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『宇宙がよろこぶ生命論』長沼毅 を読んで[2009-10-04]
『ALMA電波望遠鏡』石黒正人 を読んで[2009-09-19]
『マイケル・ファラデー 科学をすべての人に』(オックスフォード科学の肖像) を読んで[2009-03-14]
『100年の難問はなぜ解けたのか』春日真人 を読んで[2009-02-07]
『世界初!マグロ完全養殖』林宏樹 を読んで[2009-01-17]

2009-10-04

『宇宙がよろこぶ生命論』長沼毅 を読んで


宇宙がよろこぶ生命論 (ちくまプリマー新書)宇宙がよろこぶ生命論
(ちくまプリマー新書)
長沼毅



souiunogaii評価 

内容紹介
「生命とは何か?」その答えは宇宙にあった!

宇宙生命よ、応答せよ。
数億光年のスケールから粒子レベルの微細な世界まで、
とことん「生命」を追いかける知的な宇宙旅行に案内しよう。
「宇宙の中の自分」を体感できる、宇宙論と生命論の幸福な融合。
もくじ
はじめに―宇宙生命よ、応答せよ
第1章 生命のうつわ、ウチュウ―宇宙論入門の入門
第2章 水、この奇妙なるもの―生命にとって唯一無二の物質
第3章 生命を駆動する化学エネルギー―量子構造を理解する
第4章 電磁気力と生命―わが太陽から放射される色と光の恵み
第5章 生命の偶然と必然―生命と非生命のあいだ
第6章 可能性と実在性―「星が輝く宇宙」に満ちるもの
あとがき

面白かった!
著者は生物学者の長沼毅さんです。
以前、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」に出演されていたのを見て以来、この人のファンになってしまいました。
生命の起源を探すために、深海でも火山でも南極でも、どこまでも自分の足で調査に赴くその熱い姿がとても印象的で、「あぁ、この人なんてカッコいいんだ!」と思いました。
広島大学 海洋生態系評価論研究室
生物学者・長沼毅「地の果てにこそ、真実がある」:NHKプロフェッショナル仕事の流儀(2007/09/18)

そんな長沼さんの本、文章がとっても素敵なんです。
自分の好きな研究のことを、広く一般の人にも知ってもらいたい。こんなに面白い世界があるんです、スゴイでしょう!
そういうメッセージがビシビシ伝わってくる、何ていうか、科学について書かれた本なのに理性じゃなくて本能に訴えかけるような、そんな不思議な力が長沼さんの文章にはある気がします。

本書『宇宙がよろこぶ生命論』は、2006年の東京工業大・大学院の地球惑星科学の集中講義がもとになっているそうです。
(原稿は南極観測の合間に執筆されたとか)

この地球に生命が生まれたのが、科学的にどれほど奇跡的な出来事だったのかを、宇宙論・電磁気学・量子化学・分子生物学などのさまざまな科学的目線から語ってくれています。
登場するキーワードを拾っていくとこんな感じです。
真空のエネルギー、スポンチカフェ(SPONCH CaFe)、インフレーション、ダークマター、マルチバース(多宇宙)、人間原理、異状液体、素粒子、パウリの排他律、水素結合、フントの法則、ビラジカル、パンスペルミア、エントロピー増大の法則、…

サイエンスを文学的に熱く語る、長沼スタイルの文章は読んでいて非常に楽しいしワクワクしてきます。
そして、ところどころに中原中也の詩やリグ・ヴェーダ讃歌、アーサー・C・クラークなどの文学作品を引用しているのも素敵だ。

とにかく、こんなにも情熱を持ってサイエンスの魅力を伝えられるなんて、生物学者・長沼毅の素晴らしい才能だと感じる。
生命のポテンシャルを胚胎し、じっさいに生物というリアリティを生んでしまった宇宙は、そのことを後悔していない。これは、文学的というか、非科学的に聞こえるだろう。しかし、意外なことに本当にそうなのだと言ったら、ますます「この狂人科学者め」と思われるだろうか。

科学を学ぶ道を志す高校生や大学生に、ぜひおススメした一冊。
やっぱり長沼毅は、カッコいい。

【関連記事】
『深層水「湧昇」、海を耕す!』長沼毅 を読んで
生物学者・長沼 毅を「プロフェッショナル 仕事の流儀」NHK で見て。
2009-09-19

『ALMA電波望遠鏡』石黒正人 を読んで


ALMA電波望遠鏡 (ちくまプリマー新書)ALMA電波望遠鏡
(ちくまプリマー新書)
石黒正人


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内容紹介
アンデスの巨大な“電波の眼”

光では見られなかった遠方宇宙の姿を、高い解像度で映し出す電波望遠鏡。
物質進化や銀河系、太陽系、生命の起源に迫る壮大な国際プロジェクト。
本邦初公開!

