
偏差値の高低や知名度に関係なく、日本の大学生はおしなべてバカと言っていい。

現在、私は大学4年生で、数ヵ月後には卒業する身である。
「おしなべてバカ」という表現にはちょっとショックを受けたが、本文を読み進めていくうちに、著者が指摘するバカ学生の姿のいくつもの点が、自分や自分の周りの大学生にあてはまるものがあったので、情けなくもまたまたショックを受けると同時に、自分たちが認識できていないだけで、やはり日本の大学生はバカばっかりなのかもしれない、と思わされてしまう。
「いや、私の大学は別だよ」というのはバカな思い込みであることに気づいてしまうのだ。
もくじ
第1章 アホ大学のバカ学生
ロビーで着替えて「ノリ貸してください」 / 普通の面接でも「圧迫面接」でひどい / 「その大学ってどこにあるんですか?」 / 東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか? / 営業嫌いとコンサル妄信 / 講義は真面目、他は不真面目 / ネットになければ、この世に存在しない / ミクシィでカンニング暴露 / なんでんもかんでもネットにカキコ
第2章 バカ学生を生む犯人は誰か?
「ウチはまったく悪くない」 / 「高校教育劣化」説 / 「文科省理念先行」説 / 「両親ヘリコプター化」説 / 「就職活動不健全」説
第3章 バカ学生の生みの親はやはり大学!?
「入試激化」説 / 「推薦・AO入試激増」説 / 「大学乱立」説 / 「大学教職員不能」説 / 「広報機能未発達」説 / 「珍名・奇名大学急増」説 / 「情報隠蔽」説
第4章 大学の情報公開をめぐる2つの講演
受験生集めに効果的な情報の隠し方 / 大学にだまされない大学の選び方
第5章 ジコチューな超難関大
他大から恨まれるジコチュー大学 / 「世界の東大」目指すも迷走か?(東京大) / 「打倒東大」どころか「追いつけ東大」(京都大) / 秘策は「学費国立並み一割政策」(早稲田大) / 薬学部のつぎが噂される帝国主義(慶応大)
第6章 「崖っぷち大学」サバイバル
断崖絶壁にある難関・中堅・新興大 / 関西ローカルから脱出したい(関西・関西学院・同志社・立命館) / 都心に帰りたい(中央・青山学院・東洋) / 学部新設のツケは孤島か、食事難民か(法政・明治・神戸学院) / 「就職に強い」看板は有効か?(立教・専修・京都産業・広島修道) / 工学部は鳥人間で起死回生!?(金沢工業・豊田工業・東京理科)
終章 バカ学生はバカ学生のままか?
バカ学生の“化学反応” / 中学レベルまでさかのぼる補修システム / 入学前に新書を読ませて感想文 / 今や「大学五年制」の時代 / 就活で脱皮するバカ学生 / 「面倒見のいい大学」を目指して

本書によると、2007年現在、日本には756もの大学があって、大学進学率は53.7%と過去最高、さらに“入学できた率”は90.4%で大学全入時代を迎えているそうだ。

で、自分の大学受験のときのことを思い出してみると、どんな大学なのか自分で調べて、入学試験を受けたのは片手で数えるほどで、750もある大学のほとんどは、「名前だけは聞いたことある」か「存在すら知らない」大学ばかりだ。
そして、実際に入学して講義を受けることになるのは、自分の通う1つの大学の1つの学科だけなのだから、他の大学がどんな教育を行っていてどんな学生が学んでいるのかなんて、ほとんど知らないものだ。
もっと言えば、自分の大学でさえ違うキャンパスのことになると、全然知らなかったりする。

だから、本書のように、全国の大学を実際に回って、学生や教職員に取材して集めた、数多くの大学の内部の実態の情報を読むのは、たいへんに興味深かった。
そして、この各大学の内部の情報というのが、「学生はなぜバカなのか?」という視点から語られるので、表向きには出されていない裏情報などが多く出てきて、実に面白いのだ。「えー、そうだったの」と。

