2010-08-29

『エスケープ!』渡部建 を読んで


エスケープ!エスケープ!
(幻冬舎)
渡部建


souiunogaii評価 

内容紹介
ある日、大学生のシュウは雑誌記事「空き巣特集」を見つけてしまった。これが、人生を大きく変えることになるとは……。
緻密なシチュエーション・トリック、予想を裏切る展開に大笑い間違いなし!


小説『エスケープ!』発売:アンジャッシュ渡部建のわたべ歩き

アンジャッシュの渡部建の小説デビュー作です。

シチュエーション・コメディと呼ばれる、アンジャッシュのコントで見られる手法を小説にすると、こんな風になるんだと、予想以上に楽しめました。

物語は、大学生のシュウがあるお金持ちの家に空き巣に入る計画を立て、いよいよ実行に移してしまうのだけれど、侵入した家は留守のはずなのに何故か家主がいて……。

全部で4章に分けられた構成で、章ごとに語り手の人物を入れ替えながら描かれている。

登場人物一人ひとりの、当人は必死なんだけどその状況を知っている読者から見るとなんとも間抜けな話で、という感じはまさにアンジャッシュのコントそのもの。

いつか、コントとして映像化して欲しい。
2010-08-22

『考具』加藤昌治 を読んで


考具 ―考えるための道具、持っていますか?考具
考えるための道具、持っていますか?
(阪急コミュニケーションズ)
加藤昌治


souiunogaii評価 

内容紹介
丸腰で、仕事はできない――。
日々「企画の真剣勝負」に挑んでいる著者が、
あなたのアタマとカラダを『アイデア工場』に変える
とっておきのシンキング・ツールを初公開!
もくじ
序章 広告会社でも最初は「ただの人」。今からでも全く遅くない!
第1章 「アイデア」「企画」を考えるとは、何をすることなんだろうか?
第2章 どうしたら"必要な情報"が入ってくるのか?
第3章 展開・展開・展開!
第4章 企画=アイデアの四則演算!
第5章 時にはスパイスを効かす!
第6章 あなただけの『考具』を見つけよう!
終章 頭の動き方がシステム化することこそ、本当の『考具』かもしれない

情報を集めて、組み合わせて、新しいものとして形にしていく、その工程をより効率的に、より"しくみ"化していくための様々な手法を紹介してくれた本です。

こういう本は他にもたくさん出ていますけど、私は著者の加藤昌治さんの文章そのものもとても好きです。
アイデアを生み出すことは何も難しいことじゃない、特別な才能がなくてもいろいろな方法で、訓練で、ツールで、習慣を変えることで、普通の人が素敵なものを作ることができる。
そんな気持ちにさせてくれる、親しみのある文章で、とっても読みやすいです。

考具web!

本書で紹介されている考具をまとめて書き出してみると次のようになる。
カラーバス / 聞き耳を立てる / ちょいメモ / 七色いんこ / フォトリーディング / 臨時新聞記者 / アイデアスケッチ(手書き) / ポストイット / マンダラート / マインドマップ / アイデアスケッチ(PC) / 連想ゲーム / オズボーンのチェックリスト / ブレーンストーミング / 5W1Hフォーマット / タイトル / ビジュアライズ / マンダラート / 企画書 / アイデアマラソン / 問いかけの展開


読んだらとにかくいろいろ実践してみたくなる、そんな考具ばかりでとってもためになる1冊でした。
2010-08-22

『男と点と線』山崎ナオコーラ を読んで


男と点と線男と点と線
(新潮社)
山崎ナオコーラ


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内容紹介
運命って、あるんだ――大人になるまで、わからないことがある。大人たちに捧ぐ恋愛・関係小説。
この一瞬にも、世界のどこかで、男女はくっつき、つながりあっている。クアラルンプール、パリ、上海、東京、NY、世界最南端の町で、68歳の老夫婦、22歳の女子大生と男友だち、32歳の会社員、17歳の高校生カップル、42歳の独身男性、28歳の小説家が、何かと誰かと出会う。若き鬼才が新しい世界に挑む、地球規模の発見の物語。
もくじ
慧眼
スカートのすそをふんで歩く女
邂逅
膨張する話
男と点と線
物語の完結

