2007-11-18

『逃亡くそたわけ』絲山秋子 を読んで

逃亡くそたわけ (講談社文庫)絲山 秋子逃亡くそたわけ
(講談社文庫)
絲山 秋子


souiunogaii評価 ハート4つ

社会とか、学校とか、仕事とか、うつ病とか、親とか、友達とか、故郷とか、ルールとか、
そんないろんなものを、「見えないゴール」を目指す旅の中で、ゆっくり見つめなおすきっかけを与えてくれる。

精神疾患を抱えた男女の2人の若者が、病院から逃げ出し、車で九州縦断の旅にでる。
そんな映画「逃亡くそたわけ―21歳の夏」が、今年2007年10月に公開され、11月になった今も、いくつかの劇場で上映されている。主演は美波と吉沢悠。
本書『逃亡くそたわけ』は、その原作小説だ。

本を読んでみて受けた印象、その世界はかなり良い感じだった。
だから、まだ観ていないその映画にも興味が沸いてきた。
(DVDが出るまで待つのじゃなくて、ぜひ劇場まで足を運んで観たい)

内容紹介(講談社BOOK倶楽部より)
「どうしようどうしよう夏が終わってしまう」軽い気持ちの自殺未遂がばれ、入院させられた「あたし」は、退屈な精神病院からの脱走を決意。名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のぼろぼろの車での逃亡が始まった。道中、幻聴に悩まされ、なごやんと衝突しながらも、車は福岡から、阿蘇、さらに南へ疾走する。

INTRODUCTION(映画「逃亡くそたわけ―21歳の夏」公式サイトより)
“逃げるのに理由なんていらない。”
精神病棟から逃亡し様々な土地をおんぼろ車で旅をしながら心<脳>の葛藤と共に人々や社会との関わり合いなどを通じて、何かを感じ取っていく<ROCKな>ロードムービー。躁鬱病等を取り扱った本作は、現代日本に急増している“心の病”を、若い二人を通じて明るく爽快に描いている。原作は『沖で待つ』で芥川賞を受賞した絲山秋子の同名小説。現代女性の本音を描き出す、今注目の作家である。

主人公の男女の2人は、
花ちゃん(21歳、大学生、自殺未遂・躁の症状あり、福岡出身)と
なごやん(24歳、サラリーマン、鬱の症状あり、名古屋出身)だ。
どうしようどうしよう夏が終わってしまう。21歳の夏は一度しか来ないのにどうしよう。この狂った頭の中には逆巻く濁流があって、いてもたってもいられないのだた。プリズンで夏を終わらせるのだけは嫌だった。

いきおい と なりゆき で、2人はマツダのルーチェに乗り、福岡を出発し、大分、熊本、宮崎、鹿児島と九州を縦断する旅に出る。

別に、目的地など無い。ゴールがあるわけじゃないのだ。
あてもなく、ただ2人が「行きたい」とその瞬間に感じた場所を、何となく目指しながら進んでいく、そんな不思議な旅だ。

なごやんのキャラクターが気に入った。
名古屋出身で、大学に入ったときに上京し、その後サラリーマンとして福岡に来た。
彼は、故郷である名古屋を強く嫌っている。避けている。逃げている。
彼は、名古屋弁を使おうとしない。自分は東京人だと、自身に言い聞かせている。

「あぁ、そういうの、あるな」と、同じ愛知県出身で、現在東京で大学生をしている私は、自分となごやんに重なる部分があるのかもしれない、とも思った。

そして花ちゃん。彼女は根っからの九州人だ。
なごやんとは対照的に、九州に強い郷土愛を持っている。
(なぜか宮崎県知事の顔が浮かんでくる)

そんな2人の、(恋愛関係には発展する気配の無い)絶妙な距離感を保った男女の、九州弁と標準語の会話が、とにかく面白い。
「なごやんこそ東京生まれって嘘ついとったやろ」
「嘘はついてない。東京から福岡に来たのは確かなんだから」
「なして生まれたとこ隠すと?おかしかー」
「そんなこと言えるのは君が名古屋に生まれたことがないからだよ。だったら一度生まれてみろよ、わかるから」

2人は、旅の途中で、病院の中にいたのでは絶対に経験できなかったであろう、いくつかの出来事の、何人かの人たちとの交流と、そのいろいろなことを通して、きっと何かを感じて、何かを見つけ、何かを得たんだろう。

物語中に、九州の観光名所や名物の食べ物がいろいろ登場してくる。
特に私が興味をひかれたのは、「いきなり団子」というしろもの。
花ちゃんがそれを絶賛し、なごやんはそれに文句を言う。
それぞれの、反応の違いには、思わず「くすっ」と笑ってしまう。

これまで、絲山秋子の本は『ニート』と『沖で待つ』を読んだけれども、今回読んだ『逃亡くそたわけ』は、それらとはまた違った作風だなと感じた。
こういうのも、また絲山秋子なんだと。
本作は直木賞候補にもなったが、そうか、なるほど、と。

絲山秋子 Official Web Site


「逃亡くそたわけ―21歳の夏」公式サイト

【関連】
『沖で待つ』絲山秋子 を読んで
「ニート」絲山秋子 を読んで
逃亡くそたわけ 21歳の夏「逃亡くそたわけ 21歳の夏」
出演:吉野公佳, 美波
監督:本橋圭太

日が暮れても彼女と歩いてたThe ピーズ「日が暮れても彼女と歩いてた」
[Maxi Single]
The ピーズ


熊本名産
昔ながらの懐かしいおやつ
紅あずま使用「いきなり団子」10個入り
1,400円
(アンジュドール ange d'or)


熊本銘菓
産地直送,老舗『芋屋長兵衛』
「いきなり団子」15個入り
1,500円
(熊本よかもん)


名古屋で人気の
黄味あんまんじゅう
「なごやん」16個入
1,050円
(東海道おみやげ道中 by Kiosk)

この記事へのコメント
TBありがとうございました。
そうか!「いきなり団子」
アフィリで画像を貼り付けるという手がありましたね!w
私は九州に友達が多いので(博多と北九州と熊本)
主人公の女の子が博多出身の友達とダブってとても面白かったです。
絲山さんの作品は、『沖で待つ』のほかに
『ダーティ・ワーク』も読みましたが
読後に希望が持てる感じがいいですね。
Posted by 藤紫 at 2007-11-18
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