中でも特に私が驚いたのは、推薦入試についての話。
私自身は一般入試しか受験しなかったので、推薦・AO入試の実態を知って、正直びっくりしてしまった。
また、就職率・志願者数をより良く見せるための卑怯なまでの数字の操作にも驚いた。

大学経営者や教職員の話からは、おいおい文科省から多額の税金を配ってもらっている大学が、そんな詐欺みたいなことを平気でやっていて、黙認されているのかよ、大学ってバカじゃねえの?みたいなことも出てくる。
そして、まさか自分の大学は大丈夫なのか?と心配になってくる。
想像していた以上に何倍も、大学とは世間の常識とは隔離された“変な”ところだった。

高校生の頃に、こういう本を読む機会があったなら、大学を選ぶ目が大分違っていただろうと思う。
これから大学進学を目指す高校生に、ぜひ読むことをすすめたい一冊。

ライター石渡嶺司のブログ
大学プロデューサーズ・ノート

書評 - 最高学府はバカだらけ :404 Blog Not Found
2007-12-22

『子どもにいちばん教えたいこと―将来を大きく変える理想の教育』レイフ・エスキス を読んで


子どもにいちばん教えたいこと (草思社)将来を大きく変える理想の教育レイフ・エスキス(著), 菅 靖彦(訳)子どもにいちばん教えたいこと
将来を大きく変える理想の教育
(草思社)
レイフ・エスキス(著)
菅靖彦(訳)

souiunogaii評価 ハート4つ

本が好き!より献本。
内容紹介
ロサンゼルスの貧しい移民家庭の子どもばかり小学校5年生のクラスを受け持ち、教え子が続々と名門大学に進学、医師や科学者を輩出しているすごい先生がいる!信頼にもとづく教室づくり、読書好きにし、文章力をつける工夫、数に親しむ算数の授業、地理や理科の教え方、図工・体育の指導法まですべてを公開。
毎年、子どもだけで上演するシェークスピア劇が高く評価され、教師として初めて米国芸術大賞を受賞。
指導しだいで子どもは驚くほど伸びることを実証した教師の知恵と工夫が満載された、親と教師必読の書。

数日前の新聞に「公立でも、かさむ塾費用」という記事が載っていた。
公立小学校に子どもを通わせる家庭が塾などにかける金額の平均は年々上昇し、ついに10万円を超えたそうだ。
「格差5倍…親の収入クッキリ反映」なんて記事もあった。
塾などの学習費はもちろん、子どものピアノやスポーツなどの習い事、書籍、芸術鑑賞にかける金額には、年収1200万円以上と400万円未満の家庭とで大きな格差があるという。

いま、日本の学校教育の現場には、解決しなければならない問題が山ほどある。
安倍内閣時代には教育に関するいくつもの法律が改正された。
つい先日には財務省の2008年度予算の案が出された。
政府や文部科学省や国会は、日本の教育を立て直そうと努力しているようにみえる。
しかし、法律を変えたり、予算を増額したりすることで、現場のいろいろな困難な問題を解決することができるのだろうかと考えると、果たしてどれだけの効果があるのかと疑問が残ってしまう。

本書を読んで、はっきりと感じたことがある。それは
「教育の現場を改善するのは、現場の教師本人の意識だ」ということだ。
間違いなくそう思う。

著者のレイフ・エスキスは、全米だけでなく世界中から注目を集めている小学校教師だ。
彼が勤めるのは、ロサンゼルスのダウンタウンにあるホバート小学校。
全米で2番目に大きな公立小で、生徒のほとんどは貧困家庭に育ち、英語が話せないヒスパニック・アジア系移民の子どもたち。
校内暴力が多発し、学校の周りにはいつもパトカーがいる。