山崎ナオコーラさんの短編集です。

「慧眼」は、サラリーマンを引退してマレーシアに移住した夫婦のお話。
こんな年の取り方も、いいな、そう思った。

「スカートのすそをふんで歩く女」は大学4年の私が、同じサークルの男子3人と一緒に、パリに卒業旅行に行くお話。
山崎ナオコーラ作品にたびたび登場する、彼女自身をモデルにしたと感じさせるあの独特の雰囲気を持った主人公の女の子が、とてもイイ。

「邂逅」は、上海に出張したサラリーマンが出会ったある姉弟のお話。

「膨張する話」は、東京の高校生のカップルのお話。
二人の会話が、若くて瑞々しくて、イイ。

「男と点と線」は、ある母娘と一緒にニューヨークに旅行にいくことになったある男のお話。

「物語の完結」は、アルゼンチンへ旅行にいった女の子2人が、現地で日本人の男女と出会うお話。

世界各地を舞台に、様々な年齢の男女が物語をつむぎます。

旅行気分で読んでいただきたいです。

何と何と何、「セックスと嘘とビデオテープ」、「部屋とYシャツと私」のような題名の本を一度作ってみたかったので、
『男と点と線』という三つの言葉のタイトルにしました。


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2010-08-22

『あたしはビー玉』山崎ナオコーラ を読んで


あたしはビー玉あたしはビー玉
(幻冬舎)
山崎ナオコーラ


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山崎ナオコーラの新世界、青春ラブファンタジー小説!
内容紹介
あたしはビー玉。高校二年生の男の子に片想いしてしまった。気難しい男の子は大好きだけど……。可愛がられるだけじゃ、満足できない!「新しい女の子」の生き方を探る、バカ可愛い高校小説!!

まず、この表紙を見て「えーっ!?」と思って、何だか読むのを少し躊躇しそうになったのだけれど、でも大好きな山崎ナオコーラさんの作品だから絶対に面白いはずだ、そう思って読み始めた。
そしたら、やっぱり山崎ナオコーラさんはスゴイ!
期待通り、いや期待していたそれ以上にもっとずっと楽しませてくれた。
面白かった!

主人公は高校2年生の清順、16歳の男の子。
物語は、彼が大事にしていたビー玉がある日突然しゃべりだすところから始まる。
ビー玉が女の子の人格を持ち、清順に恋をして、彼にだけ聞こえる声で話しかけるのだ。
何とも不思議な非現実なこの出来事を、あくまでも平凡な日常世界の中で起こる出来事として描き、そこに全然違和感を感じさせないのは、山崎ナオコーラ節とも呼べる独特の温度の文体の持つ力だと思う。

ビー玉は清順に対して「好きだ」というアピールを強くぶつけるんだけど、当の清順の方は、バイトをしているハンバーガーショップの先輩のお姉さん・竹中さんに恋をする。
「清順が、他の女の子を、好きになったら、あたしは溶けて、死ぬのかな……」
水からときどき顔を出して、息継ぎをしながら人魚姫みたいなことを言うと、
「なんだそれ?脅迫?めんどくせー。こええなー。女は怖い」
と清順が、さも嫌そうに、あたしを見た。こういうことを言うと愛されないんだな、とあたしは学習した。

ビー玉は、フライドポテトや炭酸飲料が好物で、時には感情を表に出して赤くなったり、涙を流したり、一つひとつの仕草がとっても可愛い。

若い人たちに読んで欲しい、という思いを込めて綴りました。
高校生たちが活躍する、ラブコメディのような物語なのですが、
私が今まで書いた小説の中では、原稿量としては意外と一番多いのです(『人のセックスを笑うな』が102枚で、この本は一応、300枚くらいなので)。
読みどころとしては、会話文の艶っぽさか。
室生犀星「蜜のあわれ」へのオマージュがあります。
清順、ビー玉、チクチュー、岡本たちがなんやかんやして、物語の山を作ります。

