2007-09-17

『科学者が見つけた「人を惹きつける」文章方程式』鎌田浩毅 を読んで

科学者が見つけた「人を惹きつける」文章方程式(講談社+α新書)鎌田 浩毅科学者が見つけた「人を惹きつける」文章方程式
(講談社+α新書)
鎌田 浩毅

souiunogaii評価 ハート2つ

本書はいわゆる「文章読本」ですが、著者の鎌田浩毅は小説家ではなく、火山を研究する地質学者です。
鎌田さんは「火山はすごい」という一般向けの火山学の本を書いていますが、そのときに「文章読本」を何冊も読んで、良い文章の勉強をしようとしたそうです。
しかし、
「あまたある『文章読本』で、これが名文だといわれても、しばしば自分にはピンとこない」
「う〜む。これが名文だって!? もののあわれを解さない科学者には、どこが名文か見当もつかない」
ということがあって困ってしまったそうです。
小説家は、自分が名文だと思った文章を集めて、『文章読本』を書く。読者がよく分からないうちに、これは文句なく名文です、と宣言してしまう。
そう言ってしまえば名文となってしまう、という世界なのだ。

そこで著者は、科学者なりの方法で名文を分析しようと試みたのです。
使われた方法はごくごくシンプルなものでした。
文章を、言葉の一つひとつに分解して、整理して、そこから文章全体を見てみる、というものです。
これまでの『文章読本』では、名文の全体を茫洋と見ていた、といってもいい。だから読者にはピンとこなかったのである。
科学者は、部分ごとになにが起きているのか、執拗に調べてゆく。文章でも、使われている言葉に対して、要素に分けて細かく検討する。その次に、全体の成り立ちについて考えるのだ。部分から全体へ、これが本書の基本姿勢である。

科学者の書く「文章読本」というと、どこか無機的で冷たい印象を持ってしまいそうですが、本書においてはそんなことは全くありません。
逆に、「こんなに文学的でしかも論理的で魅力ある文章を書く人が、実は科学者だなんて驚きだ」というくらいに感心してしまいます。

高校時代の現代文の授業は、退屈でつまらないものでした。
でも、本書はそれとは全然違い、非常に楽しめました。
効果的な言葉をたたみかけるように与えることで、読者を催眠状態に導いてゆくのだ。意識しようとしまいと、ここには作者の綿密な計算がある。
名文の技術は、作者が読者にかける催眠術だといってもよい。


本書で、名文として文章が引用されている本を一覧にしておきます。

冷静と情熱のあいだ―Rosso (角川文庫)江國 香織冷静と情熱のあいだ―Rosso (角川文庫) 江國香織
智恵子抄(新潮文庫)高村 光太郎智恵子抄 (新潮文庫) 高村光太郎
斜陽 (新潮文庫) 太宰治斜陽 (新潮文庫) 太宰治
深夜特急1 香港・マカオ (新潮文庫) 沢木 耕太郎深夜特急1 香港・マカオ (新潮文庫) 沢木 耕太郎
あの空は夏の中 (角川文庫) 銀色夏生あの空は夏の中 (角川文庫) 銀色夏生
赤頭巾ちゃん気をつけて (中公文庫) 庄司薫赤頭巾ちゃん気をつけて (中公文庫) 庄司薫
旅人―ある物理学者の回想  (角川文庫ソフィア文庫) 湯川秀樹旅人 ある物理学者の回想 (角川文庫ソフィア文庫) 湯川秀樹
剣客商売 (新潮文庫) 池波正太郎剣客商売 (新潮文庫) 池波正太郎
日本の味と世界の味 (岩波現代文庫) 小泉武夫日本の味と世界の味 (岩波現代文庫) 小泉武夫
魯山人味道 (中公文庫) 北大路魯山人魯山人味道 (中公文庫) 北大路魯山人
どくとるマンボウ青春記 (新潮文庫) 北杜夫どくとるマンボウ青春記 (新潮文庫) 北杜夫
あやしい探検隊 北へ (角川文庫) 椎名誠あやしい探検隊 北へ (角川文庫) 椎名誠
笑うカイチュウ―寄生虫博士奮闘記 (講談社文庫) 藤田紘一郎笑うカイチュウ―寄生虫博士奮闘記 (講談社文庫) 藤田紘一郎
すべての女は美しい (だいわ文庫) 荒木経惟すべての女は美しい (だいわ文庫) 荒木経惟
ルンルンを買っておうちに帰ろう (角川文庫) 林真理子ルンルンを買っておうちに帰ろう (角川文庫) 林真理子
星モグラ サンジの伝説 (理論社) 岡田淳星モグラ サンジの伝説 (理論社) 岡田淳
エーゲ海に捧ぐ (中公文庫) 池田満寿夫エーゲ海に捧ぐ (中公文庫) 池田満寿夫
文章読本 (中公文庫) 三島由紀夫文章読本 (中公文庫) 三島由紀夫
文章読本 (中公文庫) 丸谷才一文章読本 (中公文庫) 丸谷才一
泉鏡花集成 12 (日本橋) (ちくま文庫) 泉鏡花泉鏡花集成 12 (日本橋) (ちくま文庫) 泉鏡花
新編 銀河鉄道の夜 (双子の星) (新潮文庫) 宮沢賢治新編 銀河鉄道の夜 (双子の星) (新潮文庫) 宮沢賢治
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