そんな荒れた環境にある学校で、レイフ先生は奇跡のような教育を行っている。
彼が担当する5年生のクラスの生徒たちは、州のテストでは高得点を取り、将来は名門大学に進学する優秀な人間に育っていく。
もちろん学業だけでなく、それ以外の様々な人間的魅力をレイフ先生の授業で身につけていく。

まったく素晴らしい教師だ。これほどまでに教育に情熱を持ち続け、諦めず、子どもを愛し、よりよい教育法を追求している教師がいるという事実に、驚く。
レイフ先生は、20年以上も教師生活を続けている。彼が実践しているいくつもの特別な授業方法は、長年の試行錯誤の積み重ねによって、やっと完成されたものだ。
彼自身が、もっと良い方法があるはずだと考え続け、時には他の有能な人間に学び、生徒と一緒になって、ひとつずつ作り上げてきたものだ。
もくじ
プロローグ 教室での火事
I 教室を第二のわが家に
1章 安心して学べる場所をつくる
2章 レベル6の倫理をめざす
II 子どもを最大限に伸ばす方法
3章 読書を自分のものにする
4章 文章力をつける
5章 算数を楽しむ
6章 テストを攻略する
7章 世界を知る
8章 自分の手で実験する
9章 スポーツから学ぶ
10章 お金の使い方を学ぶ
III もっと上をめざそう!
11章 問題を解くスキルを身につける
12章 映画を成長の糧とする
13章 待ちに出る
14章 ロックバンドをつくる
15章 コミュニティに奉仕する
16章 シェークスピア劇をつくりあげる
エピローグ 安らぎの場としての教室
訳者あとがき

このもくじを見れば、彼のクラスでどんな授業が行われているか漠然とイメージできるだろう。
一つひとつの項目では、何を目指しているのか、子どもたちの将来にどう役に立つのか、教師はどんな工夫をしているのか、そして子どもたちはどう反応しどう感じたのか、生徒自身の声を紹介しながら、レイフメソッドがどれだけ優れた方法で、どれだけ効果を上げているかを、実に生き生きと語ってくれる。
彼のクラスで学び、小学校を卒業した生徒たちも登場してくる。
レイフ先生のクラスの多くの生徒たちは、卒業後も交流を続けていて、レイフ先生は彼らに大学進学など将来のアドバイスをしている。

本当にすごい、の一言で、国の違いはあるにせよ、日本の教員たちにはレイフ先生と同じようなレベルの授業を行うことは、たいへんに難しいことだと想像される。
教育という仕事を天職と感じ、生涯をその仕事にささげると覚悟し、自分のプライベートを削って、全てを生徒たちのために、というのでなければ無理だ。

しかし、この奇跡のような「理想の教育」が、実際にホバート小学校で行われているという事実を、現職の教員の方々や将来教師の仕事を目指す人たちには知っていてもらいたい。

教育にたずさわる仕事をする全ての人に、ぜひすすめたい一冊。
Teach Like Your Hair's on FireThe Methods and Madness Inside Room 56Rafe EsquithTeach Like Your Hair's on Fire
The Methods and Madness Inside Room 56
Rafe Esquith


子どもにいちばん教えたいこと
  • レイフ エスキス、菅 靖彦
  • 草思社
  • 1575円
Amazonで購入
書評/教育・学習
2007-12-03

『学校のなぞ』中村弥和 を読んで


学校のなぞ (愛育社)中村 弥和学校のなぞ
(愛育社)
中村 弥和


souiunogaii評価 ハート2つ

内容紹介
先生も知らない“学校の真実”をお教えします。
いじめはなぜなくならない?/問題教師や指導力不足教師について/教育委員会って?/集めたベルマークはどうするの?/小学英語はどうなる?……
本書を読んで学校を取り巻く問題をよく知りましょう。学校を良くするのも悪くするのも私たち次第です!