もくじ
はじめに―私たちは波に囲まれて生きている
序章 アンデスの巨大電波望遠鏡ALMA
  ALMAは何の略? / 野辺山からALMAへ
第1章 電波で宇宙を見る
  1.電波とは何か / 2.宇宙からの電波はどのように発見されたか / 3.光でみる宇宙、電波でみる宇宙
第2章 日本の天文学の歩み
  1.光の天文学から電波天文学へ / 2.国際共同プロジェクトALMA
第3章 ALMAで何が見えるか
  1.宇宙の夜明け / 2.「第2の太陽系」を見る / 3.生命の起源に迫る
第4章 電波望遠鏡のしくみ
  1.干渉計とは何か / 2.ALMAの観測装置
おわりに

2011年の本格運用開始を目指して、国際プロジェクトとして建設が進められている電波望遠鏡「ALMA」。
著者は、その国際プロジェクトに参加している日本人スタッフの石黒正人さん。
一般の人に分かる言葉で、電波天文学の過去・現在・未来を語ってくれた一冊です。

南米チリのアタカマ高地、標高5000mの砂漠のような場所に、巨大な電波望遠鏡が80台。
プロジェクトに参加するのは、アメリカ、カナダ、EU、日本、台湾。
計画が動き始めたのは2001年頃。全体の総予算は1200億円だとか。

電波望遠鏡と言えば、すぐに思い浮かぶのは映画『コンタクト』。
ジョディ・フォスター演じる天文学者が、アレシボ電波望遠鏡や、ニューメキシコのVLAで遥か彼方から発せられた電波をキャッチしようと奮闘する姿がとてもカッコ良かった。
目では見えない宇宙のメッセージを、複数のパラボラアンテナを組み合わせた「電波干渉計」という特別な観測によって、宇宙の謎を解明しようとする。
天文学者の人たちの熱意が、プロジェクトの中にいる石黒さん自身の言葉から、リアルに伝わってきて、なんだかわくわくしてくる。

現地の建設風景や、観測画像など、本書にはカラー写真も豊富に掲載されていて、それらを見ていても面白い。
学問的な難しい話題にも結構触れられているんだけれど、難しい内容をできるだけ簡単な言葉で説明してくれているのも嬉しい。
ALMAでは、これまで日本が蓄積してきた電波天文学の研究や、技術開発の成果が最大限生かされており、世界のパートナーからも重要な一員であると尊敬されています。ALMAが完成すれば、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡が完成したときのように、素晴らしい研究成果が新聞等をにぎわすことになるでしょう。そのときが楽しみでなしません。

alma_web.jpg
ALMA WEB SITE (English)

alma_j.jpg
国立天文台 ALMA Home Page

【関連記事】
『すばる望遠鏡の宇宙 ハワイからの挑戦』海部宣男 を読んで
『東京大学マグナム望遠鏡物語』吉井譲 を読んで
2009-03-14

『マイケル・ファラデー 科学をすべての人に』(オックスフォード科学の肖像) を読んで


マイケル・ファラデー―科学をすべての人に (オックスフォード科学の肖像)マイケル・ファラデー
科学をすべての人に
(オックスフォード科学の肖像)
コリン・A・ラッセル(著)
オーウェン・ギンガリッチ(編)
須田康子(訳)

souiunogaii評価 

内容紹介
ロンドン市民を講演で熱狂させた最大の実験科学者
1804年、13歳で書店兼製本屋の徒弟となり、そこで出会った本をきっかけに科学の道を志す。電気と磁気の科学の開拓者として数々の発見とともに、『ロウソクの科学』(岩波・角川文庫ほか)として読み継がれる王立研究所のクリスマス講演を立ち上げ、市民や子ども向け科学講演の基礎をつくったファラデーの業績と生涯をわかりやすく伝える。

本書は、電磁誘導を発見したことで有名な、19世紀の科学者マイケル・ファラデーの伝記です。

私がファラデーの名を最初に聞いたのは、中学生のときだった。
理科の教科書に、彼の肖像があったのを覚えている。
そのときの授業の中で、理科の先生はこう言った。
「ファラデー、この人は天才だ」
そして、それに続けてこうも言った。
「君たちが高校に進んで、"物理"という科目の勉強をすることになると、このファラデーの発見に始まった"電磁気学"のことをもっと詳しく学ぶことになる。とにかく素晴らしい功績を残した偉大な人だ。先生はファラデーという人が大好きだ」

