2007-12-12

『人間行動に潜むジレンマ 自分勝手はやめられない?』大浦宏邦 を読んで

人間行動に潜むジレンマ (DOJIN選書)自分勝手はやめられない?大浦 宏邦人間行動に潜むジレンマ
自分勝手はやめられない?
(DOJIN選書)
大浦 宏邦

souiunogaii評価 ハート3つ

本が好き!より献本。

期待していた以上に、たいへん楽しめた。面白かった。
私がタイトルから想像していた内容の、10倍も20倍も幅広くそして奥深い話題に満ちていた。
「進化ゲーム理論」とは本書で初めて知ったのだけれど、これほど面白い学問分野があったなんて。
協力か、裏切りか。多くの人が協力しようとするとき発生する社会的ジレンマ。その背後には、利己と利他のあいだで揺れる人間行動の機微が存在する。社会的ジレンマの回避は可能なのか。本書では、人間をはじめ動物の行動の進化や、学習による行動の変化を扱う進化ゲーム理論を案内役に解決への道筋を模索する。
世界を見る目がきっと変わる!

著者の大浦宏邦氏は、大学の教員で、進化ゲーム理論と社会秩序とを専門に研究しているそうだ。
理論と実証実験の両方の側から。
もくじ
序章 自分勝手とはなにか
第1章 二種類の自分勝手の発見――囚人のジレンマとゲーム理論
第2章 上品、短気、寛容――進化ゲーム理論と協力の進化
第3章 協力するのはお得?――多人数協力の進化
第4章 闘争は回避できるか――社会秩序の始まり
第5章 共感と攻撃性のコントロール――ヒト社会への道
第6章 みんなに合わせる――現代社会と自分勝手
終章 自分勝手はやめられるか

「自分勝手はやめられない?」というサブタイトルでこの本を選んだのだけれど、読む前には、もう少し心理学っぽいというか、はっきりつかめない、観念的な話題についての本なのかと思っていたのだけれど、全然違っていた。
「世の中、自分勝手が多過ぎる」という声をデータを元に分析する話からはじまり、「自分勝手をやめるための方法」を、1冊通して探っていく。
その話の進め方が、極めて論理的で科学的で数学的なのだ。

自分勝手というものを厳密に定義することからスタートし、有名な「囚人のジレンマ」問題を筆頭に、様々なジレンマ問題を紹介していく。
タコ焼き屋のジレンマ、ワボンゴの実の分配、共有地の悲劇、タカハトゲーム、など。
そういった現実をモデル化した問題を、進化ゲーム理論という手法で攻めていく。

「進化ゲーム理論」というのは、私も本書で初めて出会った考え方なのだが、これが実に面白い。
もともと経済学者ノイマンらが考案したゲーム理論というものを、動物の社会行動進化を研究する生物学者らが発展させた理論だ。

最初は1vs1の人間同士の話で自分勝手を考え、徐々に複数の人間の関係、集団の中での自分勝手、集団vs集団の関係へとスケールが大きくなっていく。

著者と同様に社会秩序の研究をしてきた歴代の学者たちを紹介し、彼らが行った実証実験やそこから導かれた理論を、素人にも分かるように簡潔に説明してくれる。
もちろん著者自身が授業で学生を集めて行った実験の様子も多く紹介されている。
どれも表やグラフが付いていて、ぱっと見て分かるようになっているし、数字を出す計算式を説明してくれる。

そして、本書で私が特に面白いなと感じたのは、生命の進化の過程と自分勝手とを結びつけて考察しているところだ。
自分勝手というのが、なにも人間に限ったことではなく、野生動物にもあるというのは、何となく想像できるが、DNAや単細胞生物レベルにもあるというのは、驚きだ。
カンブリア紀を経て、アウストラロピテクス、ネアンデルタール人と。
生命誕生の瞬間から自分勝手というのがあって、サルからヒトへと進化する中でゆっくりと出来上がってきた社会秩序というものを、やはり、一つひとつ論理的に科学的に説明していく。
本書のテーマは「自分勝手はやめられるか」であるが、自分勝手をやめるということはすなわち利他的に振る舞うということである。そう考えていくと「自分勝手はやめられるか」という問いかけは、じつは「人間は利他的になれるか」という問いかけと同義であることがわかってくる。

KYとか、モラル低下とかマナーとか、集団の中での個人の振る舞い方がいろいろ指摘されているし、
企業や役所の不祥事とか、環境問題と途上国の開発とか、いや他にももろもろ。
そういう様々な問題の、根っこにあるものを見つめられた気がする。

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書評/サイエンス

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