著者の中村弥和さんはフリーの教育ジャーナリスト。2児の母でもあるという。
そんな彼女が書いた本書は、ふつうの一般市民のレベルで見た“学校”にまつわる「なんでだろう?」「どうしてなの?」に分かりやすく答えてくれる。
いわば、最新版・小中学校のしくみ入門みたいな感じだ。
文体も軽やかなので、スラスラと読めてしまう。
時間割り
朝礼の時間 あいさつ
1じかんめ 学校の仕組みを勉強しよう
2じかんめ 教員と言うお仕事
3じかんめ 学校を多角的に考えてみよう!
4じかんめ 子どもを取り巻く問題点
お昼休み
5じかんめ 「おつかれさま」な先生たち…
6じかんめ 知っていそうで意外と知らない謎の解明
帰りの会 あいさつ

自分自身が小学生だった頃に感じていた、学校へのギモン。
子どもを通学させる親の目から見る、学校へのギモン。
そのどれもが、実に素朴なものであり、かつ、とても大切な問題ばかりだ。

学校と言う場所は、多くの法律によって様々なことが細かく厳密にルールづけされている。
その細かさには正直驚いた。
校舎の面積、教室の天井の高さ、イスの背もたれの角度、などなど、全てはきっちり決められている。

さらに、教師の給料・各種手当て、学校の水道光熱費、図書室の本の購入費、ベルマークのお金、黒板の値段、その他いろんなものの金額を具体的に示してくれるのも面白い。
え、あれって結構高いんだ、みたいな。

もちろん、イジメ、給食費不払い、教師の適正、などなど現代の教育現場がかかえる重要課題にも触れられているし、著者の考える問題解決への提言も興味深いものばかり。

全国の小中学校への調査から得られたデータや、各地の珍しい改革や取り組みも紹介されている。

20代の私でも、「私の頃とは違うんだな」と感じる変化が、学校の中ではたくさん起こっているのをしると、時代を感じる。
さらに、地域間の差も大きいみたいだ。

びっくりしたのは、都内のほとんどの学校では、トイレ掃除が業者委託されているそうだ。
トイレ掃除は生徒の仕事じゃないの?と。

とにかく、この1冊、今の学校をザッと知ることができるし、いろんなことを考えるきっかけを見つけられる。
2007-09-02

『予備校が教育を救う』丹羽健夫 を読んで


予備校が教育を救う (文春新書)丹羽 健夫予備校が教育を救う
(文春新書)
丹羽 健夫

souiunogaii評価 

著者の丹羽健夫さんは、証券会社などに勤めた後に、大手予備校の河合塾に入社し(講師ではなく)事務方の要職を歴任された方です。
第二次ベビーブーム世代が受験生となる1970年代に、地方予備校だった河合塾は一気に大躍進をとげ、駿台・代ゼミと並ぶ3大予備校と呼ばれるまでに成長しました。
この本は、当時 教務部長として河合塾で数多くの改革を行なった著者が描く、
「河合塾の成長物語」です。
進学率のアップ、それに伴い年とともに増大する浪人生を抱えた予備校は、この時期、すなわち第一次進学率アップ期に、内容的に従来の公教育の小型版から脱皮し、新たな教育類似期間としての道を歩みはじめるのである。そのきっかけとなったのは全共闘世代の新種の講師たちが予備校の教壇に登場したことであった。

しかし、単なる「河合塾成長物語」に終わらないところが、この本の価値だと思います。
予備校という“しがらみの無い教育機関”だからこそ見える教育の問題点と、予備校ならではの解決法が数多く示されています。
予備校だけでなく、高校(文科省)や大学まで含めて、教育機関がめざすべき方向を提案しています。
もくじ
第一部 予備校のお話
1 逃げた生徒をおいかけろ
2 原始予備校から近代予備校へ
3 予備校の商品
4 講師がつくる「教育ワンダーランド」
5 予備校の全国展開