そして、清順は、高校の文化祭で、クラスの仲間の岡本と紺野と3人でバンドを組んで演奏する計画を立てる。
さらに岡本まで竹中さんに恋をしてしまい……。
と、家族や友達の描き方はまさに青春恋愛小説な感じで爽やかで気持ちい。

これまで読んだ山崎ナオコーラ作品は、女性が主人公の話が多かった気がして、だから高校生の男の子が主人公の小説というのが新鮮で、新たな山崎ワールドが始まったな、そんな気がした。

ラストは、ファンタジー小説ならではの素敵で綺麗で夢のある終わり方で、とにかくイイ感じの物語だった。

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2010-08-19

『トーキョー・クロスロード』濱野京子 を読んで


トーキョー・クロスロード (ポプラ文庫ピュアフル)トーキョー・クロスロード
(ポプラ文庫ピュアフル)
濱野京子


souiunogaii評価 

内容紹介<作品によせて・新海 誠>別人に変装して、ダーツにあたった山手線の駅で降りてみる。これが休日の栞の密かな趣味。そこで出会ったかつての同級生、耕也となぜか縁がきれなくて……。
素直になれない二人をジャズ喫茶のバンドマン、一児の母、辛口の秀才、甘えん坊の美少女(すべて高校生!)が支える。
「東京」という街の中ですれ違う人間関係が静かなジャズの音楽にのせて描かれる極上の青春小説!

「トーキョー・クロスロード」を読んだ。
濱野京子という作家の大ファンになった。
すごく良かった。

何ていうか、この作品全体にただよう雰囲気っていうか、世界観みたいなものが、私の大好きな感じで、もうすっかりハマってしまった。

一言で表現するなら、ザ・青春恋愛小説!

主人公は森下栞。高校2年生の女の子。
彼女の趣味は、山手線に乗って見知らぬ駅で下りて、その街を歩いて回り、その景色を写真に撮るというもの。

いわゆるぶらり途中下車の旅的なことを、高校2年の女の子が一人でやっているのだ。
自分のことを誰も知らない街を一人で歩くのが、不思議と心地よい。
私ではない私。だれも知らない私。孤独という名の解放。私が何ものであってもいい。そこで私はあわい喪失感にひたる。それはもしかしたら、自虐的な快感かもしれない。

そんな栞は、ある日、偶然に中学のときの同級生の耕也と出会う。

そこから、二人の物語が動き始める。

お互いにめちゃくちゃ強く意識し合いながらも、その気持ちが本当に「好き」と呼べるものなのかどうか分からない。
そんな非常にビミョーな二人の距離感の描き方が、とっても繊細で上手い。
忘れよう、と思った。でもたぶん、忘れられない。

この物語に輝きを与えてくれているのが、
栞の周りのクラスメートたちの存在。
いつも一緒にお昼を食べる、亜子と美波。
それぞれに全く性格の違うこの3人が、実は深く確かな友情でしっかりとつながっていて、そのことを見せてくれる一つひとつのエピソードが、とても瑞々しくて眩しくて、これぞ青春という感じが、読んでいてたまらなく気持ちいい。

そして、さらに重要なのが、川田さんと青山の2人。
クラスメートなんだけど、2人ともある事情があって、栞より2歳年上。
このちょっぴり大人な彼らの存在が、物語をぐっと深みと広がりを持たせてくれている。
(何と彼女の方は、高校生でありながら結婚して家庭をもっており、さらに可愛い赤ん坊までいる)
「じゃあ」
と、せつなげに笑う。泣きそうな顔だ。私はもう、泣いてなどいない。メガネをかけているから。何も起きなかった。でも、何もなかったわけじゃない。そして、もう二度と会えない。その思いが、絶望的なまでの確信となっていく。

とにかく、栞と耕也の二人の微妙な関係が、もう切なくてしょうがない。

ラストは、ベタと言えばベタな展開なんだけど、でも青春小説なんだから、そういう爽やかな終わり方がやっぱり気持ちがいい。

すごく楽しめた。
すばらしい青春恋愛小説に出会えた。

祝・第25回坪田譲治文学賞受賞!『トーキョー・クロスロード』:ポプラ社