また、浪人生時代に通っていた予備校の物理の講師も、同じようにファラデーについて熱く語っていた。

あれから10年が経って、こうしてファラデーの伝記を読んでみて、今やっと、先生があのときどういう気持ちで話していたのかが分かった気がした。

ファラデーの父は鍛冶屋で、一家がイングランドの田舎からロンドンに出てきたばかりの頃に彼は生まれた。
生活はけっこう苦しかったようで、13歳のときに近所の製本店で働き始める。
満足な教育を受けられられなかったファラデーは、製本の仕事の中で数多くの本に出会い、"化学"という学問の面白さを知る。

そこから、ファラデーの果てしなく壮大なストーリーが始まる。
もくじ
第1章 科学の劇場
第2章 ファラデーのルーツ
第3章 ロンドン――製本屋の徒弟
第4章 王立研究所員
第5章 初期の化学実験
第6章 電磁気学研究の開始
第7章 化学を語る
第8章 電気、そして磁気の本格的研究
第9章 電磁気学――「神の庭で遊ぶ」
第10章 晩年

本書でも、「社会そのものの様相をも変えた人物、『世界史上もっとも偉大な実験自然哲学者』」とか、「電磁気学という拡大された科学の父」という風な言葉で語られる、ファラデーという人が、どんな道を歩んで、あの発見にまで至ったのかを、丁寧な当時の社会情勢や文化の描写を交えながら、語られる物語。
ファラデー自身の言葉で言うと、「普通の磁石で永続的な電流をつくりだすこと」に成功したのだ。発電機の発明である。
(中略)
この発見は、ファラデーにとっても新たな電気時代の幕開けとなった。この発見から、現在の発電機が生まれ、それをもとに巨大な電気産業が築かれることになる。

科学することの大切さを生涯をかけて伝え続けた、偉大な人物ファラデー。

【関連記事】
『ダーウィン 世界を揺るがした進化の革命』(オックスフォード科学の肖像) を読んで
ロウソクの科学 (角川文庫)ファラデー(著), 三石 巌(訳)ロウソクの科学
(角川文庫)
ファラデー(著)
三石 巌(訳)

2009-02-07

『100年の難問はなぜ解けたのか』春日真人 を読んで


NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (NHKスペシャル)100年の難問はなぜ解けたのか
―天才数学者の光と影
(NHKスペシャル)


souiunogaii評価 ハート3つ

内容紹介
2007年1月、“宇宙の形を知る手がかり”といわれ、幾多の数学者が挑み、挫折し続けた難問「ポアンカレ予想」が解かれた。
「数学界の残酷物語」とも「変人数学者たちの大いなる浪費」ともいわれたこの難問への挑戦。その苦難と敗北の歴史を軸に、天才数学者たちの生き方と数学の魔力を描く。
もくじ
プロローグ 世紀の難問と謎の数学者
第1章 ペレリマン博士を追って
第2章 「ポアンカレ予想」の誕生
第3章 古典数学vsトポロジー
第4章 1950年代「白鯨」に食われた数学者たち
第5章 1960年代クラシックを捨てよ、ロックを聴こう
第6章 1980年代天才サーストンの光と影
第7章 1990年代拓かれた解決への扉
エピローグ 終わりなき挑戦

本書は、以前放送されたNHKスペシャルの同名番組が書籍化されたもの。

100年の難問はなぜ解けたのか〜天才数学者 失踪の謎〜 :NHK(2007/10/22)
私のように数学を知らない人でも十分楽しめる内容になってたのは、
数学の問題そのものの説明は簡単に済ませ、数学者ペレリマン自身のたどった道筋・生き方にスポットを当てていたからだ。

1904年に提唱された「ポアンカレ予想」という数学の命題を解き明かそうと、
1世紀もの間、多くの数学者が挑んで散っていった。
そして遂に難問を解き明かしたのが、ロシアのペレリマン博士。
2006年、4年に一度の数学界最高の栄誉であるフィールズ賞。
ペレリマン博士は授賞を拒否した。

一つの問題を解くためだけに人生の全てを賭け、その他のあらゆるものを捨て去ってしまった、ある数学者の苦悩を、丁寧に描いた物語。

読んでいると、番組を見たときの、あの興奮する感じがよみがえってきた。
ポアンカレ予想の証明に立ち向かった数学者たちの姿から感じられるのは、
ただ一つのことに、純粋に打ち込むことを決めた人生の壮絶さ、みたいなもの。
こんな生き方を選んだ人たちがいるんだ、っていうその事実に何だか圧倒されてしまうような。
"Mais cette question nous entrainerait trop loin"
(しかしこの問題は、われわれを遥か遠くの世界へと連れて行くことになるだろう)
宇宙空間の形について問いかけるポアンカレ予想。それは20世紀初頭の数学者にとってあまりに斬新な問題だったのかも知れない。