第二部 学校のお話
1 本質を考える授業を取り戻せ
2 納得型の沈殿
3 老若先生のほどよいバランスを
4 学校文化と社会性
5 正しい中高一貫性を目指そうよ
6 勢いのある学年とそうでない学年
7 なぜ75パーセントの中学生が塾に通うのか

第三部 大学のお話
1 いままでのやり方では難関大学に入れない!?
2 少子化で「よき社会人養成大学」はどうなる
3 教育学部の行方
4 郷愁の旧制高校
5 全共闘運動とその後の不思議

去年は世界史の未履修が明らかになったりして、進学校の過度の受験指導が問題になったりしました。
この本でも、「高校が受験テクニックばかりの授業をするから、予備校は教科の本質を教えるようになった、かつてとは逆の体質になっている」というようなことを指摘しています。
私も県立の進学校を卒業後、浪人して駿台予備校で学びました。
実際に、高校の教師よりも予備校の講師の方がはるかに魅力のある授業をしていたように思います。
「学問の本質を見すえて勉強して欲しい」という熱意が伝わってくるというのか、「とにかく毎日授業を受けるのが楽しみでしかたがなかった」という高校ではけっして感じることのなかった気持ちが、予備校では感じることができていました。
日本中の普通科高校が大学合格実績を上げんと奔走しはじめていたのだ。そして高校が予備校のお株を奪って、知識の記憶、ドリル、正解発見のテクニック授業に走り出していたのである。
教務部長は聞いた。
「予備校でやることを高校がやってしまっていることはよく分かった。じゃあ、あなた方は教室で生徒に対して何を教えようとしているのだ」
髭の講師が答えた。
「他の人は知らんが俺は生徒たちが高校でやり残してきたことを教える」
「やり残してきたことってどんなことですか」
「いいですか。生徒たちは答えの出し方は教えてもらってきているが、なんでこの問題が出されるのかとか、なんでこうすれば正解が出るのかとか、なんでこの教科を学ぶのかとか、本質というか教科の根っこの部分を教える教育をほとんど受けてきておらん。だから教科の根っこのところ、本質の部分を教える。それしかない」

著者は予備校のあるべき姿を模索する中で、数多くの新たな取組みに挑戦しています。キーワードだけを挙げていくと、
全共闘世代講師、運動会、缶ビール、逆さま世界史、誤答にも部分点、クラス分け、模擬試験、合格可能性、人気講師、オリジナルの教材、大検コース、韓国・中国との入試比較、納得型の生徒と理解型の生徒、カンボジアへのボランティア、など
です。
予備校ならではの数多くのデータを表やグラフで分かりやすく見せてくれ、さらに、生徒や講師の生の声が聞こえてくるエピソードが数多く紹介されていて、それが読んでいてとっても面白いです。
利益を追求するだけの企業ではなく、「真に日本の教育を良くしていきたい」と願い、そのためにやれることは全部やってやろう!という予備校の人たちの気合が伝わってくる部分がいくつもあります。

私は予備校で勉強することができて本当に良かったと思っています。
それは、高校では知ることのできなかった多くのことを、予備校で学ぶことができたからです。
でも、欲を言えば、いま予備校が教えている「教科の本質」のようなことを高校でも学ぶことができるのならそれが一番だと思います。

文科省や法律に縛られた小中学校・高校と、しがらみのない予備校とが協力し合って、日本がかかえる教育の問題を解決するための方向性が、この本の後半の第二部第三部でも提案されています。

「予備校が教育を救う」というタイトル、読む前は少し大げさな言い方なのではと思いました。
でも、政府・文科省で教育改革を議論している人たちの作る案なんかよりも、予備校の人たちが考えていることの方がずっと良いように思えてしまう、「実は予備校こそが教育を変える起爆剤になるのでは」と感じさせてしまう、そんな本でした。
とはいえ、根本的なシステムの違いがあるのだから、公教育は塾・予備校に勝てるはずがない、と割り切ってもらっては困る。なにしろ日本の教育の量的な根幹は公教育にあるのだから。