今日も、この世界のどこかで、同じように孤独と闘いながら、
数学の難問を解こうとしている数学者がいるんだろうと想像すると、
何だか、人類って、学問って、すごいなって。

本書で紹介されていた、『ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」』という小説。
実際の数学者をモデルに描いたという、人生をかけて数学の難問に挑んだ男の物語。
これも読んでみたくなった。
ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」 (ハヤカワ・ノヴェルズ)ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」
(ハヤカワ・ノヴェルズ)
アポストロス・ドキアディス(著)
酒井 武志(訳)


[追記]
ペレリマンについての新刊が出たそうだ。ぜひ読んでみたい。
完全なる証明完全なる証明
(文芸春秋)
マーシャ・ガッセン(著), 青木薫(訳)



辞退の理由 - #書評_ - 完全なる証明:404 Blog Not Found

【関連記事】
ポアンカレ予想「100年の難問はなぜ解けたのか 〜天才数学者 失踪の謎〜」NHKスペシャル を見て。
『ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」』アポストロス・ドキアディス を読んで
2009-01-17

『世界初!マグロ完全養殖』林宏樹 を読んで


世界初!マグロ完全養殖(DOJIN選書)波乱に富んだ32年の軌跡林宏樹世界初!マグロ完全養殖
波乱に富んだ32年の軌跡
(DOJIN選書)
林 宏樹


souiunogaii評価 ハート4つ

本が好き!より献本頂きました。
内容紹介
2002年6月,近畿大学水産研究所において,世界ではじめてクロマグロの完全養殖が達成された.いまだその生態も十分解明されておらず,完全養殖は夢のまた夢と考えられていた中での快挙だった.研究が始まった1970年からの32年に及ぶ道筋は,決して平坦ではなかった.だれも答えを知らない問題にぶつかり,立ちはだかる壁を一つずつ乗り越え達成した偉業.熊井英水を中心に実現させた挑戦の日々を描き出す.

こういう、プロジェクトX的なノンフィクション本、私はかなり好きです。
自然界の資源にまったく手をつけずに、完全な養殖クロマグロの生産に、まさに人生をかけて挑戦した男たちの物語です。
感動しました。
もくじ
挑戦のはじまり〜まえがきにかえて
第1章 クロマグロは養殖に向いた魚か
第2章 魚飼いの精神―近畿大学水産研究所
第3章 ヨコワ捕獲作戦
第4章 はじめての産卵から長い道程
第5章 32年目の偉業
第6章 完全養殖のめざすもの
終章 完全養殖を支えたもの
あとがき

最近、漁獲量が制限されたりして、何かと話題になっているマグロです。
日本人も大好きなマグロが、輸入できなくなる日がいつか来るかもしれない。
そんな事実を、なんと40年近くも前から予期し、その日のために戦いつづけてきた人たちがいたことを、恥ずかしながら私は本書を読むまで知りませんでした。

近畿大学水産研究所。
わずかな研究費と、粗末な設備と、少ない人員からスタートしたこの研究所が、世界初の偉業を達成するまでの、苦難と試行錯誤の積み重ねの日々を、
この研究の中心にいたメンバーにスポットをあてて描いた、
素晴らしい感動の物語です。

所長としてリーダーを務めた熊井英水さんをはじめとして、この計画に関わった人たちの"マグロ"に対する熱い思い、情熱みたいなものが非常に丁寧に書かれています。
「生き物というのは、そういうものですよ。簡単にいくはずがない。気を長くもって、長い目でやってください」
熊井はこの言葉を聞いて目が覚めたような気がした。原田の突然の死によって、研究所の所長に任命され、自分自身あせりがあったのかもしれない。すっと気が楽になり、またやってやろうという気力が湧いてきた。そして、熊井は初代総長の世耕弘一の言葉を思い出していた。
「不可能を可能にするのが研究だろ」

近畿大学のマグロ養殖の研究は、文部科学省の21世紀COEプログラムとそれに続くグローバルCOEプログラムに採択されている。
完全養殖を達成した後も、最終目標である、天然資源の保護に向けて研究は続いている。

近畿大学グローバルCOEプログラム
クロマグロ等の養殖科学の国際教育研究拠点|近畿大学グローバルCOEプログラム

amarinekindai.jpg
株式会社アーマリン近大


世界初!マグロ完全養殖
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書評/サイエンス


【追記】
2/2のカンブリア宮殿(テレ東)のゲストで、本書の主役である熊井英水さんが出演していた。

「マグロをつくれ!これが新時代の水産業だ!」:カンブリア宮殿(2009/2/2 テレ東)